令和6年度版

 

第2項 当事者の意思に基づかない労働契約の終了

次に、当事者の意思に基づかない労働契約の終了事由について学習します。

労働契約の終了自体が直接的には当事者意思に基づいていない場合、即ち、労働契約の終了時に当事者の意思に基づき労働契約を終了させる行為がない場合です。

 

例えば、期間の定めがある労働契約における期間の満了も、広くは、期間を定めたという当事者意思に基づく終了事由ともいえますが、期間の満了により契約が自動終了するという点では、契約の終了自体は直接的には意思に基づいていない場合(契約の終了時に当事者の意思に基づき終了させる行為がない場合)と整理できます(単に整理の便宜上の問題ですから、大雑把に考えて頂いて結構です)。

 

主要なものとして、期間の満了定年到達当事者の消滅等があります。

とりわけ、有期労働契約における期間の満了の問題は重要であり、ここでは有期労働契約の全般について整理します。

 

以下、順に見ていきます。

 

 

 

§1 期間の満了

期間の定めのある労働契約有期労働契約)は、期間の満了により当然に終了するのが原則です = 自動終了の効果。 

 

なお、以下、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結した労働者を「有期契約労働者」と、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結した労働者を「無期契約労働者」ということがあります。

 

ただし、「パートタイム労働法」から改正された「短時間・有期雇用労働法」(原則として令和2年4月1日施行)においては、上記の「有期契約労働者」を「有期雇用労働者」と表現しています(短時間・有期雇用労働法第2条第2項(労働一般のパスワード)こちら)。

当サイトでも、主に「短時間・有期雇用労働法」に関する個所では、「有期雇用労働者」を用います。

 

 

有期労働契約の全体構造

まず、有期労働契約の全体構造を再度まとめておきます(既述の「労働契約の成立」の「労働契約の期間」の個所(こちら)においても、簡単にご紹介しました。ここでは詳しく学習します)。

 

有期労働契約を、「発生(成立)➡ 変更(展開)➡ 消滅(終了)」の時系列の視点で整理していきます。

 

 

〇 有期労働契約の全体構造:

 

(一)有期労働契約の発生(成立)

 

◆有期労働契約の発生(成立)に関連する労基法、労働契約法、民法及び短時間・有期雇用労働法の主な規定を挙げますと、次の通りです(なお、以下の短時間・有期雇用労働法上の制度については、ここでは深入りしないで結構です)。

 

 

1 労働契約の期間上限労基法第14条第1項こちら以下

 

➡ 有期労働契約の期間は、原則として3年上限です。

 

 

2 労働契約締結の際労働条件の明示労基法第15条第1項こちら以下

  【令和6年度試験 改正事項

※ 労働契約締結の際の「労働契約の期間」についての絶対的明示事項として、「労働契約の期間に関する事項」と「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は有期労働契約の更新回数上限の定めがある場合には当該上限を含む)」があります。

 

後者(かっこ書を除く)は、平成24年の労基法(施行規則)の改正により新設された規定です(平成25年4月1日施行)。

また、後者のかっこ書の「通算契約期間・更新回数の上限の定めがある場合の当該上限」は、令和6年4月1日施行の施行規則の改正により追加されました。

さらに、無期転換ルールに基づき、契約期間内に無期転換申込権が発生する有期労働契約を締結(更新)する場合においては、無期転換申込みに関する事項及び無期転換後の労働条件を明示することが要求されました(施行規則第5条第5項の新設)。

これらの令和6年4月1日施行の改正事項については、詳しくはこちらで見ました。図はこちらの図の左欄の(2)と最下部の※1です。 

 

※ 上記2の特則として、短時間・有期雇用労働法第6条(労働一般のパスワード)において、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときの事業主の「労働条件に関する文書の交付等」の義務が定められています(こちら以下)。 

 

 

3 事業主が講ずる措置の内容等の説明短時間・有期雇用労働法第14条こちら以下

 【令和2年度試験 改正事項

※ 事業主は、短時間・有期雇用労働者雇い入れたときは、当該事業主が講ずる(不合理な待遇の禁止等に係る)雇用管理の改善等の措置の内容について説明しなければならず(短時間・有期雇用労働法第14条第1項)、また、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違内容及び理由並びに待遇の決定に当たって考慮した事項について説明しなければなりません(同法同条第2項

 

 

4 契約期間の長期化配慮義務(必要以上に短い期間による反復更新をしない配慮義務)労働契約法第17条第2項こちら

 

 

5 均衡・均等待遇のルール

令和2年度試験 改正事項

※ 令和2年4月1日施行(原則)の「パートタイム労働法」から「短時間・有期雇用労働法」への改正に伴い、「短時間・有期雇用労働法」において、有期雇用労働者と短時間労働者に共通するルールが定められました。

このうち、いわゆる均衡・均等待遇のルール(同一の事業主に雇用される通常の労働者とのバランスのとれた待遇の確保の要請)として、次のような規定があります。

 

 

(1)不合理な待遇の禁止短時間・有期雇用労働法第8条こちら以下

 

従来は、労働契約法旧第20条において、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違が禁止されていました。

しかし、前記改正により、短時間労働者と有期雇用労働者を通じて労働条件の相違の不合理性の判断方法をより明確化する等の趣旨から、同条と旧パートタイム労働法第8条が統合されて、短時間・有期雇用労働法第8条に改められました。これにより、労働契約法第20条は廃止されました。

 

 

(2)通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止短時間・有期雇用労働法第9条こちら以下) 

 

 

(3)通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者「以外」の短時間・有期雇用労働者の待遇(同法第10条~第12条こちら以下

 

 

※ その他、短時間・有期雇用労働法において、有期雇用労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとする場合について、当該事業所において雇用する有期雇用労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする努力義務規定(同法第7条第2項。短時間労働者についても同様です)などもあります。

 

 

次に、有期労働契約の変更に関する問題です。 

 

 

(二)有期労働契約の変更

 

 

1 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(いわゆる無期転換ルール) 労働契約法第18条こちら以下平成25年4月1日施行)

 

 

2 通常の労働者への転換の推進(短時間・有期雇用労働法第13条こちら以下)。

 

 

3 紛争の解決等

 【令和2年度試験 改正事項

※ 短時間・有期雇用労働法において、苦情の自主的解決同法第22条こちら)、都道府県労働局長による紛争の解決の援助第24条こちら)、調停の委任(第25条こちら)、公表第18条第2項こちら)といった、紛争の解決のための制度が定められています(こちら以下)。

 

 

 

(三)有期労働契約の消滅(終了)

 

○ 有期労働契約の終了に関連する規定は、以下の通り、大きくに分かれます。

 

1 民法上、期間の定めのある労働契約(雇用契約)は、やむを得ない事由があるとき以外は、各当事者は、解除できない民法第628条)のが原則です = 中途解約の制限。

 (期間を定めた当事者間の合意(契約)の尊重の趣旨です。)

 

➡ そこで・・・

 

(1)労働者については

 

労働契約の期間満了前は、やむを得ない事由がない限り、解約できないのが原則であるため、労働者の人身拘束の問題が生じます。

 

➡ 従って、労基法が、有期労働契約期間の上限を定めました(労基法第14条第1項)。(上記の(一)の1ですでに触れました。こちら以下

 

 

(2)使用者については

 

労働契約法第17条第1項が、上記民法第628条を徹底し、使用者は、期間満了前は、やむを得ない事由がない限り解雇(解約)できないことを強行規定化しました = 雇用保障の効果。

 

 

2 他方、有期労働契約は、期間の満了により、当然に終了するのが原則です(それが当事者間の合意(契約)であるためです)= 自動終了の効果。

そこで、期間満了の際は、基本的には、合意により更新がなされるか(あるいは、民法第629条第1項こちら)の黙示の更新があるか)、それとも、更新されないか(雇止め)が問題となるだけとなります。

この有期労働契約の期間満了により使用者がその更新をしないことを「雇止め」といいます(有期労働契約の期間満了による終了のことですが、使用者が更新をしない(更新を拒否する)という側面に焦点があてられた表現です)。 

 

しかし、使用者による雇止めを無制約に認めますと、有期契約労働者は不安定な地位におかれることとなるため、その保護が問題となります。

この雇止めに対する有期契約労働者の保護に関する規定としては、次のようなものが挙げられます。

 【令和6年度試験 改正事項

(1)雇止め等に関する基準等労基法第14条第2項第3項。【平成15.10.22厚生労働省告示第357号】(最終改正【令和5.3.30厚生労働省告示第114号】)の「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」(こちら以下))

 

 

(2)雇止め法理労働契約法第19条こちら以下(この(2)は、平成24年の労契法の改正により新設されました(平成24年8月10日施行)。)

 

 

 

 

非正規雇用(非典型雇用)

なお、有期労働契約(有期契約労働者)の問題は、いわゆる非正規雇用(非典型雇用)の問題の一つに位置づけられます。※1、※2

 

正規雇用とは、一般に、

 

(Ⅰ)期間の定めのない労働契約(無期労働契約)で、

 

(Ⅱ)使用者に直接雇用されている、

 

(Ⅲ)所定労働時間がフルタイム

 

正規従業員としての雇用をいいます。

 

なお、統計調査や人事管理等においては、職場での呼称(例:正社員か、パート・アルバイト・契約社員等かなど)を(も)判断基準とすることが多いです。 

 

 

非正規雇用とは、上記の正規雇用以外の雇用をいいます。

 

従って、正規雇用と非正規雇用との違いとして、一般に、次の3点が挙げられます。

 

(Ⅰ)労働契約の「期間」の問題 = 無期労働契約か有期労働契約かの問題

 

(Ⅱ)直接雇用か間接雇用かの問題

 

➡ 間接雇用(他の使用者に雇用されている労働者を利用する形態)の例として、労働者派遣業務請負等があります(派遣先等において間接雇用する関係となります)。

 

(Ⅲ)「労働時間」の問題 = フルタイムかパートタイムかの問題

 

 

このうち、(Ⅰ)の労働契約の「期間」については、以下で、有期労働契約における期間の満了の問題を学習します。

(Ⅱ)については、労働一般の労働者派遣法で学習しますが、労基法でも、各個所で派遣に関する責任分担の問題等が生じます。

(Ⅲ)については、労働時間に関して、労基法で学習するほか、短時間労働者に関して、労働一般の短時間・有期雇用労働法で学習します。

 

 

 

※1 非正規雇用(有期労働契約)の問題点

非正規雇用の問題点として、上記(Ⅰ)の「有期労働契約」に関する問題の所在を見ておきます(川口美貴先生の「労働法」第5版647頁以下(初版596頁以下)その他の文献を参考にしています)。

 

有期労働契約に関する問題は、大別して2つあります。

一つが、労働者の雇用の不安定さ(契約期間の満了により、有期労働契約は当然に終了するのが原則です。また、雇用調整の際に非正規雇用労働者が正規雇用労働者より先に調整の対象とされることなどがあります(のちにこちらで見ます)。なお、雇止め(使用者が有期労働契約の更新を拒否すること)の不安があることによって、年次有給休暇の取得など正当な権利行使が抑制されるといった問題もあります)、もう一つが、労働条件の格差(期間の定めのない労働契約を締結している労働者との労働条件の格差が大きいこと)です。

(野川先生の「労働法」410頁も、この雇用の安定と公正な処遇の問題を非正規雇用労働者に共通する課題としています。水町先生の「詳解労働法」初版340頁は、さらに、労使間のコミュニケーション面での格差も挙げます。パートタイム労働者の労働組合の推定組織率は低いレベルに留まっています(白書対策講座のこちら)。)

 

 

1 前者の「労働者の雇用の不安定さ」という問題を解決する方法としては、次の(1)~(3)があります。

 

(1)有期労働契約を締結することができる事由の限定(「入口規制」)

 

(2)一定の要件を充足する有期労働契約の無期労働契約への転換(「中間規制」)

 

(3)解雇・契約更新拒否の制限(「出口規制」)

 

 

※ この(1)~(3)については、大まかに、(1)「入口規制 = 発生の問題」、(2)「中間規制 = 変更の問題」、(3)「出口規制 = 消滅の問題」と考えるとわかりやすいです。

具体的には、以下の通りです。

 

 

日本では、(1)の「入口規制」(例えば、有期労働契約を締結することができる事由について、一時的・臨時的労働に従事する場合に限定する等)は、採用されていません

(平成24年の労働契約法の改正の際に入口規制の導入の是非が検討されましたが、雇用機会の減少や有期労働契約が認められる事由に関する紛争の多発化に対する懸念等から、その導入が見送られたとされます。)

 

(2)の「中間規制」については、「無期転換ルール」(前記(二)「有期労働契約の変更」の1(こちら))が規定されました(ちなみに、無期転換ルールは出口規制に位置づけられることが多いですが、川口先生は中間規制に位置づけています。視点の違いに過ぎません)

 

(3)の「出口規制」については、例えば、「有期労働契約期間満了前の解雇の制限」(前記の(三)「有期労働契約の終了」の1こちらを参考)、「雇止めに関する基準等」(こちら)、「雇止め法理」(こちら)が規定されています。 

 

令和2年度試験 改正事項

2 また、「労働条件の格差」については、「短時間・有期雇用労働法」において、いわゆる「均衡・均等待遇のルール」に基づくいくつかの規定が定められています。

不合理な待遇の禁止」(短時間・有期雇用労働法第8条(労働一般のパスワード)こちら以下)と「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止」(同法第9条こちら以下)が代表的なものです。

また、「労働者派遣法」においても、「短時間・有期雇用労働法」と基本的には類似した「均衡・均等待遇のルール」が定められています(次の※2で見ます)。

これらは、いわゆる「内容規制」の問題です。  

 

 

 

※2 均衡待遇のルール

令和2年度試験 改正事項

なお、上記※1の2(直前の記述)は、労働条件の格差に対応するための均衡(均等)待遇のルールの一つですが、非正規雇用労働者一般についての主な均衡待遇のルールは、以下の通りです。

基本的に、働き方改革関連法(【平成30.7.6法律第71号】。原則として、令和2年4月1日施行。派遣法関係等を除き、中小事業主については、令和3年4月1日施行)により、「雇用形態に関わりない公正な処遇の確保」という見地から整備されたものです。

 

 

① 短時間・有期雇用労働者 ➡

 

(ⅰ)短時間労働者及び有期雇用労働者(「短時間・有期雇用労働者」。短時間・有期雇用労働法第2条第3項(労働一般のパスワード))については、「短時間・有期雇用労働法」が短時間労働者と有期雇用労働者に共通するルールを定めています。

 

このうち、均衡(均等)待遇のルールとして、「不合理な待遇の禁止」(短時間・有期雇用労働法第8条こちら以下)及び「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止」(同法第9条こちら以下)などがあります。 

 

「不合理な待遇の禁止」の規定は、従来、有期契約(雇用)労働者については、労働契約法旧第20条において、「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違の禁止」が定められており、短時間労働者(パートタイム労働者)については、「通常の労働者との不合理な待遇の相違の禁止」(旧パートタイム労働法第8条)が定められていました。

しかし、働き方改革関連法に基づく令和2年4月1日施行の改正(原則)により、有期雇用労働者と短時間労働者に共通する「不合理な待遇の禁止」等の規定は、短時間・有期雇用労働法中で規定されることとなりました。

 

 

(ⅱ)労働契約法第3条第2項の「就業実態に応じた均衡考慮の原則」(本規定は、次の派遣労働者についても適用されます)。

 

   

② 派遣労働者

 

派遣労働者については、従来、「不合理な待遇の禁止」といった均衡待遇を直接的に図る制度は定められていませんでした(従来の制度を含む派遣法の改正全般については、派遣法のこちら以下をご参照下さい)。 

 

しかし、働き方改革関連法により、派遣労働者についても、派遣法第30条の3において、新たに「不合理な待遇の禁止」(同条第1項)及び「派遣先の通常の労働者と同視すべき派遣労働者の不利益取扱いの禁止」(同条第2項)が新設されました。 

その際、原則として、派遣の通常の労働者との不合理な待遇の禁止・不利益取扱いの禁止(派遣先均等・均衡方式同法第30条の3)が要請されます。

例外として、労使協定により一定の水準を満たす待遇を定めそれを遵守する場合には、当該協定対象派遣労働者については、派遣先均等・均衡方式は適用されず、当該労使協定により定める待遇が適用されます(労使協定方式同法第30条の4)。

 

この例外の労使協定方式については、派遣先労働者との均等・均衡方式を貫きますと、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、派遣労働者の生活が不安定になること、また、派遣労働者がキャリアを蓄積してスキルアップしても、そのスキルに応じた賃金にはならないことといった問題があることが考慮されたものです。

実務上は、「派遣先均等・均衡方式」より「労使協定方式」が採用されるケースが圧倒的に多くなっています(「令和3年度 労働者派遣事業報告書等の集計結果」では、約9割(88.2%)の派遣元が労使協定方式を採用しています)。

 

 

 

※3 多様な正社員

なお、近年、「正規雇用」においても、「典型的な正規雇用(正社員)」と「多様な(形態における)正社員」が区別されることがあります。

即ち、前述の通り、労働契約の期間の定めがない、直接雇用である、所定労働時間がフルタイムである者が、原則として、「正規雇用」とされますが、そのうち職務勤務地労働時間等が限定的でない正社員が「典型的な正規雇用」とされ、いずれかが限定的な正社員が「多様な正社員」とされます。

 

「正規雇用」の労働者と「非正規雇用」の労働者の働き方の二極化を緩和し、労働者一人ひとりのワーク・ライフ・バランスと、企業による優秀な人材の確保や定着の実現のため、職務、勤務地又は労働時間を限定した「多様な正社員」を労使双方にとって望ましい形で普及させることが求められるとされています(「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会報告書」参考。平成26年7月30日に公表された報告書です)。

 

この「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会報告書」については、労働一般の平成27年度の択一式問1において数肢出題されており、労働一般の労働契約法の個所でご紹介します(例:【労働一般 平成27年問1(労働一般のこちら)】)。

 

なお、多様な正社員に関するデータについては、「令和3年度 雇用均等基本調査」のこちら(白書対策講座のパスワード)をご覧下さい。

 

 

以下、有期労働契約について、発生(成立)に関する問題から順に見ていきます。

 

 

 

 

〔1〕発生(成立)

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の「発生(成立)」に関する諸制度を整理します。

 

なお、「短時間・有期雇用労働法」で定められている制度については、以下では触れません。労働一般のこちら以下で学習します。

 

 

 

〈1〉労働契約の期間の上限

まず、労働契約の期間の上限が定められています(第14条第1項)。

即ち、期間の定めのある労働契約(雇用契約)については、やむを得ない事由があるとき以外は、各当事者は、解除できない(民法第628条)のが原則ですから、労働者の人身拘束の危険が生じるため、労基法は有期労働契約の期間の上限(原則として3年)を定めています。

 

詳しくは、既述の「労働契約の成立」の「労働契約の期間」の個所(こちら以下)をご参照下さい。 

 

 

〈2〉労働契約締結の際の労働条件の明示(第15条第1項)

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して所定の労働条件を明示することが必要ですが、絶対的明示事項(必ず明示しなければならない事項)として、「労働契約の期間に関する事項」と「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は有期労働契約の更新回数上限の定めがある場合には当該上限を含む)」が挙げられています(施行規則第5条第1項第1号第1号の2)。

  

※ 詳しくは、既述の「労働契約の成立」の「労働契約の成立過程の問題」の「労働条件の明示」の個所(こちら以下)をご参照下さい。ここでは、結論のみ記載しておきます。

 

 

 

一 労働契約の期間に関する事項(施行規則第5条第1項第1号)

期間の定めのある労働契約の場合はその期間、期間の定めのない労働契約の場合はその旨を明示することが必要です。

 

二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項(施行規則第5条第1項第1号の2)

期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は有期労働契約の更新回数上限の定めがある場合には当該上限を含みます)についても、明示が必要です。

ただし、期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限ります(施行規則第5条第1項ただし書同項第1号の2)。

 

この二(かっこ書以外)は、平成24年の施行規則の改正(平成25年4月1日施行)により新設された明示事項です。

令和6年度試験 改正事項

さらに、令和6年4月1日施行の施行規則の改正により、「通算契約期間又は有期労働契約の更新回数上限の定めがある場合には当該上限」(以上について、まとめて「更新上限」と表現されることがあります)も明示しなければならないことに改められました(施行規則第5条第1項第1号の2にかっこ書として追加。こちらの図の左欄の(2))。

 

以上、詳しくは、「労働条件の明示」の個所(こちら以下)をご参照下さい。

 

 

以上で、労働契約締結の際の労働条件の明示について終わります。

 

 

 

〈3〉契約期間の長期化の配慮義務(必要以上に短い期間による反復更新をしない配慮義務)(労働契約法第17条第2項)

◆使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければなりません(労働契約法第17条第2項)。

【過去問 労働一般 平成23年問4E(こちら)】

 

 

【労働契約法】

 

※ 次の労働契約法第17条のうち第2項の問題です。ちなみに、本条は、労契法の制定当時からあった規定です(平成24年の改正により、若干、文言が整理されましたが)。

 

労契法第17条(契約期間中の解雇等)

1.使用者は、期間の定めのある労働契約(以下、この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

 

2.使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。

 

 

○趣旨

 

有期労働契約の契約期間を長期化させることにより、雇止めに関する紛争の端緒となる契約更新の回数そのものを減少させ、紛争を防止しようとする趣旨です。

 

即ち、現行法では、労働契約の期間の下限について直接は規制していませんが(なお、「雇止めに関する基準」第4条(こちら)において、一定の要件のもと、有期労働契約の期間をできる限り長くする努力義務が告示されています)、不必要に短い期間の労働契約が反復更新されることは、労働者の雇用の不安定化をもたらしますので、労働契約法において、有期労働契約の期間の長期化の配慮義務の規定が定められたものです(こちらでも触れました)。

 

ちなみに、本規定は一種の「入口規制」(有期労働契約を締結することができる事由(機会)の限定)とはいえますが、義務規定ではなく、配慮義務規定に留まっています。 

なお、配慮義務は、一般には、努力義務よりは一段高い義務なのですが、本条は、「必要以上に」という不明確な文言を用いていること等から、訓示規定と解されています(ただし、雇止め法理等において、本条の趣旨が考慮されることはあります。水町「詳解労働法」第2版396頁(初版386頁)、「詳説労契法第2版」174頁、菅野「労働法」第12版319頁(第11版310頁)等参考)。

 

上記の第2項の太字部分を記憶しておいて下さい。

 

 

◯過去問: 

 

・【労働一般 平成23年問4E】

設問:

使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならないとされている。

 

解答:

正しいです。労働契約法第17条第2項の通りです。 

 

 

以上で、有期労働契約の「発生」に関する問題を終わります。次に、「変更」に関する問題として、「無期転換ルール」を見ます。

 

 

 

〔2〕変更

有期労働契約の「変更」に関する問題として、有期労働契約の無期労働契約への変更の問題、即ち、いわゆる無期転換ルールを見ます。

 

この無期転換ルールは、有期労働契約の無期労働契約への「転換」という観点からは、「変更」に関する問題ですが、「有期労働契約」が終了するという観点からは、「消滅・終了」に関する問題です。

 

 

 

有期労働契約の無期労働契約への転換(いわゆる無期転換ルール)(労働契約法第18条)

労働契約法において、有期労働契約が無期労働契約に転換する、いわゆる無期転換ルールが定められています(労働契約法第18条)。

 

※ 本規定は、平成24年の労働契約法の改正(平成25年4月1日施行)により同法中に新設されました非常に重要なルールですが、複雑です。

初学者の方は、あまり細部には入り込まず、概要を把握して下さい。

 

 

○趣旨

 

労働契約法において、同一の使用者との間で締結された有期労働契約5年原則を超えて反復更新された場合に、有期契約労働者申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換させる仕組みが設けられています。これを、一般に「無期転換ルール」といいます。

有期労働契約の濫用的な利用を抑制し有期契約労働者の雇用の安定を図ろうとした趣旨です。

 

まず、条文を掲載します。さしあたりは流し読みをして頂き、本文を全部読まれた後に熟読して下さい。

 

 

【労働契約法】

労働契約法第18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

 

1.同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約契約期間の始期の到来前のもの除く。以下この条において同じ。)の契約期間通算した期間次項において「通算契約期間」という。)が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす

この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分除く。)とする。

 

2.当該使用者との間で締結されたの有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間6月(当該空白期間の直前に満了した1の有期労働契約の契約期間(当該1の有期労働契約を含む2以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が1年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間2分の1を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間(1月に満たない端数を生じたときは、1月として計算する))以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の労働期間は、通算契約期間算入しない

 

 

※ 要件と効果について、まとめて掲載しておきます。

 

 

一 要件

 

いわゆる無期転換ルールは、次の(一)及び(二)の要件をみたすときに適用されます労働契約法第18条

 

 

(一)通算契約期間の要件

 

◆同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除きます。以下、本条において同じです)の契約期間を通算した期間(通算契約期間)が5年(原則)を超える労働者であること(労働契約法第18条第1項前段)。

 

※ 前後有期労働契約の契約期間の(=空白期間)が6月以上(原則)の場合は、当該空白期間有期労働契約の契約期間通算契約期間算入できません同条第2項)。

 

 

(二)無期転換申込権の行使

 

◆当該労働者が、当該使用者に対して、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までの間に、当該満了日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約締結の申込みをしたこと(労働契約法第18条第1項前段)。

 

※ この(二)の申込みをする権利を、「無期転換申込権」といいます。即ち、この(二)は、無期転換申込権の行使の要件ということになります。

 

 

二 効果

 

(一)労働者が所定の申込みをしたとき(無期転換申込申込権を行使したとき)は、使用者は、当該申込みを承諾したものとみなされます労働契約法第18条第1項前段)= いわゆる「承諾みなし」。

 

※ 現に締結している有期労働契約の期間満了日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約(無期労働契約)が、申込みの時点成立します(同項参考)。

 

(二)成立した無期労働契約の労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除きます)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除きます)について別段の定めがある部分除きます)となります(労働契約法第18条第1項後段)。

 

 

 

※ 要件について:

 

上記一の要件は、厳密には、(一)の「通算契約期間の要件」を満たした場合(において、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までの間)に、「無期転換申込権」が「発生」し、(二)当該「無期転換申込権」を「行使」するということであり、これにより、上記二の承諾みなしの効果が生じるということになります。 

 

 

※ 無期転換ルールについては、空白期間等に関して細かい政省令が発出されています。

ただ、本ルールが出題されるであろう労働一般(労働契約法)においては、あまり細かい事項の出題はしにくいといえ、基本的な要件(特に数字)と効果を押さえておきます。

上記の条文のキーワード並びに要件及び効果を押さえ、次の図により全体像をイメージして下さい。

 

全体像は、次の図の通りです(空白期間についての細かい事項は、後述の省令(ただし、読まなくて結構です)に掲載されています)。

 

以下、要件と効果について詳しく見ていきます。

 

 

一 要件

○ いわゆる無期転換ルールは、次の(一)及び(二)の要件をみたすときに適用されます(労契法第18条)。 

 

 

(一)通算契約期間の要件

 

◆同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除きます)の契約期間を通算した期間(通算契約期間)が5年原則を超える労働者であること。

 

※ 前後の有期労働契約の契約期間の間(=空白期間)が6月以上(原則)の場合は、当該空白期間の有期労働契約の契約期間は通算契約期間に算入できません。

 

 

(二)無期転換申込権の行使

 

◆当該労働者が、当該使用者に対して、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までの間に、当該満了日翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたこと。

 

 

なお、ここでも、【平成24年8月10日基発0810第2号】を参考にしており、この通達を【平成24年改正法施行通達】として引用します。

 

以上の要件について、詳しく見ます。

 

 

 

(一)通算契約期間の要件

◆同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く)の契約期間を通算した期間(通算契約期間)が5年(原則)を超える労働者であること

 

 

1「同一の使用者」との間で2以上の有期労働契約が存在すること

 

「同一の使用者」の意義について、「平成24年改正法施行通達」は次の通りです。

 

(1)「同一の使用者」とは、「労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断されるものであること。

ただし、使用者が、就業実態が変わらないにもかかわらず、法第18条第1項に基づき有期契約労働者が無期労働契約への転換を申し込むことができる権利(以下『無期転換申込権』という。)の発生を免れる意図をもって、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に他の使用者に切り替えた場合は、法を潜脱するものとして、同項の通算契約期間の計算上『同一の使用者』との労働契約が継続していると解されるものであること。」

 

※「同一の使用者」の考え方は、例えば、短時間・有期雇用労働法第8条(不合理な待遇の禁止。労働一般のこちら)と同様であり、事業主(法人、個人)単位で判断されます。

【過去問 労働一般 平成30年問3オ(こちら)】

 

 

(2)「派遣労働者の場合は、労働契約の締結の主体である派遣事業主との有期労働契約について法第18条第1項の通算契約期間が計算され」ます。

 

※ 即ち、派遣労働者の場合、派遣元事業主を本条の「使用者」と考えるということです。 派遣労働者が労働契約を締結しているのは派遣元事業主だからです。

 

 

◯過去問: 

 

・【労働一般 平成30年問3オ】

設問:

労働契約法第18条第1項の「同一の使用者」は、労働契約を締結する法律上の主体が同一であることをいうものであり、 したがって、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であれば当該個人事業主単位で判断される。

 

解答:

正しいです(前掲の【平成24年8月10日基発0810第2号】)。

労働契約法第18条第1項前段は、単に「同一の使用者」としているだけですから、事業場単位ではなく、事業主単位で判断されると解するのが自然です。

 

 

 

2「2以上の有期労働契約」が存在すること

 

「2以上の有期労働契約」が存在することが必要です。

 

(1)従って、有期労働契約が、1回は更新されていることが必要です。

例えば、有期事業の場合、5年を超える労働契約の期間を定めることも認められますが(第14条第1項柱書)、有期事業に係る5年を超える期間を定めた有期労働契約が締結されていても、「2以上の有期労働契約」にはあたらないため、本条の無期転換ルールの要件は満たしません。

 

その理由は、本条の効果は無期労働契約に転換するという使用者に対する影響が大きいものですので、使用者に一度は更新という当該労働者の適格性等を判断する機会が与えられている必要があるためと解されます。

 

平成24年改正法施行通達は、次の通りです。

 

「無期転換申込権は、『2以上の有期労働契約』の通算契約期間が5年を超える場合、すなわち更新が1回以上行われ、かつ、通算契約期間が5年を超えている場合に生じるものであること。

したがって、労働基準法第14条第1項の規定により一定の事業の完了に必要な期間を定めるものとして締結が認められている契約期間が5年を超える有期労働契約が締結されている場合、一度も更新がないときは、法第18条第1項の要件を満たすことにはならない」。

 

 

(2)また、「2以上の有期労働契約」ですから、複数の労働契約いずれも有期労働契約であることが必要であり、無期労働契約については適用の対象となりません(本条は、有期労働契約が反復更新されて長期間継続した場合の有期契約労働者の保護を図ろうとする趣旨だからです)。

例えば、期間の定めのない労働契約による正社員の勤務を定年退職した後に、新たに継続雇用(高年齢者雇用安定法第9条第1項第2号(労働一般のパスワード))されて有期労働契約を締結した場合(の当該最初の有期労働契約について)は、本条は適用されません。

 

 

(3)なお、「2以上の有期労働契約」が存在することが必要ですが、「契約期間の始期の到来前のもの」は除かれます第18条第1項前段かっこ書)。

例えば、5年の有期労働契約の期間満了により雇止めされた際に、将来の有期労働契約の再締結の約束があったとしても、その契約を締結してその始期が到来する前の段階では、当該労働者は無期転換申込権を行使できません。 

 

 

 

3 通算契約期間が5年(原則)を超えること

 

〇 空白期間の取扱い

 

通算契約期間の算定においては、労契法第18条第2項の「空白期間」の取扱いが問題となり、これに関して省令で「通算契約期間に関する基準」が定められており(【平成24年10月26日厚生労働省令第148号】。以下、この第148号省令を「基準省令」といいます。後に一応掲載しておきますが(こちら)、読まなくて結構です)、なかなか複雑です。

ただ、大まかには、前掲の図(こちら)の中で記載した通りであり、条文中の5年や6月等の数字は出題対象となりそうですが、その他は基準省令等を事細かに見なくても大丈夫だと思います。

 

○ 平成24年改正法施行通達の関連個所を掲載しておきます。太字部分は、注意して下さい。

 

〔引用開始。〕

 

サ 法第18条第2項は、同条第1項の通算契約期間の計算に当たり、有期労働契約が不存在の期間(以下「無契約期間」という。)が一定以上続いた場合には、当該通算契約期間の計算がリセットされること(いわゆる「クーリング」)について規定したものであること。

法及び「労働契約法第18条第1項の通算契約期間に関する基準を定める省令」(平成24年厚生労働省令第148号。以下「基準省令」という。)の規定により、同一の有期契約労働者と使用者との間で、1か月以上の無契約期間を置いて有期労働契約が再度締結された場合であって、当該無契約期間の長さ次の②のいずれかに該当するときは、当該無契約期間は法第18条第2項空白期間に該当し、当該空白期間前に終了している全ての有期労働契約の契約期間は、同条第1項通算契約期間算入されない(クーリングされる)こととなること。

 

なお、無契約期間の長さ1か月に満たない場合は、法第18条第2項空白期間に該当することはなく、クーリングされないこと(基準省令第2条。セ〔=本通達の「セ」ですが、引用省略〕参照)。

 

① 6か月以上である場合

 

② その直前の有期労働契約の契約期間(複数の有期労働契約が間を置かずに連続している場合又は基準省令第1条第1項で定める基準に該当し連続するものと認められる場合にあっては、それらの有期労働契約の契約期間の合計)が1年未満の場合にあっては、その期間に2分の1を乗じて得た期間(1か月未満の端数は1か月に切り上げて計算する。)以上である場合

また、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限を設けた上で、クーリング期間を設定し、クーリング期間経過後に再雇用することを約束して雇止めを行うことは、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という法第18条の趣旨に照らして望ましいものではないこと。

 

※ 以上のサ(当初は「ケ」でしたが、【令和5.10.12基発1012第2号】により改正されています)は、労契法第18条第2項が定める通算契約期間における空白期間の考え方について説明したものです。上記①及び②で登場する数字は、覚えておく必要があります(なお、上記の下線部分は、前掲の、【令和5.10.12基発1012第2号】により追加されました)

 

なお、基準省令及び通達は、「無契約期間」という概念を用い、労契法第18条第2項における「空白期間」と区別しています。

前掲の図(こちら)においても記載しましたように、「無契約期間」と「空白期間」は仕組みの上では区別する必要がありますが(「無契約期間」は、有期労働契約が不存在の期間のことであり、「空白期間」は、「無契約期間」のうち前後の有期労働契約の期間が連続しないという効果が生じる期間のことです)、大まかには同様のものと考えておいた方が混乱しないかもしれません。

以下、通達の続きです。

 

 

シ 基準省令第1条第1項は、法第18条第2項の「契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準」を規定したものであること。具体的には、次の(a)から(c)までのとおりであること。〔この(a)から(c)については、省略します。〕

 

なお、サ①〔=前掲〕のとおり、6か月以上の空白期間がある場合には当該空白期間前に終了している全ての有期労働契約の契約期間は通算契約期間に算入されない。このため、通算契約期間の算定に当たり、基準省令第1条第1項で定める基準に照らし連続すると認められるかどうかの確認が必要となるのは、労働者が無期転換の申込みをしようとする日から遡って直近の6か月以上の空白期間後の有期労働契約についてであること。

 

〔引用終了。〕  

 

 

次に、無期転換ルールの2番目の要件です。

 

 

 

(二)無期転換申込権の行使

◆当該労働者が、当該使用者に対して、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までの間に、当該満了日翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたこと

 

 

○趣旨

 

労働者の申込みにより無期労働契約への転換を認めることにより、労働者の意思を尊重したものです(即ち、必ずしも無期労働契約への転換を望まない労働者も存在しますので、労働者の申込みを要件としたものです)。

 

 

1 申込みの期限

 

現に締結している有期労働契約の契約期間の満了日までの間」に、申込みをすることが必要です。

この「現に締結している有期労働契約」とは、通算契約期間が5年を超える時点で既に締結している有期労働契約のことを意味します。

 

この点、平成24年改正法施行通達は、無期転換申込権を行使できる期間について、具体的に次のように解しています(ここは、一応、押さえておいて下さい)。

 

「無期転換申込権は、当該契約期間中通算契約期間が5年を超えることとなる有期労働契約契約期間の初日から当該有期労働契約の契約期間が満了する日までの間行使することができるものであること。

なお、無期転換申込権が生じている有期労働契約の契約期間が満了する日までの間無期転換申込権を行使しなかった場合であっても再度有期労働契約が更新された場合は、新たに無期転換申込権が発生し、有期契約労働者は、更新後の有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、無期転換申込権を行使することが可能であること。」

 

これを図示しますと、次の通りです。

 

 

 

2 無期転換申込権の事前放棄の禁止 

 

なお、平成24年改正法施行通達は、次のように、無期転換申込権事前の放棄認められないとしています。

 

「無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等有期契約労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、雇止めによって雇用を失うことを恐れる労働者に対して、使用者が無期転換申込権の放棄を強要する状況を招きかねず、法第18条の趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効と解されるものであること。」  

 

この点、私的自治の原則からは、自由な意思に基づくものと明白に認められるような無期転換申込権の放棄(無期転換申込権の発生前の事前の放棄とその発生後の事後の放棄があります)については有効であると解することも可能ともいえ、放棄(特に事後の放棄)を肯定する学説は少なくないです。

しかし、水町「詳解労働法」第2版402頁(初版392頁)では、要旨、次のように述べられており、説得力があります。

即ち、本問は、強行法規によって保障された権利の放棄の問題であり、代替可能な量的な価値である賃金請求権の放棄(後にこちらで見ますが、判例は、自由意思が明確であることを条件に賃金請求権の放棄を認めています)と、非代替的な契約関係の継続という価値(無期転換申込権)の放棄とを同列に論じることは妥当でなく、また、放棄(買上げ)ができないと解されている年次有給休暇の権利(後にこちらで見ます)よりも慎重な判断が必要であると考えられることから、無期転換申込権は、事前の放棄(無期転換申込権が発生する前に予め放棄すること)も事後の放棄(無期転換申込権の発生後の放棄)も認められない。

 

 

(三)適用関係

 

なお、(現在ではあまり問題とはなりませんが)第18条の無期転換ルールの規定は、平成25年4月1日以後の日を契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用され、平成25年4月1日前の日が初日である期間の定めのある労働契約の契約期間は、通算契約期間には算入されません(平成24年改正法附則第2項)。

従って、平成25年4月1日以後に締結された有期労働契約の通算契約期間が同締結日から5年(原則)を超えて更新された時点(平成30年4月以後)において、無期転換権が発生します。

 

 

以上で、無期転換ルールの要件について終わります。次に、効果について簡単に見ます。 

 

 

 

二 効果

(一)承諾みなし

◆労働者が所定の申込みをしたとき(適法に無期転換申込権を行使したとき)は、使用者は、当該申込み承諾したものみなされます労働契約法第18条第1項前段)= いわゆる「承諾みなし」。※1

 

現に締結している有期労働契約の期間満了日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約(無期労働契約)が、申込みの時点で成立します。

 

つまり、有期契約労働者が無期転換申込権を行使したとき(申込みが使用者に到達したとき)に、無期労働契約が成立すると解されています(後掲の平成24年改正法施行通達参考)。

そこで、無期転換申込権の行使後は、有期労働契約と無期労働契約の両者が併存することとなります。

こう解することにより、有期労働契約の期間が満了しても、そのまま無期労働契約に移行することになります。 

 

 

(二)従前と同一の労働条件の原則

◆成立した無期労働契約労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間除きます)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除きます)について別段の定めがある部分除きます)となります(労働契約法第18条第1項後段)。

 

そこで、無期転換ルールの下では、原則として、従前の有期労働契約における契約期間以外の労働条件を承継することになりますから、本制度は、本来の無期契約労働者(正規雇用労働者)との労働条件の格差を解消させることまでは目的としていないこととなります。期間の定めのない労働契約に転換することにより雇用の安定を図る趣旨です。

 

無期転換ルールにおいて無期契約労働者と同一の労働条件となるとできれば、有期契約労働者の保護に厚くなりますが、他方、厳格な規制は、5年経過前の雇止めや有期労働契約の更新回数の上限の設定等を誘発しかねないというジレンマがあります。

そこで、「別段の定め」として、「無期転換ルールの効果 = 従前と同一の労働条件となること」の例外も認めていることとなります。 

 

※ 以上、無期転換ルールの「効果」に関しては、労働者の申込みの時点で無期労働契約が成立しているものと取り扱われること、原則として、現に締結している有期労働契約と同一の労働条件となることを押さえておきます。

 

 

※1 ここで、労働契約の締結が強制される場合についてまとめておきます(こちら以下でも触れました)。

 

 

〇 労働契約の締結が強制される場合:

 

労働契約は、当事者の合意により成立し、又は変更されるのが原則ですが(労働契約法第1条第3条第1項第6条第9条(労基法のパスワード))、近時の改正により、この合意の原則の例外として、労働契約の締結が強制される規定が定められています。本件の無期転換ルールもその一つです。さしあたり、次の①~③の例があります。

 

①無期転換ルール(労働契約法第18条。本件です)➡ 承諾みなし(労働契約の承諾がみなされる)

 

②雇止め法理(労働契約法第19条)➡ 承諾みなし(次のページで見ます)

 

③労働契約申込みみなし制度(労働者派遣法第40条の6(労働一般のパスワード)労働者派遣法のこちら以下

 

➡ 申込みみなし(派遣先が違法に派遣労働者を受け入れた一定の場合に、当該違法行為を行った時点において、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込みをしたものとみなされる制度です)

 

 

 

以下、無期転換ルールの効果について平成24年改正法施行通達の関連個所を掲載しておきます(学習が進んだ段階でお読み下さい)。

 

〔引用開始。〕

 

カ 無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、無期転換申込権が発生する前の雇止めや契約期間中の解雇等を行うことは、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という法第18条の趣旨に照らして望ましいものではないこと。

 

キ 使用者は、労働者が無期転換の申込みをしたことその他無期転換の申込みに関する行為を行ったことを理由として、無期転換申込権の行使を抑制し、無期転換申込権を保障した趣旨を実質的に失わせることとなる解雇その他不利益な取扱いをすることは許されず、そうした解雇や不利益取扱いは、その内容に応じて労働契約法や民法の一般条項、判例法理等による司法的救済の対象となるものであること。

 

○ 無期労働契約への転換に当たり、「別段の定め」(ク参照)をすることにより、待遇の引上げと併せて、相応な職務の範囲や責任の程度などの変更を行うことは、一般的に司法的救済の対象となるものとは解されないものであること。

 

〔以上のカ及びキは、【令和5.10.12基発1012第2号】によって追加されました。次のクも従来のカから改められているなど、以下の本通達においても記号が改められたような箇所がありますが、試験対策上重要な部分のみを指摘しています。〕

 

ク 法第18条第1項の規定による無期労働契約への転換は期間の定めのみを変更するものであるが、同項の「別段の定め」をすることにより、期間の定め以外の労働条件を変更することは可能であること。この「別段の定め」は、労働協約、就業規則及び個々の労働契約(無期労働契約への転換に当たり従前の有期労働契約から労働条件を変更することについての有期契約労働者と使用者との間の個別の合意)をいうものであること。

 

労働協約により「別段の定め」をする場合においては、使用者と労働組合の合意が必要になること。

就業規則により「別段の定め」をする場合においては、第7条から第10条まで〔=のちにこちら以下で学習します〕に定められている就業規則法理が適用されるものであること。

個々の労働契約により「別段の定め」をする場合においては、使用者と労働者の合意が必要になるところ、労働条件の不利益変更に対する労働者の同意が認められるかについては、第3の3の(2)のイ〔=こちら以下〕に記載のとおり判断されること。

労働協約、就業規則又は個々の労働契約による「別段の定め」の成立が認められない場合には、無期転換後の労働条件は、契約期間を除き従前の有期労働契約の労働条件と同一の労働条件となること。

 

〔上記の「ク」の「労働協約により」以下の箇所は、【令和5.10.12基発1012第2号】によって追加されました。〕

 

無期労働契約への転換に当たり、職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後における労働条件を従前よりも低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましいものではないこと。

 

「別段の定め」の有無にかかわらず、無期転換後の労働条件を決定するにあたっては、法第3条第2項に規定される「均衡考慮の原則」が妥当すること。

なお、令和5年3月に改正された有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準(平成25年厚生労働省告示第357号)第5条〔=基準第5条こちら〕の規定により、使用者は労働者に対し、法第3条第2項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項の説明努めなければならないこと。

 

〔上記の「『別段の定め』の有無」以下の部分も、【令和5.10.12基発1012第2号】によって追加されました。〕

 

なお、就業規則により別段の定めをする場合においては、法第18条の規定が、法第7条から第10条までに定められている就業規則法理を変更することになるものではないこと。

 

ケ 有期契約労働者が無期転換申込権を行使することにより、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される無期労働契約その行使の時点で成立していることから、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日をもって当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする使用者は、無期転換申込権の行使により成立した無期労働契約を解約(解雇)する必要があり、当該解雇が法第16条に規定する「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には、権利濫用に該当するものとして無効となること。

また、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日前に使用者が当該有期契約労働者との契約関係を終了させようとする場合は、これに加えて、当該有期労働契約の契約期間中の解雇であり法第17条第1項の適用があること。

なお、解雇については当然に労働基準法第20条の解雇予告等の規定の適用があるものであること。

 

コ 有期労働契約の更新時に、所定労働日や始業終業時刻等の労働条件の定期的変更が行われていた場合に、無期労働契約への転換後も従前と同様に定期的にこれらの労働条件の変更を行うことができる旨の別段の定めをすることは差し支えないと解されること。

【過去問 労働一般 令和3年問3D(こちら)】

また、無期労働契約に転換した後における解雇については、個々の事情により判断されるものであるが、一般的には、勤務地や職務が限定されている等労働条件や雇用管理がいわゆる正社員と大きく異なるような労働者については、こうした限定等の事情がない、いわゆる正社員と当然には同列に扱われることにならないと解されること。

 

〔なお、非正規雇用労働者の優先的な雇用調整の可否については、のちにこちら以下で見ます。〕

 

〔引用終了。〕

 

 

○過去問:

 

・【労働一般 令和3年問3D】

設問:

有期労働契約の更新時に、所定労働日や始業終業時刻等の労働条件の定期的変更が行われていた場合に、労働契約法第18条第1項に基づき有期労働契約が無期労働契約に転換した後も、従前と同様に定期的にこれらの労働条件の変更を行うことができる旨の別段の定めをすることは差し支えないと解される。

 

解答:

正しいです(【平成24.8.10基発第0810号第2号】第5の4(2)ク。前掲のこちら)。

 

労契法第18条第1項のいわゆる「無期転換ルール」が適用された場合の効果は、原則として、従前の有期労働契約における契約期間以外の労働条件を承継しますが、無期労働契約への転換という点を除いては、労働条件について別段の定めをすることも可能です(同項後段)。

無期転換ルールは、無期労働契約への転換により雇用の安定を図ることが目的であるためです。

この場合、設問の通り、従前と同様に、所定労働日や始業終業時刻等の労働条件の定期的変更を行うことができる旨の「別段の定め」をすることは差し支えないとされています。

この「別段の定め」とは、「労働協約、就業規則及び個々の労働契約(無期労働契約への転換に当たり従前の有期労働契約から労働条件を変更することについての有期契約労働者と使用者との間の個別の合意)をいうものであること」とされています(【平成24.8.10基発第0810号第2号】第5の4(2)カ。前掲のこちら)。

 

 

 

三 特例

無期転換ルールについては、以下の特例があります。

 

(一)研究者等に関する特例

通算契約期間について、大学等及び研究開発法人の研究者教員等については、5年10年延長する特例が設けられています(「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」。平成31年1月17日施行の改正(【平成30.12.14法律第94号】)により、当初の「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(「研究開発能力強化法」)から題名が改められる等の見直しが行われています(以下、改正後の同法を「科技イノベ活性化法」と略します)の改正、及び「大学の教員等の任期に関する法律」(以下、「任期法」と略します)の改正によります。科技イノベ活性化法第15条の2任期法第7条。平成26年4月1日施行)。 

 

研究開発能力の強化及び教育研究の活性化等の趣旨です。 

 

以下、試験対策上は不要と思われますが、参考まで。

 

例えば、科学技術に関する研究者又は技術者(科学技術に関する試験若しくは研究又は科学技術に関する開発の補助を行う人材を含みます)であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結したものについて、労働契約法第18条第1項の規定の適用においては、同項の通算契約期間の「5年」は「10年」に延長されます(科技イノベ活性化法第15条の2第1項第1号)。

また、大学の教員等の任期に関する法律(任期法)に基づく任期の定めがある労働契約を締結した教員等の有期労働契約についても、同様です(任期法第7条

 

なお、大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結していた者については、当該大学に在学している期間は、通算契約期間に算入されません科技イノベ活性化法第15条の2第2項任期法第7条第2項)。

大学に在学中に、例えばTA(ティーチング・アシスタント)、RA(リサーチ・アシスタント)等として研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結していた者が対象です。 

 

 

無期転換ルールの研究者等に関する特例について、令和6年に最高裁判例(【羽衣国際大学事件=最判令和6.10.31】)が出されました。のちにこちらで見ます。

 

 

 

 

(二)専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法

また、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(以下、「有期特措法」ということがあります)が制定され(平成26年11月28日公布)、平成27年4月1日から施行されています。

具体的には、(A)一定の「専門的知識等を有する有期雇用労働者」、又は(B)「60歳以上の定年後引き続いて当該事業主(又は特殊関係事業主(グループ企業の事業主です))に雇用される有期雇用労働者」について、事業主が当該有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置についての計画を作成厚生労働大臣の認定を受けることにより、無期転換ルールの適用の修正が認められます。 

 

概要は、次の通りです。

 

(A)「専門的知識等を有する有期雇用労働者」については、労働契約法第18条第1項の通算契約期間の「5年」が、「特定有期業務〔=5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている専門的知識等を必要とする業務〕の開始の日から完了の日までの期間(当該期間が10年を超える場合にあっては、10年)」と読み替えられます(有期特措法第8条第1項(労働一般のパスワード))。

従って、一定の期間内に完了することが予定されている業務に係る「完了が予定された期間10年上限)」においては、無期転換申込権発生しません

つまり、「専門的知識等を有する有期雇用労働者」が当該プロジェクト(特定有期業務)に従事している期間(10年が上限)は、無期転換申込権が発生しないというものであり、通算契約期間の原則の5年が最長10年に延長されています。

この「専門的知識等を有する有期雇用労働者」は、年収1,075万円以上の者であること等が必要です。

 

この(A)は、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進を図る観点から、「専門的知識等を有する有期雇用労働者」について無期転換ルールの例外を認めたものです。

 

(B)「60歳以上の定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者」については、60歳以上の定年後引き続いて当該事業主(又は特殊関係事業主)に雇用されている期間は、労働契約法第18条第1項の5年の通算契約期間に算入されません(有期特措法第8条第2項)。

従って、60歳以上の定年後引き続いて雇用される期間においては、無期転換申込権発生しません

 

高年齢者雇用安定法により、65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施が義務づけられているところ(労働一般のこちら以下)、このうち継続雇用制度を採用して有期労働契約を締結した場合において、その継続雇用の期間中は無期転換申込権が発生しないようにしたものです(有期特措法によるこの(B)の新設は、平成24年の高年齢者雇用安定法の改正(平成25年4月1日施行)により、労使協定による継続雇用制度の対象者の限定の仕組みが廃止され、希望者全員を継続雇用する仕組みに改められたこと(経過措置あり)が契機となっています。なお、令和3年4月1日施行の高年齢者雇用安定法の改正により、高年齢者就業確保措置(65歳から70歳までの就業を確保する措置)が事業主の努力義務とされました。以上について、労働一般のこちら以下を参考です)。

 

 

次は、イメージ図です。

 

 

 

以上の「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」についての詳細は、労働一般のこちらで見ます(しかし、以上の程度の知識で足りそうです)。

なお、平成27年度の労働一般の択一式で1肢出題されています(【択一式 労働一般 平成27年問2E(労働一般のこちら)】)。 

 

 

 

 

 

※ 無期転換ルールの「研究者等に関する特例」(こちら)について、令和6年に最高裁判例が出されました。

労働契約法の問題であり、労働一般における出題に要注意です(選択式より択一式で出題しやすそうですが)。

 

令和7年度試験 最新判例

・【羽衣国際大学事件=最判令和6.10.31

 

(事案)

 

羽衣(はごろも)国際大学の人間生活学部人間生活学科生活福祉コースの専任講師として期間の定めのある労働契約(初回の契約期間は3年で、更新は1回に限る労働契約)を締結していた講師が、平成28年4月1日頃の最初の労働契約の更新の際に、契約期間は3年間とし再度の更新をしないものとして更新したのちに、平成30年11月4日に労働契約法第18条第1項に基づき無期転換の申込をして、無期労働契約に転換したと主張した事案。

対して、大学側は、当該講師の職(介護福祉士の養成課程に係る演習、介護実習、レクリエーション現場実習、論文指導、卒業研究といった授業等を担当していた)は、任期法第4条第1項第1号所定の「教育研究組織の職」に当たるため、当該労働契約については、5年の無期転換ルール(労契法第18条第1項)は適用されず、任期法第7条第1項により10年で無期労働契約に転換する旨を主張した。

 

 

なお、任期法第5条第1項は、「国立大学法人、公立大学法人又は学校法人は、当該国立大学法人、公立大学法人又は学校法人の設置する大学の教員について、前条第1項各号のいずれかに該当するときは、労働契約において任期を定めることができる。」とし、「前条(第4条)第1項各号」では、次のように定められています。

 

一 先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性に鑑み、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。

 

二 助教の職に就けるとき。

 

三 大学が定め又は参画する特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職に就けるとき。

 

そして、任期法第7条第1項では、「第5条第1項前条において準用する場合を含む。)の規定による任期の定めがある労働契約を締結した教員等の当該労働契約に係る労働契約法(平成19年法律第128号)第18条第1項〔=労働契約法第18条第1項〕の規定の適用については、同項中「5年」とあるのは、「10年」とする。」と定めます。

 

そこで、本件の講師については、任期法第5条第1項に基づく「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」に就くものとして、5年の無期転換ルールの適用が10年に緩和される特例が適用されないかが問題となったものです。

 

 

 

(原審と最高裁の結論)

 

原審は、上記事実関係の下において、要旨次のとおり判断し、本件労働契約は任期法第7条第1項所定の労働契約には当たらないとした上で、労働契約法第18条第1項の規定により5年で無期労働契約への転換を認めました。

即ち、当該大学において、本件講師職に就く者を定期的に入れ替えることが合理的といえる具体的事情は認められず、むしろ安定的に確保することが望ましいといえること、当該講師が担当していた授業等の内容に照らすと本件講師職には介護分野以外の広範囲の学問に関する知識や経験は必要とされず、担当する職務に研究の側面は乏しいといえることから、本件講師職が任期法第4条第1項第1号所定の「教育研究組織の職」に当たるということはできないとしたものです。

 

しかし、最高裁は、これに反対し、本件では任期法第7条第1項が適用されて10年で無期労働契約に転換するという結論をとり、次のように判示しました。 

 

 

(判示)

 

〔引用開始。〕

 

任期法は、4条1項各号のいずれかに該当するときは、各大学等において定める任期に関する規則に則り、任期を定めて教員を任用し又は雇用することができる旨を規定している(3条1項4条1項5条1項、2項)。

これは、大学等への多様な人材の受入れを図り、もって大学等における教育研究の進展に寄与するとの任期法の目的(1条)を踏まえ、教員の任用又は雇用について任期制を採用するか否かや、任期制を採用する場合の具体的な内容及び運用につき、各大学等の実情を踏まえた判断を尊重する趣旨によるものと解される。

そして、任期法4条1項1号を含む同法の上記各規定は、平成25年法律第99号により労働契約法18条1項の特例として任期法7条が設けられた際にも改められず、上記の趣旨が変更されたものとも解されない。そうすると、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職の意義について、殊更厳格に解するのは相当でないというべきである。

前記事実関係によれば、生活福祉コースにおいては、被上告人〔=講師〕を含む介護福祉士等の資格及びその実務経験を有する教員により、介護実習レクリエーション現場実習といった授業等が実施されており、実務経験をいかした実践的な教育研究が行われていたということができる。そして、上記の教育研究を行うに当たっては、教員の流動性を高めるなどして最新の実務経験や知見を不断に採り入れることが望ましい面があり、このような教育研究の特性に鑑みると、上記の授業等を担当する教員が就く本件講師職は、多様な知識又は経験を有する人材を確保することが特に求められる教育研究組織の職であるというべきである。

したがって、本件講師職は、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職に当たると解するのが相当である。

 

〔引用終了。〕

 

 

 

(解説)

 

判旨は、10年の無期転換ルールが適用される任期法第4条第1項第1号の「教育研究組織の職」の文言について、殊更制限的に解する理由はないこと(形式的理由。背景には、教員の任用・雇用について、各大学等の実情を踏まえた判断を尊重すべきとする考え方がひかえています)、また、本件講師の職について、介護の実務経験をいかした実践的な教育研究が行われていたものであり、当該教育研究を行うに当たっては、教員の流動性を高めるなどして最新の実務経験や知見を不断に採り入れることが望ましい面があり、多様な知識又は経験を有する人材を確保することが特に求められる教育研究組織の職であるとして(実質的理由)、研究職等について無期転換ルールの転換要件を5年から10年に緩和した趣旨が当てはまることを理由としたものと解されます。

 

ただ、任期法第4条第1項第1号は、「先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性に鑑み、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき」としており、とりわけ「特に求められる」として「教育研究組織の職」を限定していることに着目すれば、10年の無期転換となる特例が適用されるのは、一般的な大学講師等ではなく、高度な研究職に携わる者等に狭く解釈するのがむしろ自然であるとも考えられます。

今回の最高裁が、「一般的な大学講師等については特例は適用されないが、本件の介護に係る講師については、介護に関する新たな知見や実践的な技術は随時更新されるため教員の流動性を高める等の必要性が特段高いことから特例が適用される」という考え方であるなら妥当であるともいえそうですが、そのように考えているのかは定かでありません(教員の任用・雇用についての大学等の裁量を尊重する考え方を示していること等を踏まえますと、一般的な大学講師等についても特例の適用を認める立場である可能性があります)。

  

 

 

これにて、無期転換ルールについて終わります。 

以下、基準省令並びに研究開発能力強化法及び任期法の関係規定を掲載しておきますが、読まなくて結構です。次のページにお進み下さい。  

 

次のページでは、有期労働契約の終了に関する問題として、雇止めに関する基準等と雇止め法理について学習します。

 

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○ 基準省令=【平成24年10月26日厚生労働省令第148号】

 

・労働契約法第18条第1項の通算契約期間に関する基準を定める省令 

 

基準省令第1条(法第18条第2項の厚生労働省令で定める基準)

1.労働契約法(以下「法」という。)第18条第2項〔=労働契約法第18条第2項〕の厚生労働省令で定める基準は、次の各号に掲げる無契約期間(一の有期労働契約の契約期間が満了した日とその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間がある場合の当該期間をいう。以下この条において同じ。)に応じ、それぞれ当該各号に定めるものであることとする。

 

一 最初の雇入れの日後最初に到来する無契約期間(以下この項において「第1無契約期間」という。)

 

第1無契約期間の期間が、第1無契約期間の前にある有期労働契約の契約期間(2以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるとき6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

二 第1無契約期間の次に到来する無契約期間(以下この項において「第2無契約期間」という。)

 

次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に定めるものであること。

 

イ 第1無契約期間が前号に定めるものである場合

 

第2無契約期間の期間が、第2無契約期間の前にある全ての有期労働契約の契約期間を通算した期間に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

 ロ イに掲げる場合以外の場合

 

第2無契約期間の期間が、第1無契約期間と第2無契約期間の間にある有期労働契約の契約期間(2以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

三 第2無契約期間の次に到来する無契約期間(以下この項において「第3無契約期間」という。)

 

次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に定めるものであること。

 

イ 第2無契約期間が前号イに定めるものである場合

 

第3無契約期間の期間が、第3無契約期間の前にある全ての有期労働契約の契約期間を通算した期間に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

ロ 第2無契約期間が前号ロに定めるものである場合 

 

第3無契約期間の期間が、第1無契約期間と第3無契約期間の間にある全ての有期労働契約の契約期間を通算した期間に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

ハ イ又はロに掲げる場合以外の場合

 

第3無契約期間の期間が、第2無契約期間と第3無契約期間の間にある有期労働契約の契約期間(2以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に2分の1を乗じて得た期間(6月を超えるときは6月とし、1月に満たない端数を生じたときはこれを1月として計算した期間とする。)未満であること。

 

四 第3無契約期間後に到来する無契約期間

 

当該無契約期間が、前3号の例により計算して得た期間未満であること。

 

2.前項の規定により通算の対象となるそれぞれの有期労働契約の契約期間に1月に満たない端数がある場合は、これらの端数の合算については、30日をもって1月とする。

 

 

基準省令第2条(法第18条第2項の厚生労働省令で定める期間)

法第18条第2項の厚生労働省令で定める期間は、同項の当該一の有期労働契約の契約期間に2分の1を乗じて得た期間(1月に満たない端数を生じたときは、これを1月として計算した期間とする。)とする。

 

 

【基準省令附則】

基準省令附則

1.この省令は、労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)附則第1項ただし書に規定する規定の施行の日(平成25年4月1日)から施行する。

 

2.第1条第1項の規定は、この省令の施行の日以後の日契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用する。

 

 

 

○【参考:科技イノベ活性化法第15条の2及び任期法第7条】

 

※「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(「研究開発能力強化法」)は、平成31年1月17日施行の改正(【平成30.12.14法律第94号】)により、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に題名が改正されています。

また、次の科技イノベ活性化法第15条の2は、同改正により改められています。

〔即ち、同条第1項第3号中、従来、「次号」とあった下に、「及び第34条の6第1項第3号」が追加されました。〕

  

・【科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律】 

科技イノベ活性化法第15条の2(労働契約法の特例)

 

1.次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法(平成19年法律第128号)第18条第1項〔=労働契約法第18条第1項〕の規定の適用については、同項中「5年」とあるのは、「10年」とする。

 

一 科学技術に関する研究者又は技術者(科学技術に関する試験若しくは研究又は科学技術に関する開発の補助を行う人材を含む。第3号において同じ。)であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの

 

二 科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に従事する者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの

 

三 試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者が試験研究機関等、研究開発法人又は大学等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化(次号及び第34条の6第1項第3号において「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する科学技術に関する研究者又は技術者であって当該試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの

 

四 共同研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の共同研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に専ら従事する者であって当該共同研究開発等を行う試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの

 

2.前項第1号及び第2号に掲げる者(大学の学生である者を除く。)のうち大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約(当該有期労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項第1号及び第2号の労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

 

 

・【大学の教員等の任期に関する法律】

任期法第7条(労働契約法の特例)

1.第5条第1項前条において準用する場合を含む。)の規定による任期の定めがある労働契約を締結した教員等の当該労働契約に係る労働契約法(平成19年法律第128号)第18条第1項〔=労働契約法第18条第1項〕の規定の適用については、同項中「5年」とあるのは、「10年」とする。

 

2.前項の教員等のうち大学に在学している間に国立大学法人、公立大学法人若しくは学校法人又は大学共同利用機関法人等との間で期間の定めのある労働契約(当該労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項の労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

 

 

 

※ 次の平成24年改正法附則第2項は、無期転換ルールの第18条の施行における適用関係を規定しています(既述の本文の記載で足り、読む必要はありません)。

 

【平成24年改正法附則】(平成24年8月18日法律第56号)

平成24年改正法附則

1.(施行期日)

この法律は、公布の日〔=平成24年8月10日〕から施行する。ただし、第2条〔=第18条(無期転換ルール)~ 第20条の新設等を定めた規定〕並びに次項及び附則第3項の規定は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日〔=原則として、平成25年4月1日〕から施行する。

 

2.(経過措置)

第2条の規定による改正後の労働契約法(以下「新労働契約法」という。)第18条〔=無期転換ルール〕の規定は、前項ただし書に規定する規定の施行の日〔=平成25年4月1日〕以後の日を契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用し、同項ただし書に規定する規定の施行の日〔=平成25年4月1日〕前の日が初日である期間の定めのある労働契約の契約期間は、同条第1項に規定する通算契約期間には、算入しない。

 

3.(検討)

政府は、附則第1項ただし書に規定する規定の施行後8年を経過した場合において、新労働契約法第18条〔=無期転換ルール〕の規定について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 

 

次のページでは、有期労働契約の終了に関する問題として、雇止めに関する基準等と雇止め法理について学習します。