令和3年度 労災保険法

令和3年度の労災保険法の本試験問題のインデックスを掲載します。

 

リンク先に本試験問題及びその解説を掲載しています。

 

 

択一式

○【問1】=業務災害に関する事例問題:

 

【令和3年問1A】

(業務上左脛骨〔けいこつ〕骨折をした労働者が、直ちに入院して加療を受け退院した後に、医師の指示により通院加療を続けていたところ、通院の帰途雪の中ギプスなしで歩行中に道路上で転倒して、ゆ合不完全の状態であった左脛骨を同一の骨折線で再骨折した場合、業務災害と認められる。)

 

【令和3年問1B】

(業務上右大腿骨を骨折し入院手術を受け退院して通院加療を続けていた労働者が、会社施設の浴場に行く途中、弟の社宅に立ち寄り雑談した後に、浴場へ向かうため同社宅の玄関から上間に降りようとして転倒し、前回の骨折部のやや上部を骨折したが、既に手術後は右下肢の短縮と右膝関節の硬直を残していたため、通常の者より転倒しやすく、また骨が幾分細くなっていたため骨折しやすい状態だった場合、業務災害と認められる。)

 

【令和3年問1C】

(業務上右腓骨を不完全骨折し、病院で手当を受け、帰宅して用便のため松葉杖を使用して土間を隔てた便所へ行き、用便後便所から土間へ降りる際に松葉杖が滑って転倒し当初の骨折を完全骨折した場合、業務災害と認められる。)

 

【令和3年問1D】

(業務上脊髄を損傷し入院加療中の労働者が、医師の指示に基づき療養の一環としての手動式自転車に乗車する機能回復訓練中に、第三者の運転する軽四輪貨物自動車に自転車を引っかけられ転倒し負傷した場合、業務災害と認められる。)

 

【令和3年問1E】

(業務上右大腿骨を骨折し入院治療を続けて骨折部のゆ合がほぼ完全となりマッサージのみを受けていた労働者が、見舞いに来た友人のモーターバイクに乗って運転中に車体と共に転倒し、右大腿部を再度骨折した場合、業務災害と認められない。)

 

 

○【問2】=通勤災害に関する事例問題:

 

【令和3年問2A】

(3歳の子を養育している1人親世帯の労働者がその子をタクシーで託児所に預けに行く途中で追突事故に遭い、負傷した。その労働者は、通常、交通法規を遵守しつつ白転車で託児所に子を預けてから職場に行っていたが、この日は、大雨であったためタクシーに乗っていた。タクシーの経路は、自転車のときとは違っていたが、車であれば、よく利用される経路であった。この場合は、通勤災害と認められる。)

 

【令和3年問2B】

(腰痛の治療のため、帰宅途中に病院に寄った労働者が転倒して負傷した。病院はいつも利用している駅から自宅とは反対方向にあり、負傷した場所はその病院から駅に向かう途中の路上であった。この場合は、通勤災害と認められない。)

 

【令和3年問2C】

(従業員が業務終了後に通勤経路の駅に近い自動車教習所で教習を受けて駅から自宅に帰る途中で交通事故に遭い負傷した。この従業員の勤める会社では、従業員が免許取得のため自動車教習所に通う場合、奨励金として費用の一部を負担している。この場合は、通勤災害と認められる。)

 

【令和3年問2D】

(配偶者と小学生の子と別居して単身赴任し、月に1~ 2回、家族の住む自宅に帰っている労働者が、1週間の夏季体暇の1日目は交通機関の状況等は特段の問題はなかったが単身赴任先で洗濯や買い物等の家事をし、2日目に家族の住む自宅へ帰る途中に交通事故に遭い負傷した。この場合は、通勤災害と認められない。)

 

【令和3年問2E】

(自家用車で通勤していた労働者Xが通勤途中、他の自動車との接触事故で負傷したが、労働者Xは所持している自動車運転免許の更新を失念していたため、当該免許が当該事故の1週間前に失効しており、当該事故の際、労働者Xは、無免許運転の状態であった。この場合は、諸般の事情を勘案して給付の支給制限が行われることはあるものの、通勤災害と認められる可能性はある。)

 

 

○【問3】=特別加入に関する問題:

 

【令和3年問3A】

(特別加入者である中小事業主が高齢のため実際には就業せず、専ら同業者の事業主団体の会合等にのみ出席するようになった場合であっても、中小企業の特別加人は事業主自身が加入する前提であることから、事業主と当該事業に従事する他の者を包括して加人しなければならず、就業実態のない事業主として特別加入者としないことは認められない。) 

 

【令和3年問3B】

(労働者を使用しないで行うことを常態とする特別加入者である個人貨物運送業者については、その住居とその就業の場所との間の往復の実態を明確に区別できることにかんがみ、通勤災害に関する労災保険の適用を行うものとされている。) 

 

 ・【令和3年問3C】

(特別加入している中小事業主が行う事業に従事する者(労働者である者を除く。)が業務災害と認定された。その業務災害の原因である事故が事業主の故意又は重大な過失により生じさせたものである場合は、政府は、その業務災害と認定された者に対して保険給付を全額支給し、厚生労働省令で定めるところにより、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を事業主から徴収することができる。) 

 

【令和3年問3D】

(日本国内で行われている有期事業でない事業を行う事業主から、海外(業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に関する保護制度の状況その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める国の地域を除く。)の現地法人で行われている事業に従事するため派遣された労働者について、急な赴任のため特別加入の手続きがなされていなかった。この場合、海外派遣されてからでも派遣元の事業主(日本国内で実施している事業について労災保険の保険関係が既に成立している事業主)が申請すれば、政府の承認があった場合に特別加入することができる。) 

 

【令和3年問3E】

(平成29年から介護作業従事者として特別加入している者が、訪間先の家庭で介護者以外の家族の家事支援作業をしているときに火傷し負傷した場合は、業務災害と認められることはない。) 

 

 

○【問4】=心理的負荷による精神障害の認定基準に関する問題:【直近の改正事項

 

【令和3年問4A】

(心理的負荷による精神障害の認定基準(令和2年5月29日付け基発0529第1号)の業務による心理的負荷評価表の「平均的な心理的負荷の強度」の「具体的出来事」の1つである「上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の、「心理的負荷の強度を『弱」『中』『強』と判断する具体例」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない精神的攻撃が行われたが、その行為が反復・継続していない場合、他に会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった等の事情がなければ、心理的負荷の程度は「中」になるとされている。)

 

 ・【令和3年問4B】

(人格や人間性を否定するような、業務の目的を逸脱した精神的攻撃が行われたが、その行為が反復・継続していない場合、他に会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった等の事情がなければ、心理的負荷の程度は「中」になるとされている。)

 

 ・【令和3年問4C】

(他の労働者の面前における威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃が行われたが、その行為が反復・継続していない場合、他に会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった等の事情がなければ、心理的負荷の程度は「中」になるとされている。)

 

 ・【令和3年問4D】

(治療等を要さない程度の暴行による身体的攻撃が行われた場合、その行為が反復・継続していなくても、また、他に会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった等の事情がなくても、心理的負荷の程度は「強」になるとされている。)

 

 ・【令和3年問4E】

(「上司等」には、同僚又は部下であっても業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その者の協力が得られなければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な場合、同僚又は部下からの集団による行為でこれに抵抗又は拒絶することが困難である場合も含む。)

 

 

○【問5】=加重の場合の障害補償給付の額に関する事例問題:

 

【令和3年問5】

(障害補償給付における一時金から年金への加重のケースの額の事例問題)

 

 

○【問6】=遺族補償一時金の遺族の順位に関する問題:

 

遺族補償一時金を受けるべき遺族の順位に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

【令和3年問6A】

(労働者の死亡当時その収人によって生計を維持していた父母は、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していなかった配偶者より先順位となる。) 

 

 ・【令和3年問6B】

(労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた祖父母は、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していなかった父母より先順位となる。) 

 

【令和3年問6C】

(労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた孫は、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していなかった子より先順位となる。) 

 

【令和3年問6D】

(労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた孫は、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していなかった子より先順位となる。) 

 

【令和3年問6E】

(労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた兄弟姉妹は、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していなかった父母より後順位となる。) 

 

 

○【問7】=上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準に関する問題:

 

【令和3年問7】

(上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準(平成9年2月3日付け基発第65号)の認定要件の運用基準又は認定に当たっての留意事項に関する肢のうち、誤っているもの)

  

 

 

選択式

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 【直近の改正事項

1 労災保険法は、令和2年に改正され、複数事業労働者(事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者。以下同じ。)の2以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、傷害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)についても保険給付を行う等の制度改正が同年9月1日から施行された。

複数事業労働者については、労災保険法第7条第1項第2号により、これに類する者も含むとされており、その範囲については、労災保険法施行規則第5条において、  と規定されている。

複数業務要因災害による疾病の範囲は、労災保険法施行規則第18条の3の6により、労働基準法施行規則別表第1の2第8号及び第9号に掲げる疾病その他2以上の事業の業務を要因とすることの明らかな疾病と規定されている。

複数業務要因災害に係る事務の所轄は、労災保険法第7条第1項第2号に規定する複数事業労働者の2以上の事業のうち、  の主たる事務所を管轄する都道府県労働局又は労働基準監督署となる。

 

 

2 年金たる保険給付は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、  の間は、文給されない。 

 

 

3 遺族補償年金を受けることができる遺族は、労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、労働者の死亡の当時その収人によって生計を維持していたものとする。ただし、妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。以下同じ。)以外の者にあっては、労働者の死亡の当時次の各号に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。

 

一  夫(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。以下同じ。)、父母又は祖父母については、  歳以上であること。

 

二 子又は孫については、  歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること。

 

三 兄弟姉妹については、  歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること又は  歳以上であること。

 

四 前3号の要件に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、厚生労働省令で定める障害の状態にあること。

 

選択肢:

 

①15 ②16 ③18 ④20 ⑤55 ⑥60 ⑦65 ⑧70

⑨その事由が生じた月からその事由が消滅した月まで

⑩その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月まで

⑪その事由が生じた日からその事由が消滅した日まで

⑫その事由が生じた日の翌日からその事由が消滅した日まで

⑬その収入が当該複数事業労働者の生計を維持する程度の最も高いもの

⑭当該複数事業労働者が最も長い期間勤務しているもの

⑮当該複数事業労働者の住所に最も近いもの

⑯当該複数事業労働者の労働時間が最も長いもの

⑰負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事山が生じた時点以前1か月の間継続して事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者

⑱負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点以前3か月の間継続して事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者

⑲負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点以前6か月の間継続して事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者

⑳負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点において事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者

 

 

 

選択式解答

A=⑳「負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点において事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者」(第7条第1項第2号施行規則第5条)。

 

B=⑬「その収入が当該複数事業労働者の生計を維持する程度の最も高いもの」(施行規則第1条第2項第2号第3項第2号

 

C=⑩「その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月まで」(第9条第2項

 

D=⑥「60」(第16条の2第1項第1号第3号

 

E=③「18」(第16条の2第1項第2号第3号

 

 

 

選択式の論点とリンク先

今回の選択式は、問1(空欄AとB)が、直近の改正事項である複数事業労働者及び複数業務要因災害に関する出題でした。

直近の改正事項については、通常、十分学習していますが、やや細かい個所からの出題であったため、空欄AとBのいずれかを落としたような方もおられたかもしれません。

 

問2(空欄C)は、支給停止期間に関する出題であり、正答が必要です。

 

問3(空欄D及びE)は、遺族補償年金の遺族に関する出題ですが、Eは易しいです。

Dは、「60」歳なのか「55」歳なのか、やや悩むところでしょうが、遺族の要件に関する第16条の2第1項をチェックしていたことがあれば、設問が当該条文どおりであることが判明するため、「60」歳が正解となります。

 

以下、若干の補足と本文のリンク先を掲載します。

 

 

1 問1(空欄のA及びB)

 

(1)空欄のA=複数事業労働者

 

複数事業労働者とは、事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者のことです(第1条)。

ただし、複数業務要因災害については、複数事業労働者には、これに類する者として厚生労働省令〔=施行規則第5条〕で定めるものも含まれます(第7条第1項第2号)。

この複数事業労働者に類する者として厚生労働省令で定めるものとは、「負傷、疾病、障害又は死亡の原因又は要因となる事由が生じた時点において事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者」(=空欄のA)です(施行規則第5条)。

例えば、脳・心臓疾患や精神障害等の疾病等であって、原因又は要因と発症の時期が一致しない場合において、発症時にはいずれかの就業先を退職していることも考えられることから、このような場合は、傷病等の原因又は要因となる事由が生じた時点において2以上の事業に同時に使用されていれば、複数業務要因災害に関する保険給付の支給対象となるということです。

本文は、こちらです。

 

 

(2)空欄のB=複数業務要因災害に係る事務の所轄

 

空欄のBの複数業務要因災害に係る事務の所轄については、生計を維持する程度の最も高い事業(生計維持事業)の主たる事務所を管轄する都道府県労働局又は労働基準監督署とされます。

本文は、こちら以下の②(施行規則第1条第2項第2号)及びこちら以下の※3の②(施行規則第3項第2号)です。

 

 

2 問2(空欄のC)

 

空欄のCは、易しいです。

年金たる保険給付は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、「その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月まで」の間は、支給されません(第9条第2項)。

本文は、こちら以下です。 

 

 

3 問3(空欄のD及びE)

 

前述のように、空欄のDについては、設問文が第16条の2第1項の通りなのですから、この本則に従って「60」歳とすることになります(本文は、こちら)。

 

この点、遺族(補償)等年金の支給を受けられる遺族のうち、「父母祖父母及び兄弟姉妹」(即ち、「オフソケ」)については、労災保険法本則上第16条の2第1項第20条の6第3項第22条の4第3項)は、労働者の死亡当時、「60歳以上であること」が受給資格者の要件(年齢要件)となっています(兄弟姉妹は、18歳の年度末までの者も対象となります)。

ただし、これらの者については、当分の間、労働者の死亡当時、55歳以上60歳未満の者であっても受給資格者とする特例が認められています(所定の障害状態に該当しない場合です。昭和40年改正法附則第43条第1項令和2年改正法附則第7条第2項昭和48年改正法附則第5条第1項)。

これらの者を、「若年支給停止者」といいます。

 

本問の空欄Dは、この若年支給停止者の「55」歳が引っかかる出題でした。

 

この空欄Dについては、仮に「55」歳を入れたとしますと、「55歳以上」の「夫、父母又は祖父母」については当然に受給資格者に該当することになってしまいます(なお、第16条の2第1項第4号により、一定の障害状態にあれば、当該年齢要件を満たさない「夫、父母又は祖父母」等についても受給資格者に該当します)。

しかし、前記の昭和40年改正法附則第43条第1項(等)により、「55歳以上60歳未満」の「夫、父母、祖父母又は兄弟姉妹」については、一定の障害状態に該当しないこと」を要件として、当分の間、受給資格者とされます(「若年支給停止者」。順位は、第16条の2第1項の規定する遺族より劣位します)。

つまり、この昭和40年改正法附則第43条第1項によりますと、すべての「55歳以上」の「夫、父母又は祖父母」が当然に受給資格者に該当するのではなく、「55歳以上60歳未満」の「夫、父母又は祖父母」については「一定の障害状態に該当しない場合のみ受給資格者に該当することになります。

よって、本問の場合、空欄Dを「55」歳としますと、これらの太字部分の要件が示されていないことになりますから、正しくないことになります。

以上については、こちらの表をご覧頂くと明確になります。 

 

 

空欄のEについては、正解しなければなりません。 

 

 

総評

労災保険法は、全体としてかなり厳しい内容でした。

 

まず、選択式については、なんとか基準点はクリアーできる内容ではあります。

前記の通り、空欄のA及びBが直近の改正事項からのやや細かい出題であり、確実に2つを正解できるかは微妙だったかもしれません。

また、空欄のDについては、前記の通り、問題がありますが、空欄のC及びEは正解することができるため、トータルとしては3点を確保することは可能な出題でした。

 

他方、択一式は、厳しかったです。

 

問1の業務災害の認定の事例問題は、平成29年度以来の出題となりました。

「療養中の災害」のパターンであり、業務起因性(相当因果関係)の有無が論点となるのですが、関連性の程度といった事例問題を処理しやすい視点を事前に学習しておく必要があり、慣れていませんと「勘で解く」ことになりかねない設問でした。

 

問2の通勤災害の認定についても、簡単ではありません。サイトを十分読み込んで頂く必要がありました。

 

問3の特別加入の問題は、やや取り組みやすかったかと思います。多少難しい肢もありますが、正解肢を見つけること自体は可能でした。

 

問4は、直近の改正事項からです。ある程度は事前に準備をされていた個所かと思いますが、なにぶん初出の内容であり、かつ、細部が問われているため、厳しい出題でした。

 

問5は、基本的な知識で解答できますが、事例形式であり、時間のない中で計算しなければならず、負担があったと思います。

 

問6は、ゴロ合わせ等により遺族の要件をきちんと記憶していればサービス問題でした。正答できなかった場合は、知識の記憶という点について対応策を考えることが必要です。

 

問7は、業務上の疾病に関する認定基準からの出題であり、当サイトでも未掲載の内容であるため、非常に厳しかったです。

 

以上、択一式は、7問のうち半分程度正答できるかどうかという厳しい内容となっています。

今回は、業務災害や通勤災害の認定に関する出題のウエイトが大きく、また、保険給付については、選択式も含め、遺族給付が狙われました。

さらに、選択式・択一式ともに、直近の改正事項からも出題されています。

 

今回、業務上の疾病に関する出題が多かったですが、令和3年9月に従来の過重負荷による脳・心臓疾患に関する認定基準が約20年ぶりに改められ、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」に代わりました。

そこで、次回は、この新しい脳・心臓疾患の認定基準についても要注意です。

 

労災保険法の出題内容は、日頃からの地道な学習の継続がないと対応しにくいものとなっていますが、当サイトにおいて、条文・事例・認定基準・記憶方法等について十分解説している事項からかなり出題されていることも事実です。

その意味で、当サイトは、現在の出題傾向に適しているとはいえます。

 

 

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