令和6年度 労働一般

令和6年度(2024年度)の労働一般の本試験問題のインデックスを掲載します。 

 

リンク先に本試験問題及びその解説を掲載しています(一部の択一式については、ここで解説をしています)。 

 

 

 

択一式

○【問1】= 労働安全衛生に関する問題(令和4年労働安全衛生調査):

 

▶我が国の労働安全衛生に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

なお、本間は、「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)(事業所調査)(厚生労働省)」を参照しており、当該調査による用語及び統計等を利用している。

 

〔※ 本問については、以下、このページで解説をしておきます。

なお、「労働安全衛生調査」からは、直近では、令和2年度の労働一般の択一式(【令和2年問2。こちら】)において、「平成30年 労働安全衛生調査」より出題されています。〕

 

 

 

【令和6年問1A】

設問:

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は6割を超えている。このうち、対策に取り組んでいる事業所の取組内容(複数回答)をみると、「ストレスチェックの実施」の割合が最も多く、次いで「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」となっている。

 

解答:

正しいです(「令和4年労働安全衛生調査」(こちら)の4頁)。

 

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は、63.4%(前年の令和3年調査では59.2%)とされます。

 

事前に「令和4年労働安全衛生調査」を学習していませんと、自信をもって解答することは難しいのですが、推測の方法としては、まず、平成27年12月1日施行の安衛法の改正(平成26年改正)により、安衛法上、ストレスチェック制度(心理的な負担の程度を把握するための検査等)の実施が常時50人以上の労働者を使用する事業場について義務づけられていることを考慮するとよさそうです(安衛法のこちら以下)。

 

また、労災保険法における「心理的負荷による精神障害の認定基準」の近時の改訂状況(最終改訂【令和5.9.1基発0901第2号】。労災保険法のこちら以下)、「過労死等防止対策推進法」の制定(平成26年6月27日公布、平成26年11月1日施行) 、近年のパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントといった職場におけるハラスメントの問題の顕在化と法整備の様子などの事情を考えますと、メンタルヘルス対策の必要性は高いものであったと想像することが可能です。

そうしますと、本肢が「メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は6割を超えている」としていることも不自然ではなく、本肢は「正解の可能性あり」として保留し、その他の肢を見ることによって最終判断をすることとなります。

 

 

なお、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の取組内容(複数回答)については、多いほうから次の通りです。

 

①「ストレスチェックの実施」=63.1%(令和3年調査65.2%)

 

②「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」=53.5%(同50.2%)

 

③「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」=51.4%(同54.7%) 

 

 

 

【令和6年問1B】

設問:

過去1年間(令和3年11月1日から令和4年10月31日までの期間)に一般健康診断を実施した事業所のうち所見のあった労働者がいる事業所の割合は約7割となっている。このうち、所見のあった労働者に講じた措置内容(複数回答)をみると、「健康管理等について医師又は歯科医師から意見を聴いた」の割合が最も多くなっている。

 

設問:

正しいです(「令和4年労働安全衛生調査」(こちら)の9頁)。

 

過去1年間に一般健康診断を実施した事業所のうち所見のあった労働者がいる事業所の割合は、69.8%(令和3年調査66.1%)です。

 

このうち、所見のあった労働者に講じた措置内容(複数回答)をみると、多いほうから次の通りです。

 

①「健康管理等について医師又は歯科医師から意見を聴いた」=45.3%(令和3年調査31.2%)

 

②「特に健康の保持に努める必要がある労働者に対して医師又は保健師による保健指導を行った」=44.1%(同74.9%)

 

③「その他の措置」=15.9%(同5.5%)

 

 

本肢の「一般健康診断における有所見者がいる事業所の割合が約7割」という点については、「多すぎる」と感じる可能性もあります。

他の肢との兼ね合いも考慮して判断することとなりますが、労働経済のデータの学習では、このような「違和感」のある個所が記憶のポイントになります。

この肢Bを判断できたかは、問1の鍵のひとつでした。

 

 

 

【令和6年問1C】

設問:

傷病(がん、糖尿病等の私傷病)を抱えた何らかの配慮を必要とする労働者に対して、治療と仕事を両立できるような取組がある事業所の割合は約6割となっている。このうち、取組内容(複数回答)をみると、「通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討(柔軟な労働時間の設定、仕事内容の調整)」の割合が最も多く、次いで「両立支援に関する制度の整備(年次有給休暇以外の休暇制度、勤務制度等)」となっている。

 

解答:

正しいです(「令和4年労働安全衛生調査」(こちら)の9頁)。

 

傷病を抱えた何らかの配慮を必要とする労働者に対して、治療と仕事を両立できるような取組がある事業所の割合は、58.8%(令和3年調査41.1%)です。

 

これについては、違和感はさほどないでしょう。

 

 

次に、取組内容(複数回答)については、多いほうから次の通りです。

 

①「通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討(柔軟な労働時間の設定、仕事内容の調整)」=86.4%(令和3年調査91.1%)

 

②「両立支援に関する制度の整備(年次有給休暇以外の休暇制度、勤務制度等)」=35.9%(同36.0%)

 

③「相談窓口等の明確化」=34.4%(同32.1%)

 

 

ちなみに、「令和5年版 厚生労働白書」(こちら)の179頁を引用しておきます(「白書対策講座」のこちら)。

 

〔引用開始。〕

 

10 治療と仕事の両立支援の推進

 

 

何らかの病気で通院している労働者は、労働力人口の約3人に1人を占める。

また、高齢化が進む中で、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づく一般健康診断の有所見率年々増加を続けている。

事業場において、病気を抱えた労働者の治療と仕事の両立への支援が必要となる場面は更に増えることが予想される。

このため、がん、脳卒中などの反復・継続して治療が必要となる疾病を抱える労働者が治療と仕事を両立することができるよう、事業者による適切な就業上の措置や治療に対する配慮などの具体的な取組みをまとめた「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を2016(平成28)年2月に策定(2019年(平成31年)3月に改称)し、普及や企業に対する相談支援等を行っている。

また、「働き方改革実行計画」に基づき、主治医、会社・産業医と、患者に寄り添う両立支援コーディネーターによるトライアングル型のサポート体制の構築を推進しており、両立支援コーディネーターの育成や、企業と医療機関が効果的に連携するためのマニュアル等の作成・普及に取り組んでいる。

さらに、使用者団体、労働組合、都道府県医師会、都道府県衛生主管部局、地域の中核の医療機関、産業保健総合支援センターなどで構成される「地域両立支援推進チーム」を各都道府県労働局に設置し、地域の実情に応じた両立支援の促進に取り組んでいる。

 

〔引用終了。〕

 

 

 

【令和6年問1D】

設問:

傷病(がん、糖尿病等の私傷病)を抱えた労働者が治療と仕事を両立できるような取組がある事業所のうち、取組に関し困難や課題と感じていることがある事業所の割合は約8割となっている。このうち、困難や課題と感じている内容(複数回答)をみると、「上司や同僚の負担」の割合が最も多く、次いで「代替要員の確保」となっている。

 

解答:

誤りです(「令和4年労働安全衛生調査」(こちら)の10頁)。

 

後段の困難や課題と感じている内容(複数回答)の順番が逆であり、最も多いのは「代替要員の確保」、次いで「上司や同僚の負担」の順となります。

次の通りです。

 

①「代替要員の確保」=77.2%(令和3年調査70.5%)

 

②「上司や同僚の負担」=51.2%(同48.3%)

 

③「復職可否の判断」=26.6%(同27.2%)

 

④「就業制限の必要性や期間の判断」=24.7%(同29.5%)

 

 

 上記の①「代替要員の確保」と②「上司や同僚の負担」のどちらが、治療と仕事の両立の取組に関し困難や課題と感じていることがあるかが問題ですが、特にがんの治療の場合、数か月にわたり断続的に入院による治療を行う例が少なくないこと等を考えますと、事業主としては、長期間の欠員による「代替要員の確保」という点が懸念事項ということになるでしょうか。

いずれにしましても、本肢を正解するのはかなり厳しいです。

 

なお、本肢の前段の「傷病(がん、糖尿病等の私傷病)を抱えた労働者が治療と仕事を両立できるような取組がある事業所のうち、取組に関し困難や課題と感じていることがある事業所の割合は約8割となっている。」という点は、正しいです。

 

 

 

【令和6年問1E】

設問:

転倒災害を防止するための対策に取り組んでいる事業所の割合は8割を超えている。このうち、転倒災害防止対策の取組内容(複数回答)をみると、「通路、階段、作業場所等の整理・整頓・清掃の実施」の割合が最も多く、次いで「手すり、滑り止めの設置、段差の解消、照度の確保等の設備の改善」となっている。

 

解答:

正しいです(「令和4年労働安全衛生調査」(こちら)の11頁)。

 

転倒災害を防止するための対策に取り組んでいる事業所の割合は、84.6%であり、転倒災害防止対策の取組内容(複数回答)については、多いほうから次の通りです。

 

①「通路、階段、作業場所等の整理・整頓・清掃の実施」=85.4%

 

②「手すり、滑り止めの設置、段差の解消、照度の確保等の設備の改善」=56.6%

 

③「滑りにくい靴の支給又は推奨」=40.1%

 

④「転倒予防に関する従業員教育の実施」=31.7% 

 

 

 

 

○【問2】= 労使間の交渉等に関する問題(令和4年労使間の交渉等に関する実態調査):

 

▶我が国の労使間の交渉等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

なお、本間は、「令和4年労使間の交渉等に関する実態調査(厚生労働省)」を参照しており、当該調査による用語及び統計等を利用している。また、BからDまでの「過去3年間」とは、「令和元年7月1日から令和4年6月30日」の期間をいう。

 

【令和6年問2A】(白書対策講座のパスワード。以下、本問において同じ)

 過去1年間(令和3年7月1日から令和4年6月30日の期間)に、正社員以外の労働者に関して使用者側と話合いが持たれた事項(複数回答)をみると、「派遣労働者に関する事項」の割合が最も高く、次いで「同一労働同一賃金に関する事項」、「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」の順となっている。

 

 

【令和6年問2B】

過去3年間に「何らかの労使間の交渉があった」事項をみると、「賃金・退職給付に関する事項」の割合が最も高く、次いで「労働時間・休日・休暇に関する事項」、「雇用・人事に関する事項」の順となっている。 

 

 

【令和6年問2C】

過去3年間に使用者側との間で「団体交渉を行った」労働組合について、交渉形態(複数回答)をみると、「当該労働組合のみで交渉」の割合が最も高く、次いで「企業内上部組織又は企業内下部組織と一緒に交渉」、「企業外上部組織(産業別組織)と一緒に交渉」の順となっている。

 

 

【令和6年問2D】

過去3年間に「労働争議がなかった」労働組合について、その理由(複数回答主なもの3つまで)をみると、「対立した案件がなかったため」の割合が最も高く、次いで「対立した案件があったが話合いで解決したため」、「対立した条件があったが労働争議に持ち込むほど重要性がなかったため」の順となっている。

 

 

【令和6年問2E】

労使間の諸問題を解決するために今後最も重視する手段をみると、「団体交渉」の割合が最も高く、次いで「労使協議機関」となっている。 

 

 

 

○【問3】= 労働契約法に関する問題:

 

▶労働契約法等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

【令和6年問3A】

 労働契約は労働者及び使用者が合意することによって成立するが、合意の要素は、「労働者が使用者に使用されて労働すること」、「使用者がこれに対して賃金を支払うこと」、「詳細に定められた労働条件」であり、労働条件を詳細に定めていなかった場合には、労働契約が成立することはない。

 

 

【令和6年問3B(労基法のパスワード)】

 労働基準法第106条に基づく就業規則の「周知」は、同法施行規則第52条の2各号に掲げる、常時各作業場の見やすい場所へ掲示する等の方法のいずれかによるべきこととされているが、労働契約法第7条柱書きの場合の就業規則の「周知」は、それらの方法に限定されるものではなく、実質的に判断される。 

 

 

【令和6年問3C(労基法のパスワード)】

 労働基準法第89条及び第90条に規定する就業規則に関する手続が履行されていることは、労働契約法第10条本文の、「労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによる」という法的効果を生じさせるための要件ではないため、使用者による労働基準法第89条及び第90条の遵守の状況を労働契約法第10条本文の合理性判断に際して考慮してはならない。

 

 

【令和6年問3D】

 労働契約法第17条第1項の「やむを得ない事由」があるか否かは、個別具体的な事案に応じて判断されるものであるが、期間の定めのある労働契約(以下本間において「有期労働契約」という。)は、試みの使用期間(試用期間)を設けることが難しく、使用者は労働者の有する能力や適性を事前に十分に把握できないことがあることから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、同法第16条に定めるいわゆる解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」以外の場合よりも広いと解される。

 

 

【令和6年問3E】

 労働契約法第18条第1項によれば、労働者が、同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下本肢において同じ。)の契約期間を通算した期間が5年を超えた場合には、当該使用者が、当該労働者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の申込みをしたものとみなすこととされている。

 

 

 

 

○【問4】= 労働関係法規に関する問題:【組み合わせ問題】

 

▶労働関係法規に関する次のアからオの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

 

〔以下、当サイトでまだテキストが完成していない職業安定法に関する肢のア飲み、ここで解説します。その他については、リンク先で解説しています。〕

 

 

・【令和6年問4ア】(職業安定法)

設問:

労働者の募集を行う者及び募集受託者は、職業安定法に基づく業務に関して新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法により労働者の募集に関する情報その他厚生労働省令で定める情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。

 

解答:

正しいです(職業安定法第5条の4第2項)。

 

 あまり細かい知識がなくても、本肢の内容は常識的に正しいものと推測可能です。

 

なお、「募集受託者」とは、委託募集(労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして労働者の募集に従事させるもの)により労働者の募集に従事する者のことです(同法第39条)。

 

 

 ・【令和6年問4イ】(最低賃金法)

 最低賃金法第8条は、「最低賃金の適用を受ける使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない」と定めている。

 

 

 ・【令和6年問4ウ】(障害者雇用促進法)

 障害者専用の求人の採用選考又は採用後において、仕事をする上での能力及び適性の判断、合理的配慮の提供のためなど、雇用管理上必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認することは、障害者であることを理由とする差別に該当せず、障害者の雇用の促進等に関する法律に違反しない。

 

 

【令和6年問4エ】(労働施策総合推進法)

 労働施策総合推進法第9条は、「事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)及び昇進について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」と定めている。

 

 

【令和6年問4オ】(短時間・有期雇用労働法)

 基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているY社において、通常の労働者が販売目標を達成した場合に行っている支給を、短時間労働者であるXについて通常の労働者と同一の販売目標を設定し、当該販売目標を達成しない場合には支給を行っていなくても、パートタイム・有期雇用労働法上は問題ない。

 

 

A(アとイ)  B(アとウ)  C(イとエ)  D(ウとオ)  E(エとオ)

 

 

 

 

○【問5】= 社会保険労務士法令に関する問題:

 

▶社会保険労務士法令に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

なお、Bにつき、「申請書等」とは社会保険労務士法施行規則第16条の2に規定する「申請書等」をいう。

 

〔以下、このページで解説をします。肢ごとに見ます。〕

 

 

【令和6年問5A】

設問:

 社会保険労務士法第2条第1項柱書きにいう「業とする」とは、社会保険労務士法に定める社会保険労務士の業務を、反復継続して行う意思を持って反復継続して行うことをいい、他人の求めに応ずるか否か、有償、無償の別を問わない。

 

解答:

正しいです(【昭和57.1.29庁保発第2号】)。

 

即ち、この通達は、次の通りです。

 

〔引用開始。〕

 

法第2条第1項の「業とする」とは、法別表第1に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書その他の書類(以下「申請書等」という。)の作成及びその提出代行、申請書等以外の労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(以下「帳簿書類」という。)の作成並びに労働及び社会保険に関する事項の相談指導(以下「相談指導」という。)を反覆継続して行うこと又は反覆継続して行う意思をもつて行うことをいい、他人の求めに応じているか否か、あるいは報酬を得ているか否か問わないこと。

 

〔引用終了。〕

 

 

【令和6年問5B】

設問:

社会保険労務士又は社会保険労務士法人は、社会保険労務士法第2条第1項第1号の3に規定する事務代理又は紛争解決手続代理業務(以下本肢において「事務代理等」という。)をする場合において、申請書等を行政機関等に提出するときは、当該社会保険労務士又は社会保険労務士法人に対して事務代理等の権限を与えた者の氏名又は名称を記載した申請書等に「事務代理者」又は「紛争解決手続代理者」と表示し、かつ、当該事務代理等に係る社会保険労務士の名称を冠してその氏名を記載しなければならない。

 

解答:

正しいです(社労士法施行規則第16条の3)。

 

 

 

【令和6年問5C】

設問:

 社会保険労務士となる資格を有する者が、社会保険労務士法第14条の2に定める登録を受ける前に、社会保険労務士の名称を用いて他人の求めに応じ報酬を得て、同法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行った場合には、同法第26条(名称の使用制限)違反とはならないが、同法第27条(業務の制限)違反となる。

 

解答:

誤りです。

社会保険労務士となる資格を有する者が、社会保険労務士法第14条の2に定める登録を受ける前に、社会保険労務士の名称を用いて他人の求めに応じ報酬を得て、同法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行った場合には、同法第27条(業務の制限)の違反だけでなく、同法第26条(名称の使用制限)の違反ともなります。

 

 

 

【令和6年問5D】

設問:

全国社会保険労務士会連合会は、社会保険労務士法第14条の6第1項の規定により登録を拒否しようとするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならず、同項の規定により登録を拒否された者は、当該処分に不服があるときは、厚生労働大臣に対して審査請求をすることができる。

 

解答:

正しいです(社労務士法第14条の6第14条の8)。

 

 

【令和6年問5E】

設問:

開業社会保険労務士及び社会保険労務士法人は、正当な理由がある場合でなければ、依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く。)を拒んではならない。

 

解答:

正しいです(社労士法第20条)。

 

 

 

 

 

選択式

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

なお、2については「令和5年版厚生労働白書(厚生労働省)」を参照しており、当該白書による用語及び統計等を利用している。

 

 

1 自動車運転者は、他の産業の労働者に比べて長時間労働の実態にあることから、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号。以下「改善基準告示」という。)において、今ての産業に適用される労働基準法では規制が難しい   及び運転時間等の基準を設け、労働条件の改善を図ってきた。こうした中、過労死等の防止の観点から、労働政策審議会において改善基準告示の見直しの検討を行い、2022(令和4)年12月にその改正を行った。

 

 

2 総務省統計局「労働力調査(基本集計)」によると、2022(令和4)年の女性の雇用者数は2,765万人で、雇用者総数に占める女性の割合は  である。

 

 

3 最高裁判所は、労働協約上の基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益である場合における労働協約の一般的拘束力が問題となった事件において、次のように判示した。

 

「労働協約には、労働組合法17条により、一の工場事業場の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用されている他の同種労働者に対しても右労働協約の  的効力が及ぶ旨の一般的拘束力が認められている。ところで、同条の適用に当たっては、右労働協約上の基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益とみられる場合であっても、そのことだけで右の不利益部分についてはその効力を未組織の同種労働者に対して及ぼし得ないものと解するのは相当でない。けだし、同条は、その文言上、同条に基づき労働協約の  的効力が同種労働者にも及ぶ範囲について何らの限定もしていない上、労働協約の締結に当たっては、その時々の社会的経済的条件を考慮して、総合的に労働条件を定めていくのが通常であるから、その一部をとらえて有利、不利をいうことは適当でないからである。また、右規定の趣旨は、主として一の事業場の4分の3以上の同種労働者に適用される労働協約上の労働条件によって当該事業場の労働条件を統一し、労働組合の団結権の維持強化と当該事業場における公正妥当な労働条件の実現を図ることにあると解されるから、その趣旨からしても、未組織の同種労働者の労働条件が一部有利なものであることの故に、労働協約の  的効力がこれに及ばないとするのは相当でない。

しかしながら他面、未組織労働者は、労働組合の意思決定に関与する立場になく、また逆に、労働組合は、未組織労働者の労働条件を改善し、その他の利益を擁護するために活動する立場にないことからすると、労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容、労働協約が締結されるに至った経緯、当該労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、当該労働協約を特定の未組織労働者に適用することが  と認められる特段の事情があるときは、労働協約の  的効力を当該労働者に及ぼすことはできないと解するのが相当である。」

 

 

4 男女雇用機会均等法第9条第4項本文は、「妊娠中の女性労働者及び出産後  を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。」と定めている。

 

 

選択肢:

 

①25.8% ②35.8% ③45.8% ④55.8%

 

⑤30日 ⑥8週間 ⑦6か月 ⑧1年

 

⑨著しく不合理である

 

⑩一部の労働者を殊更不利益に取り扱うことを目的としたものである

 

⑪規範 ⑫客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上妥当でない

 

⑬強行 ⑭拘束時間、休息期間 ⑮拘束時間、総実労働時間 ⑯債務

 

⑰直律 ⑱手待時間、休息期間 ⑲手待ち時間、総実労働時間 ⑳労働協約の目的を逸脱したものである

 

 

 

 

 

選択式解答

A=⑭「拘束時間、休息期間」(「令和5年版厚生労働白書」177頁。こちら(pdfの193頁))

 

B=③「45.8%」(「令和5年版厚生労働白書」216頁。こちら(pdfの232頁))

 

C=⑪「規範」(【朝日火災海上(高田)事件=最判平成8.3.26】。労働一般のこちら

 

D=⑨「著しく不合理である」(同上)

 

E=⑧「1年」(男女雇用機会均等法第9条第4項

 

 

 

 

選択式の論点とリンク先

〔1〕問1 = 空欄のA

 

問1(こちら。空欄のA)は、改善基準告示からの出題であり、従来、この告示から出題されたことはなかったため、難しかったと思います。

当サイトでは、労基法の36協定の時間外労働等の上限規制の特例の「自動車の運転の業務」のこちら(労基法のパスワード)で触れてはいますが、「今後も細かい知識は不要であるといえそうです」などと記載しており、正解は厳しかったと思います。

 

なお、本問の出典は、「令和5年版 厚生労働白書」の177頁(こちら。pdfの193頁)であり、当サイトの「白書対策講座」では、こちら(白書対策講座のパスワード)で掲載していました。

 

ちなみに、拘束時間とは、労働時間、休憩時間その他の使用者に拘束されている時間をいい、休息時間とは、勤務と勤務の間の自由な時間のことをいいます。休息時間は、休憩時間のように労働から解放された時間でなくてもよく、手間時間等も休息時間に含まれます。

 

本問についても、見知らぬ知識が出たから沈没ではなく、問題文から解決の鍵を見つけ出して粘る必要があります。

空欄A(こちら)の直前に「労働基準法では規制が難しい」とありますから、空欄Aは労基法によっては対応困難な選択肢が入るはずです。

そこで、Aに入りそうな選択肢(こちら)の候補を見ますと、正解である⑭「拘束時間、休息時間」のほか、⑮「拘束時間、総実労働時間」、⑱「手待時間、休息時間」及び⑲「手待時間、総実労働時間」があります。

このうち、「総実労働時間」ですが、労基法上の労働時間は、基本的に実労働時間を意味しますから(労基法のこちらこちら労基法のパスワード)、「総実労働時間」は労基法で対応できることになります。

また、「手待時間」についても、労基法上の労働時間に含まれます(こちら)。

従って、空欄Aは、「総実労働時間」や「手待時間」が含まれていない⑭「拘束時間、休息時間」であると判明します。

 

以上のように、問1は現場思考で処理できる可能性はありますが、知らない知識ではあるといえ、少なくとも一般の受験者の方の正答率は低いのでしょう。 

 

 

 

〔2〕問2 = 空欄のB

 

問2(こちら。空欄のB)は、「令和5年版厚生労働白書」の216頁(こちら。pdfの232頁)からです。

当サイトの「令和5年版 白書対策講座」では、こちらでした。

 

抜粋しますと、次の通りです。

 

〔引用開始。〕

 

総務省統計局「労働力調査(基本集計)」によると、2022(令和4)年の女性の労働力人口は3,096万人(前年比16万人増)で、女性の労働力人口比率は54.2%(前年比0.7ポイント上昇)である。

生産年齢人口(15~64歳)の女性の労働力人口比率は、74.3%(前年比1.0ポイント上昇)である。

また、女性の雇用者数は2,765万人(前年比26万人増)で、雇用者総数に占める女性の割合は45.8%(前年比0.3ポイント上昇)となっている。

 

〔引用終了。〕

 

 

本問の「雇用者数に占める女性の割合」のようなタイプの問題については、当サイトの「白書対策講座」では、従来からかなり意識しています。

数年前までは、役員含む「雇用者数」は約5800万人であり、「こよ(58)うしゃ」と覚えていましたが、その後は増加し、現在は約6千万人です(現在は、役員含まない雇用者数が、約5800万人です。「白書対策講座」の「令和5年労働力調査」のこちらの図の直前の文章の箇所や、こちらです。現在は、「雇用者は、過・労(60)だ」というゴロで覚えていますが、「こよ(58)うしゃ」のままでも大丈夫です)。

 

なお、本問において、「雇用者総数」が役員を含む数かどうか不明ですが、200万人程度の違いであり、解答には影響しません。役員を含むものとして、6千万人としておきます。

 

そこで、雇用者総数(6千万人)に占める女性(問題文より2765万人)の割合は、約2800÷6000とし、46.66・・・です。

従って、これに近い選択肢の③「45.8%」を選びます。

 

今回の選択式では、のちに見ます社会一般の問2でも、介護保険第1号被保険者に占める認定者の割合が問われています。

このように、重要な数字の概数は、把握しておく必要があります。

まずは、前掲のこちらの図の数字辺りが重要です。大まかに押さえておけばよく、例えば労働力人口の6925万人は7000万人と押さえられますが、当サイトでは「ろ(6)うどうりょく(9)」とゴロで6900万人と押さえています。

 

ところで、労働一般の選択式は、前々回の令和4年度の試験から傾向が変わり、データに関する出題がなくなっていましたが、今回はこの問2において(従来とは少し違う形で)データについて問われました。

今後、法令知識とデータを組み合わせる出題なども予想され、また、労働一般の択一式ではデータから出題が多いことから、これからもデータ問題を軽視することはできません。

その際、厚生労働白書は、できるだけ早い時期にざっと目を通して頂くとよろしいです。スキマ時間などをご利用下さい。

 

 

 

 

〔3〕問3 = 空欄のC及びD

 

問3(こちら。空欄のC及びD)は、労働組合法の労働協約の事業場単位の一般的拘束力(労組法第17条)に関する出題です(労働一般のこちら以下)。

出題された判例は、【朝日火災海上(高田)事件=最判平成8.3.26】であり、労組法の中でも指折りの重要判例ですが、これまで未出題でした。

当サイトでも、直前対策講座のこちら(直前対策講座のパスワード)の【問3】のDで取り上げています。

当サイトでこの判例を学習されていた方にとっては、数分で解答できるサービス問題ですが、この判例を学習していない場合は、特に空欄Dあたりでかなり悩むこととなります。

以下、簡単に説明します。

 

労組法第17条は、労働協約が事業場の大部分に適用された場合には、当該事業場の締結組合の組合員以外の労働者についても当該労働協約の規範的効力(強行的効力+直律的効力)を拡張適用する制度です(事業場単位の一般的拘束力とか、事業場内拡張などといわれます)。

そして、本判決では、この第17条の一般的拘束力が、未組織労働者(非組合員)に対しても及ぶのかが問題となったものです。

 

この点、本判決は、原則としては、第17条による一般的拘束力は、未組織の同種労働者に対しても及ぶとします。

その理由として、①第17条の文言上、拡張適用される同種労働者について特段の限定がないこと、②労働協約の締結に当たっては、総合的に労働条件を定めていくのが通常であり、その一部をとらえて有利、不利をいうことは適当でないこと(例:休日日数を増加しつつ、変形労働時間性を採用する協定)、③第17条の趣旨(当該事業場の労働条件の統一、労働組合の団結権の維持強化、当該事業場における公正妥当な労働条件の実現)の3点をあげます。

 

ただし、例外があり、それが本問の空欄D(こちら)の部分です。

つまり、諸事情を検討し、「当該労働協約を特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるとき」は、当該労働協約は当該未組織労働者には拡張適用されないとします。

 

より詳しい内容については、当サイトの労働組合法の「事業場単位の一般的拘束力」の冒頭(こちら)から読み進めて頂くとよいです。

 

 

 

〔4〕問4 = 空欄のE

 

問4(こちら。空欄のE)は、均等法第9条第4項の妊産婦に対する解雇の無効の原則からの条文問題です(労働一般のこちら)。

「妊産婦に対する解雇の無効の原則」と覚えておけば、「妊産婦」が対象ですので、労基法の産婦の定義通り(労基法のこちら以下)、空欄Eは出産後「1年」を経過しない女性であることを思い出しやすいです。

 

なお、この均等法第9条第4項は、これまで出題されたことがなかったようです。そこで、この空欄Eは正答できなくても仕方がないといえるでしょうか?

しかしながら、本問は正答する必要があります。

この均等法第9条では、第3項として「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」という労働法上の最重要条文の一つといっても過言でない規定が配置されているのです(マタハラ判決(こちら)で争点となった条文です)。

その学習過程で第4項にも目が触れるでしょうから、この空欄Eは正解して頂きたいところです。

 

以上のように、今回の労働一般の選択式は、客観的には難しい部類といえるのですが(平均点は2.0点で、今回の全科目のうち最も低かったです(前回は2.7点)。結果として、労働一般の選択式の基準点は、2点に引き下げられました)、ただし、当サイトで学習されている方は、A以外の空欄については正答することが容易であるといえました。

 

 

 

総評

選択式については、上記の通り、基準点が引き下げられ、多くの受験者の方にとって厳しい内容でした。

今回の選択式の出典は、①「令和5年版 厚生労働白書」、②判例及び③条文となっており(バランスはとれています)、①のデータ問題が一部ですが復活していることに注意です。

今後も、このような出題形式となる可能性はありえ、労働経済のデータ問題を軽視することはできません。とりわけ「厚生労働白書」は、早い時期からまめにチェックして、出題対象となりそうな個所の数字等についてイメージを作っておかれるとよいでしょう。

 

選択式の平均点は、2.0点(前年度2.7点)であり、今回の科目の中で最も低かったです。基準点が2点に引き下げられ救済措置が行われました。

 

 

択一式については、社会一般との合計ですが、平均点は4.0点(前年度4.3点)でした。

かなり微妙です。

 

【問1】(こちら)は、出典の「労働安全衛生調査」を学習していても、正答するのは厳しかったかもしれません。捨て問となりかねないところです。

 

【問2】(こちら)は、出典の「労使間の交渉等に関する実態調査」を学習していなくても、正解肢を見つけられる可能性があったといえます。

 

【問3】(こちら)は、肢のCやDは通達の細かい知識が題材となっていますが、当サイトで学習されている方は、正解肢は見つけられそうです。

 

【問4】(こちら)は、判断が微妙となる肢が少なくないです。

 

 【問5】(こちら)は、社労士法のため、学習にあまり時間をかけていないことが多く、微妙です。

 

 

択一式は、法令問題の【問3】及び【問4】についても、学習時間が少ない場合には、自信をもって正答できないような内容になっています。

【問3】の労働契約法の場合は、同法の条文をベースに同法の内容を学習した後は、通達(「平成24年改正法施行通達」=【平成24.8.10基発第0810号第2号】)についてもチェックしておく必要があります。

 

労働一般の学習方法としては、まずは、市販の1冊本程度の知識をしっかり把握することが必要ですが、趣旨やわかりにくい箇所の理解、さらには記憶すべき箇所等、通達等について当サイトをご参照下さい。

 

 

 

<前のページ