【令和5年度版】
第2款 体系
このページでは、介護保険法の体系を見ます。
体系のアウトラインについては、次の通り、一般の社会保険法と同様です。
〇 保険法の体系:
〔Ⅰ〕主体 ➡ 保険者、被保険者等
〔Ⅱ〕客体 ➡ 保険事故等
〔Ⅲ〕事業 ➡ 保険給付とその他の事業
〔Ⅳ〕費用(財政) ➡ 公費負担と保険料等
〔Ⅴ〕その他 ➡ 不服申立て制度、罰則など |
順に概要を見ます。
〔Ⅰ〕主体
〔1〕保険者
介護保険の保険者は、市町村(特別区を含みます。以下同じです)です(第3条第1項)。
国民に最も身近な行政単位である市町村を保険者としています。
これによりきめ細やかな対応を可能とさせたものですが、介護保険法の制定前における市町村による老人福祉制度や老人保健制度の実施の実績等も考慮されています。
なお、介護保険法の制定にあたっては、保険者を市町村とするか、都道府県ないし国とするか議論があり、最終的には市町村が保険者とされました。
他面、介護保険制度においては、市町村の事務処理負担の軽減や財政負担の軽減の要請に配慮された仕組みが設けられています(以下の内容については、詳しくはおいおい見ますので、さしあたりスルーで結構です)。
即ち、第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)の介護保険の保険料は、医療保険者(医療保険各法の保険者)が医療保険の保険料に併せて徴収すること(第129条第4項及び健康保険法等の各規定参考。こちら以下)、第1号被保険者(65歳以上の者)の介護保険の保険料は、年金保険者が老齢等年金給付から天引きすること(第131条。こちら以下)などは、市町村の事務処理負担を軽減する一例です。
また、国から市町村に交付する「調整交付金」(第122条。こちら)や都道府県に設置する「財政安定化基金」(第147条。こちら)、市町村相互間における財政の調整等の仕組みである「市町村相互財政安定化事業」(第148条。こちら)などは、市町村の財政の安定のための仕組みの例です。
〔2〕被保険者
介護保険の被保険者として、次の2種類があります(第9条)。
➀第1号被保険者 = 市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(第9条第1号)
②第2号被保険者 = 市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者(第9条第2号)
②の「医療保険加入者」とは、医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法及び私立学校教職員共済法のことです(第7条第6項))の規定による被保険者、組合員等及びその被扶養者等のことです(第7条第8項参考)。
第2号被保険者を医療保険加入者に限定している理由は、医療保険者(医療保険各法の保険者)が第2号被保険者の保険料の賦課・徴収を行う仕組みとしているためです(先に少し触れましたが、市町村の負担を軽減するものです)。
なお、40歳以上の者から被保険者としたのは、介護保険事業の財政の安定の確保が必要なところ、老化に伴う介護のニーズ(脳血管障害や初老期認知症等による介護の必要性)は、高齢期のみならず40歳以上の中高齢期においても生じうること等が考慮されたものです。
(その他に、40歳以上になると、親が要介護状態となる可能性も少なくなく、家族という立場から介護保険制度による利益を受けられることも挙げられます。
ただし、この点は、親が介護保険の保険給付を受けられるのは、当該親が被保険者となっていたからであり、40歳以上の子を被保険者とする根拠とはならないともいわれます。)
いずれにしましても、国民年金のように、20歳から被保険者とするような構成は採られませんでした(ただし、将来的には、財政的問題から被保険者の年齢要件が引き下げられる可能性はありえます)。
以上の被保険者の要件については、第1号被保険者の年齢要件が65歳以上、70歳以上、75歳以上のいずれであったのかを混乱しないよう、ゴロでいきます(「第1号被保険者」(65歳以上の者)と「後期高齢者医療の被保険者」(原則として75歳以上の者。こちら以下)を混同しないように注意です)。
第2号被保険者の要件の方を覚えておきます。
※【ゴロ合わせ】
・「介護ツーのは、死を知れば、むごいか」
(介護に従事していると、死と直面することもあるため、落ち込もことがあります。)
→「介護(=「介護」保険)、ツー(=第「2」号被保険者の要件)のは、死(=「市」町村の区域内に居住)を、知れ(ば)、むご(=「40」歳以上「65」歳未満)、い、か(=「医」療保険「加」入者)」
以上の2種類の被保険者の相違は、保険給付の受給資格(受給要件)や保険料の算定・徴収方法(納付方法)などに影響します。以下の通りです。
1 受給資格(受給要件)
まず、介護保険の保険給付の支給を受けるための受給資格については、第1号被保険者(65歳以上の者)の場合は、要介護状態(大まかには、日常生活について常時介護を要する状態。定義は後述)又は要支援状態(大まかには、日常生活について支援を要する状態。要介護状態となるおそれがある状態です)にあれば、要介護者又は要支援者(定義は後述)に該当し、要介護認定又は要支援認定を受けることにより、保険給付の支給を受けることができます(第19条、第7条第3項第1号、第4項第1号)。
要介護認定(又は要支援認定)とは、要介護者(要支援者)に該当すること及びその該当する要介護状態区分(要支援状態区分)についての市町村の認定のことです(第19条)。
要介護認定を受けた被保険者(要介護被保険者といいます(第41条第1項本文))に対しては介護給付(被保険者の要介護状態に関する保険給付)が、要支援認定を受けた被保険者に対しては予防給付(被保険者の要支援状態に関する保険給付)が支給されます(そのほかの保険給付として、市町村が条例で定めることにより行える市町村特別給付(要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資する保険給付として条例で定めるもの)があります)。
他方、第2号被保険者(40歳以上65歳未満の者)については、要介護状態又は要支援状態にあるだけでなく、その要介護状態又は要支援状態が加齢に起因する一定の疾病(「特定疾病」)によって生じたものである場合に限り、要介護者又は要支援者に該当し、要介護認定又は要支援認定を受けることにより、保険給付の支給を受けることができます(第19条、第7条第3項第2号、第4項第2号)。
つまり、第2号被保険者が保険給付の支給を受けるためには、老化に起因する疾病(特定疾病)により要介護状態又は要支援状態となることが必要です(特定疾病以外により要介護(要支援)状態となった場合は、障害者福祉施策により保護されます)。
なお、前記の通り、要介護認定を受けた被保険者を「要介護被保険者」といい(第41条第1項本文)、要介護被保険者のうち、居宅において介護を受けるものを「居宅要介護被保険者」といいます(第41条第1項本文)。
他方、要支援認定を受けた被保険者のうち居宅において支援を受ける者を「居宅要支援被保険者」といいます(第53条第1項本文。要支援認定を受けた被保険者に対する予防給付には「施設」サービスを含まない関係から、「居宅」要支援被保険者と表現しています)。
これらの用語は、保険給付の支給要件を定めた規定で登場してきます。
要介護認定・要支援認定と要介護者・要支援者の関係は、次の通りです。
(ⅰ)要介護者
要介護認定を受けるためには、要介護者に該当することが必要であり(第19条第1項)、要介護者とは、次の(a)又は(b)のいずれかに該当する者をいいます(第7条第3項)。
(a)要介護状態にある65歳以上の者
(b)要介護状態にある40歳以上65歳未満の者であって、その要介護状態の原因である身体上又は精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(「特定疾病」)によって生じたものであるもの
「要介護状態」とは、「身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間〔=原則として6月間〕にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(「要介護状態区分」といいます〔=要介護1~要介護5(最重度)〕)のいずれかに該当するもの(要支援状態に該当するものを除きます)」をいいます(第7条第1項)。
大まかには、要介護状態とは、寝たきりや認知症等によって、常時介護を要する状態のことです。
特定疾病とは、一時的ではなく、継続して介護が必要となる疾病のうち、本来、高齢者に発生する疾病が65歳未満で発生する場合が想定されています。
具体的には、施行令第2条において、末期がん、初老期における認知症、パーキンソン病、脳血管疾患など、16の疾病が規定されています。
(ⅱ)要支援者
要支援認定を受けるためには、要支援者に該当することが必要であり(第19条第2項)、要支援者とは、次の(a)又は(b)のいずれかに該当する者をいいます(第7条第4項)。
(a)要支援状態にある65歳以上の者
(b)要支援状態にある40歳以上65歳未満の者であって、その要支援状態の原因である身体上又は精神上の障害が特定疾病によって生じたものであるもの
「要支援状態」とは、「身体上若しくは精神上の障害があるために入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について厚生労働省令で定める期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために厚生労働省令で定める期間〔=原則として6月間〕にわたり継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態であって、支援の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(「要支援状態区分」といいます〔要支援1(最軽度)又は要支援2〕)のいずれかに該当するもの」をいいます(第7条第2項)。
大まかには、要支援状態とは、身支度や家事等の日常生活を営むために支援を必要とする状態のことです。
以上の被保険者と要介護(要支援)状態・要介護者(要支援者)との関係は、文字にしますと分かりづらいため、次の図によりイメージして下さい。
ポイントは、第2号被保険者(市町村に居住する「40歳以上65歳未満」の医療保険加入者)については、要介護状態・要支援状態の原因である障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(特定疾病)によって生じたものである場合、即ち、特定疾病により要介護状態・要支援状態となった場合に、要介護者・要支援者に該当し、要介護認定・要支援認定を受けられるということです。
例えば、交通事故によって要介護状態となった場合に、65歳以上の者(第1号被保険者)であれば、介護保険の保険給付の支給を受けることができますが、40歳以上65歳未満の者(第2号被保険者)であれば、保険給付の支給を受けることができないという具体例をイメージしておくとよいです。
また、被保険者の区分は、次のように、保険料の関係(保険料の賦課・徴収)にも影響します。
2 保険料の関係
まず、第1号被保険者の介護保険の保険料については、介護保険の保険者である市町村が徴収します(第129条第1項。介護保険の保険料の徴収方法として、普通徴収と公的年金から天引きする特別徴収があります)。
保険料については、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより算定された保険料率により算定された保険料額によって賦課されます(第129条第2項。所得段階別の定額保険料です。3年ごとに条例で改定します(同条第3項))。
対して、第2号被保険者の介護保険の保険料については、市町村は徴収せず(第129条第4項)、その者の所属する医療保険の保険者(医療保険者)が、医療保険の保険料と併せて介護保険の保険料も徴収します。そして、この介護保険の保険料に係る分が介護給付金として介護保険制度に拠出されます。
保険料額は、例えば、健康保険の被保険者の場合は、「標準報酬 × 介護保険料率」(報酬比例)であり、介護保険料率は、毎年度、医療保険者によって改定されます(健保法第160条第16項(健保法のパスワード)参考。健保法のこちら以下)。
以上、被保険者についての概要でした。
〔3〕事業者、施設
〔Ⅱ〕客体
客体については、保険事故のほか、保険事故に関連する問題として、要介護認定・要支援認定の問題を見ます(出題が多く、のちに本編のこちら以下で詳しく見ます)。
先に触れましたが、介護保険の保険給付の支給を受けるためには、要介護者又は要支援者に該当し、要介護認定又は要支援認定を受けることが必要です(第19条)。
具体的には、被保険者の申請により、市町村に設置される介護認定審査会において、要介護認定(要支援認定)の審査及び判定が行われ、これに基づき市町村が要介護認定(要支援認定)を行います(第27条、第32条)。
なお、要介護認定(要支援認定)を行うのは、あくまで市町村であり、介護認定審査会(要介護認定等に係る事項の審査及び判定を行う機関です)ではないことには注意です。
要介護認定(要支援認定)を受けた場合は、原則として、介護支援専門員(ケアマネージャー。第7条第5項)に介護(予防)サービス計画(ケアプラン)を作成させて、この計画に基づき保険給付を受けます(第46条、第58条等)。
このような保険給付を受けるための事前の手続の仕組みは、医療保険制度などとは異なります。
かかる事前の手続により、保護が必要な対象者を公平かつ迅速に決定し、被保険者の関与の下、適切な介護サービスを提供することを目的としたものです。
また、介護は、医療ほどには緊急性・切迫性が高くない場合が多いことから、このような事前手続の採用も可能となります。
要介護(要支援)認定を中心とした事前の手続のイメージは、次の図の通りです。
〔Ⅲ〕事業
介護保険の事業については、大別して、保険給付とその他の事業に整理できます。
事業の体系は、次の図の通りです。
保険給付から概要を見ます。
〔1〕保険給付
保険給付は、介護給付、予防給付及び市町村特別給付の3種類があります(第18条)。
一 介護給付及び予防給付
(一)介護給付及び予防給付の種類
「介護給付」は、被保険者の要介護状態に関する保険給付であり(第18条第1号)、「予防給付」は、要支援状態に関する保険給付です(同条第2号)。
また、「市町村特別給付」は、要介護状態等(被保険者の要介護状態又は要支援状態をいいます(第2条第1項))の軽減又は悪化の防止に資する保険給付として条例で定めるものです(第18条第3号)。
保険給付のサービスとしては、大別して、在宅サービス(居宅介護サービス、介護予防サービス等)、地域密着型サービス及び施設サービスの3種類があります。
施設サービスとしては、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設及び介護医療院(平成30年4月1日から実施)による施設サービスがあります。
なお、予防給付には、施設サービスは含まれていないことに注意です。従って、要支援者は、施設サービスを利用することはできません。
介護給付と予防給付の種類の概要は、次の表の通りです(より詳細な表は、本編のこちらで掲載しています)。
上記の表について、若干の注意点を挙げます。
1 支給対象となるサービス
上記の表のうち、例えば、(1)「在宅サービス」の「介護給付」である①「居宅介護サービス費」の支給対象となる「居宅サービス」とは、「訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売」をいいます(第8条第1項)。
要するに、利用者の居宅を拠点として受けることができるサービスのことです。
この「居宅サービス」は、以下のように分類することができます。
まず、「訪問系(型)サービス」として、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション及び居宅療養管理指導があります。
「通所系サービス」として、通所介護(デイサービス)及び通所リハビリテーション(デイケア)があります。
「短期入所系サービス」として、短期入所生活介護(特別養護老人ホームへのショートステイ)及び短期入所療養介護(老人保健施設等へのショートステイ)があります。
「福祉用具系サービス」として、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売(入浴、排せつ等、衛生管理面からレンタルになじまない福祉用具の場合(入浴用いすやポータブルトイレ等)が特定福祉用具販売の対象です)があります(ただし、特定福祉用具販売は、「居宅介護サービス費」ではなく、「居宅介護福祉介護購入費」の支給となります(第41条第1項本文、第44条)。さしあたりは、「販売」(譲渡となります)と「貸与(レンタル)」との違いであると押さえ、先に進んで下さい(保険給付の個所で見ます))。
なお、「特定施設入居者生活介護」(有料老人ホーム等の特定施設の入居者に対する生活介護)も、居宅サービスに含まれます。「居住系サービス」といわれます。
この「特定施設入居者生活介護」の場合は、施設に入居しているのですが、特別養護老人ホーム等の介護保険施設への入所のように「施設サービス」ではなく、「居宅サービス」に位置づけられています。
これは、介護保険法の制定前から、特別養護老人ホーム等は社会福祉施設として、介護療養型医療施設(いわゆる老人病院)は医療施設として、措置費や医療保険の支給対象となっていたのであり(現在は異なりますが、介護保険法の制定当初は、施設サービスでは、食費や居住費等について利用者の負担がありませんでした)、対して、有料老人ホーム等は、社会福祉施設等ではなく(民間色が濃い施設です)、もともとその費用は全額利用者が負担していたという沿革が考慮されたものです。
2 特例と付く給付
前掲の表(こちら)のうち、「特例」と付く給付(②の番号の給付であり、青字のものです)は、本来の支給要件を満たさない場合において、市町村が必要と認めたときに支給されるものです。
具体的には、要介護認定(要支援認定)の効力が生じた日〔=要介護認定(要支援認定)の申請日〕前に緊急その他やむを得ない理由によりサービスを受けた場合や、所定のサービス以外のサービスを受けた場合等において、市町村が必要があると認めたときに支給されます(第42条(こちら以下)、第54条等)。
従って、いわば例外的・イレギュラーな給付です(過去、特例の給付についての直接的な出題はありません)。
3 地域密着型サービス
前掲の表(こちら)のうち、(3)「地域密着型サービス」は、市町村が事業者の指定・監督を行うサービスです(その他の保険給付は、基本的には、都道府県が指定・監督を行うサービスです)。
地域密着型サービスは、平成17年の改正により創設されました(平成18年4月1日施行)。
同サービスは、要介護者(要支援者)についても、可能な限り、住み慣れた自宅又は地域で生活を継続できるようにするため、身近な市町村で介護サービスを提供しようとする制度趣旨です(その地域での生活を24時間体制で支えるものです)。
そこで、市町村が指定・監督の権限を有し、国の基準の範囲内で、市町村が独自に指定基準・介護報酬を設定することができます。
利用者は、原則として、当該サービス事業所がある市町村の被保険者に限定されます。
例えば、要介護被保険者については、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などの地域密着型サービスが用意されています(詳しくは、こちら以下で見ます)。
以上、保険給付の概要でした。
なお、介護保険においても、保険給付については、「発生 ➡ 変更 ➡ 消滅」の時系列の下(ただし、試験対策上は、ほぼ「発生」に関する問題を念頭におけば足ります)、「発生」において、保険給付の支給要件と効果(広義。支給額等です)を見ることとなります。
ただし、試験では、保険給付の支給要件等について、あまり細かい出題はなされません。一つ一つの保険給付の支給要件等について細かく吟味するというより、ポイントを押さえれば足ります。
次に、効果(広義)について、支給額の概要と現物給付について見ておきます。
(二)支給額・利用者負担
介護給付又は予防給付(以下、「介護給付等」ということがあります。第20条)の支給額は、原則として、費用の100分の90です。即ち、利用者負担は、1割が原則です。
例外として、一定以上の所得を有する第1号被保険者については、2割又は3割の負担となります。
【令和元年度試験 改正事項】
2割負担は、平成27年8月1日から施行され、3割負担は、平成30年8月1日から施行されました(介護保険事業の財政のひっ迫を原因とする改正です)。
なお、2割負担の者を「一定以上所得者」、3割負担の者を「現役並み所得者」ということがあります。
大まかには、合計所得金額が220万円以上の第1号被保険者は、3割負担となり、合計所得金額が160万円以上(220万円未満)の第1号被保険者は、2割負担となります(第49条の2、施行令第22条の2)。
詳しくは、次の図の通りです。
基準となる金額は、覚えておいた方がよさそうです(特に、3割負担は、最近の改正事項です。すぐ後で、ゴロを挙げます)。
ただ、あまり細かい数字は、出題されても多くの受験者の方も正答できないでしょうから、さしあたりは、前記の220万円、160万円あたりから押さえておきます。
3割負担への引上げは、高齢者医療においてはすでに一定以上の所得を有する者の自己負担が3割となっていたこととのバランスを考慮したものです。
即ち、例えば、健康保険においては、70歳未満の被保険者は3割負担であり、70歳以上の被保険者は、原則は2割負担ですが、一定以上所得者は3割負担です(健保法のこちら以下を参考)。
国民健康保険においても、同様です(こちら以下)。
また、75歳以上の者(原則)を対象とする後期高齢者医療制度においても、自己負担は、原則として1割ですが、現役並み所得者については3割です(さらに、令和4年10月1日施行の改正により、現役並み所得者に該当しない一定以上所得者について、2割負担の区分が新設されました。こちら以下)。
※【ゴロ合わせ】
ちなみに、前掲の図(こちら)の金額についてのゴロ合わせです。
まず、本人の金額から、図の下より上に覚え、次に「年金収入+その他の合計所得金額」を図の下から上に覚えます。
・「介護の疲労でフーフーしたので、さぼりたいが、不安で、よろめきながら、散歩した。」
(親の介護で疲労がたまり、さぼりたいのですが、散歩に連れていきました。)
→「介護の、疲労(=「160」万円)で、フーフー(=「22」0万円)したので、さぼり(=「346」万円)たいが、不安(=「28」0万円)で、よろめ(=「463」万円)きながら、散歩(「340」万円)した。」
※ なお、前掲の介護給付等の表(こちら)のうち、(4)「ケアプランの作成等」に係る費用については、利用者負担はありません(令和2年の改正(令和3年4月1日施行)では、当初、ケアプランの作成等に係る費用に利用者負担を設定する案が検討されていましたが、先送りされました)。
また、施設サービスにおける食費・居住費(滞在費)については、利用者が負担します(低所得者については、同表(こちら)の(6)による負担軽減が行われます。こちらを参考)。
以上、支給額・利用者負担でした。
(三)現物給付の方式
なお、介護保険の保険給付は、介護保険法上は、償還払いの方式となっていますが、実際は、償還払いの方式に代えて現物給付の方式により支給されます。
健康保険法等の医療保険と同様です。
以上、介護給付等の概要でした。
(四)サービス提供機関
ここで、サービス提供機関と指定・許可を行う者についてまとめておきます。
上記表のうち、介護給付の(1)「指定居宅サービス事業者」とは、要するに、こちらの表の(1)「在宅サービス」の「介護給付」の①の「居宅介護サービス費」の支給に係る事業(居宅サービス事業)を行う者のことです。
より正確には、「指定居宅サービス事業者」とは、「指定居宅サービス」を行う、都道府県知事が指定する者です(第41条第1項参考)。
「指定居宅サービス」とは、当該指定に係る「居宅サービス事業」を行う事業所により行われる「居宅サービス」です(同条同項)。
「居宅サービス」とは、「訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売」をいいます(第8条第1項)。
「居宅サービス事業」とは、「居宅サービス」を行う事業をいいます(第8条第1項)。
予防給付の場合は、前掲の表(こちら)の「予防給付」の(1)「指定介護予防サービス事業者」が対応します。
これら「指定居宅サービス事業者」(又は「指定介護予防サービス事業者」)は、いずれも、都道府県知事の指定が必要です。
即ち、「居宅介護サービス費」(又は「介護予防サービス費」)は、原則として、都道府県知事の指定を受けた事業者からサービスを受けた場合に支給されます。
上記の指定・許可については、次のように覚えます。
(ⅰ)原則として、知事の指定が必要です。
保険者である市町村の長が指定するのではないことに注意です。
例えば、事業者の事業所の所在地と同一の市町村内に住所を有する被保険者のみが当該事業者から介護サービスを受けられるとはできず、介護サービスは市町村を超えて広域的に提供される必要がありますから(介護施設の場合は、その所在地と異なる市町村に住所を有する者も入所の対象となります)、基本的には、都道府県を基準として指定を受けることになります。
(ⅱ)「地域密着型」サービス又は「支援事業者」の場合は、市町村長の指定です。
「地域密着型」サービスは、前述の通り、市町村が行うサービスです(地域密着型介護サービスは、原則として、当該市町村の被保険者のみが利用可能です)。
また、「支援事業者」は、ケアプランの作成等を行う者(ケアマネージャー)が属する事業者であり、市町村が行う要介護認定等との関係などから市町村による支援や市町村との連携が必要であるため、市町村長が指定の権限を有します。
なお、以前は、「支援事業者」のうち、介護給付に係る「指定居宅介護支援事業者」の指定の権限は、知事が有していましたが、平成30年4月1日施行の改正により、市町村に権限が移換され、予防給付に係る「指定介護予防支援事業者」の指定と同様に、市町村長が指定することとなりました(第46条第1項)。(詳しくは、こちら以下)
(ⅲ)施設サービス(介護保険施設)のうち、「介護老人保健施設」と「介護医療院」については、都道府県知事の開設の許可が必要です。
例えば、特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)の場合は、老人福祉法において、社会福祉法人等が都道府県知事の開設の「認可(にんか)」を受けて特別養護老人ホームを設置することとなっています(老人福祉法第15条第4項。前述のように、特別養護老人ホーム等は社会福祉施設として介護保険法の制定前から存在していた古い施設なのです)。
そこで、特別養護老人ホームの開設(設置)について、すでに知事の認可がある以上、介護保険法では、知事の開設の「許可」は不要であり、介護保険施設として利用できるという意味の「指定」で足りることとなっています。
他方、介護老人保健施設や介護医療院の場合は、介護保険法に基づき開設(設置)されるものであり、適正な運営を担保する見地から、知事の開設の許可(きょか)が必要となっています(ちなみに、老人保健施設は、昭和61年に老人保健法に基づき老人保健施設として定められていましたが、介護保険法の制定に伴い、老人保健施設に関する法令上の規定がすべて介護保険法及び同法に基づく命令に移行されたものです)。
「老犬と教官」(介護「老」人保「健」施設は、「許可」)とでも覚えておきます(年をとった警察犬と訓練した教官が再開したイメージです。介護「老」人保「健」施設のことを、介護業界では「ろうけん」といいます)。
なお、介護保険施設については、被保険者の居住する市町村と異なる地域に入所する施設が存在することがあるため、施設の指定ないし許可は市町村長が行うのではなく、都道府県知事が行います。
以上、介護給付等の概要でした。
二 市町村特別給付
市町村特別給付とは、要介護状態等(被保険者の要介護状態又は要支援状態をいいます(第2条第1項)の軽減又は悪化の防止に資する保険給付として条例で定めるものです(第18条第3号)。
即ち、市町村は、要介護被保険者又は居宅要支援被保険者(以下、「要介護被保険者等」ということがあります)に対し、介護給付・予防給付のほか、条例で定めるところにより、市町村特別給付を行うことができます(第62条)。
例えば、おむつの支給、移送、配食等のサービスがあり、市町村ごとに実施の有無や内容等が異なります。
介護給付・予防給付と異なり、第1号被保険者の保険料のみを財源とします。
こちら以下で見ます。
以上、保険給付の概要でした。
〔2〕保険給付以外の事業 = その他の事業
保険給付以外の事業(以下、「その他の事業」ということがあります)として、地域支援事業と保健福祉事業があります。
いずれも、市町村が実施する事業(行政サービス)です。
以下では、地域支援事業の概要を見ます(本文は、こちら以下)。
地域支援事業は、被保険者が要介護状態又は要支援状態(要介護状態等)となることを予防するとともに、要介護状態等となった場合においても、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援する等のために、市町村が行うものです(第115条の45参考)。
平成17年の改正により創設されました(平成18年4月1日施行。同改正は、予防を重視する予防重視型介護システムへの転換を一つの目的としていましたが、地域支援事業がこの予防重視型システムの中心です)。
地域支援事業は、①介護予防・日常生活支援総合事業、②包括的支援事業、及び③任意事業から構成されます(ちなみに、①「介護予防・日常生活支援総合事業」は、実務上、「総合事業」と簡略化して表現されることがあります)。
①と②は、全市町村が行う必須事業です。
地域支援事業は、市町村が行うものですが、その実施機関は主に地域包括支援センターです(同センターも平成17年の改正により創設されました)。(第115条の46)
(地域包括支援センターについて、【選択式 令和元年度 C=「その保健医療の向上及び福祉の増進」(こちら)】で出題されています。)
なお、平成26年の改正により、地域包括ケアシステムの構築に向けて、従来、要支援に係る予防給付(介護予防サービス費)において実施されていた「訪問介護(介護予防訪問介護)」と「通所介護(介護予防通所介護)」が地域支援事業(①の介護予防・日常生活支援総合事業)に移行される等の見直しが行われました(詳しくは、こちらの2)。
地域包括ケアシステムとは、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」をいいます(医療介護総合確保促進法第2条第1項。医療介護総合確保『促進』法の正式名称は、「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」(【平成元.6.30法律第64号】)です。最終改正は、【平成26.6.25法律第83号】(「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」=「医療介護総合確保『推進』法」))。
後述のように、介護保保険法第5条第4項においても、国及び地方公共団体の責務として、地域包括ケアの推進の努力義務が規定されています(平成23年の改正により新設(当時は、第5条第3項))。
即ち、高齢化社会の一層の進展の下、高齢者が地域で継続して生活ができるように、市町村(地域)が中心となって、医療、介護、介護予防、住居、生活支援を包括的に確保しようとする施策が地域包括ケアシステムです。
地域包括ケアシステムは、高齢者を病院や施設ではなく、地域でケアしようとするものです。
そして、医療、介護、介護予防だけでなく、住居や生活支援までも包括的に確保するものです。
いわば高齢者を地域で見守りケアしていこうとする考え方といえます。
(この地域包括ケアシステムを実現するために、介護においては、「地域支援事業」が重要となります。
ただし、ことは、疲弊する地方をどう再生するのかといった問題ともつながるものであり、地域の住民の意識等、地域のあり方も問われることとなります。)(前述のこちら以下も参考です。)
以上、「事業」の概要でした。
〔Ⅳ〕費用(財政)
〔1〕費用の負担
介護保険事業の費用の負担についてまとめますと、次の図の通りです。
◆介護保険事業の費用の負担については、介護給付及び予防給付に要する費用の額(以下、「給付費」ということがあります)と地域支援事業に要する費用の額に分かれます。
順に概要を見ます。
1 給付費
前者の給付費については、利用者負担を除いて、50%が公費で賄われ、残りの50%が保険料で賄われます。
(1)公費負担
公費負担の内訳は、次の通りです。
(ⅰ)居宅給付費
居宅給付費(次の(ⅱ)の「施設等給付費」以外の給付費です)については、国が25%(内、調整給付金として5%を市町村に交付。第122条。※1)、都道府県と市町村が12.5%ずつです(以上、第121条第1項第1号、第123条第1項第1号、第124条第1項)。
(ⅱ)施設等給付費
施設等給付費(※2)については、国が20%(内、調整交付金として5%を市町村に交付。第122条)、都道府県が17.5%、市町村が12.5%です(以上、第121条第1項第2号、第123条第1項第2号、第124条第1項)
※1 上記(ⅰ)の居宅給付費について国が負担する25%(上記(ⅱ)の施設等給付費の場合は20%)のうち、20%(同15%)の部分は、各市町村の標準給付費額に対して定率で交付されます。
残りの5%の部分は、各市町村において、後期高齢者の加入割合や所得水準等に着目して、市町村の努力では対応できない第1号被保険者の保険料の格差を是正するための調整交付金として交付されます。
※2 施設等給付費とは、介護保険施設及び特定施設入居者生活介護に係る介護給付並びに介護予防特定施設入居者生活介護に係る予防給付に要する費用のことです(第121条第1項第2号、第123条第1項第2号)。(介護保険施設等の用語の意味については、後に本文でみます。)
施設等給付費については、当初は、国と都道府県の負担割合は、居宅給付費の場合と同様でしたが、平成18年度から、国から都道府県への5%分の税源移譲が行われたため、負担割合が変化しました(国20%、都道府県17.5%)。
(2)保険料負担
給付費について、公費負担を除く残りの50%は、保険料の負担であり、第1号被保険者と第2号被保険者の納付する保険料により賄われます。
具体的には、第1号被保険者については、市町村が保険料を賦課し、徴収します(第129条第1項、第2項)。
対して、第2号被保険者の介護保険の保険料については、市町村は徴収せず(第129条第4項)、医療保険各法の保険者(医療保険者。第7条第7項)が医療保険の保険料に併せて(上乗せして)介護保険の保険料も徴収します。
医療保険者は、この徴収した介護保険料をもとに「介護給付費納付金」及び「地域支援事業支援納付金」(「介護給付費・地域支援事業支援納付金」)を「社会保険診療報酬支払基金」に納付し、これを支払基金が「介護給付費交付金」及び「地域支援事業支援交付金」として介護保険の保険者である市町村に交付します(第125条第1項、第126条、第150条、第160条第1項)。
なお、第1号被保険者と第2号被保険者の負担割合については、3年を1期とする介護保険事業計画の計画期間ごとに全国ベースの人口比率で定められます。
【令和6年度試験 改正事項】
令和6年~8年の40歳以上の人口比率(年平均)について、40歳以上65歳未満の者は約54%、65歳以上の者は約46%と推計されたため、第1号被保険者は費用の23%を負担します(費用の2分の1は公費負担であり、保険料は残りの2分の1を賄いますから、「46% × 2分の1=23%」です)。
第2号被保険者は、費用の27%を負担します(「54% × 2分の1=27%」。「介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令」第5条。最終改正【令和5.12.27政令第383号】第2条)。
この第2号被保険者の給付費の負担割合を、第2号被保険者負担率といいます。
即ち、令和6年度から8年度までは、(従来と同じく)100分の27(27%)です。
2 地域支援事業に要する費用の額
他方、地域支援事業のうち、「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、「総合事業」ということがあります)に必要な費用については、上述の居宅給付費と同じ費用負担の構成であり、公費が50%(国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%)、保険料が50%(第1号被保険者分23%、第2号被保険者分27%)です。
その他の地域支援事業(「包括的支援事業」及び「任意事業」)については、第2号被保険者の保険料は充てられず、その分は公費が負担します。
そこで、第1号被保険者分の23%を除く77%を公費負担することとなり、国38.5%、都道府県及び市町村が19.25%ずつの負担(給付費と同じく、国:都道府県:市町村が2:1:1の割合で負担)となります(以上については、費用の個所で詳しく見ますので、さしあたりはざっとで結構です)。
※ なお、介護保険の事務費については、公費負担はなく、各市町村の一般財源により賄われます。
〔2〕保険料
介護保険の保険料については、何度か触れていますが、再述します。
まず、第2号被保険者の介護保険の保険料については、基本的には、健康保険法や国民健康保険法で学習しています。
即ち、市町村は、第2号被保険者からは介護保険の保険料を徴収せず(第129条第4項)、医療保険者が、医療保険の保険料と併せて介護保険の保険料も徴収します。
この介護保険の保険料は、例えば、健康保険の場合は、各被保険者の標準報酬に介護保険料率を乗じて得た額となります。
国民健康保険の場合は、各市町村の国民健康保険料の算定ルールにより、所得割、資産割、均等割及び平等割の全部又は一部を組み合わせて算定されます。
対して、第1号被保険者の介護保険の保険料については、市町村が徴収し(第129条第1項)、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより算定された保険料率により算定された保険料額によって課されます(同条第2項)。
即ち、第1号被保険者の介護保険の保険料については、保険者である市町村が賦課し、徴収します。
【令和6年度試験 改正事項】
第1号被保険者の介護保険の保険料額は、所得段階別の定額制(原則として13段階)となります(令和3年度から5年度までの9段階から増加されました)。
第1号被保険者の介護保険の保険料の徴収方法は、特別徴収の方法による場合を除くほか、普通徴収(市町村が、保険料を課せられた第1号被保険者等に対し、納入の通知をすることによって保険料を徴収すること)の方法によらなければなりません(第131条)。
特別徴収の要件等については、基本的に、国民健康保険法(こちら)や後期高齢者医療制度(こちら)で学習しました内容とほぼ同様です(それらの制度の特別徴収は、介護保険法の特別徴収を参考にのちに創設されたものです)。
※ 保険料については、その他に、保険料の滞納に関する措置が問題となります(第66条以下。本文は、こちら以下)。
国民健康保険や後期高齢者医療制度における保険料の滞納に関する措置と共通する部分が多いです。
ただ、介護保険の場合は、「被保険者証の返還 ➡ 資格証明書の交付」という問題はおきません(市町村は、被保険者証の提出を求め、当該被保険者証に、現物給付に関する規定を適用しない旨の記載(支払方法変更の記載)をすることができます(償還払い方式への変更))。
以上、費用(財政)についてのアウトラインでした。
〔Ⅴ〕その他
介護保険のその他の事項としては、不服申立て、消滅時効及び罰則がメインです。
ここでは、不服申立ての全体像に触れておきます。
不服申立てについては、次の図のように、不服申立て先が「介護保険審査会」となりますが、その他は、基本的に、国民健康保険や後期高齢者医療制度における不服申立てと同様になると覚えます。
なお、「介護保険審査会」と先に触れました「介護認定審査会」(こちら以下)を混同しないように注意です(「保険」と「認定」が異なるだけです)。
後者の「介護認定審査会」は、要介護認定等の審査・判定を行う機関であり、市町村が設置します。
前者の「介護保険審査会」は、不服審査機関であり、都道府県が設置します。
以上、介護保険法の体系でした。
次のページでは、介護保険法の主な改正や総則的な条文について見ます。