令和6年度 社会一般
令和6年度(2024年度)の社会一般の本試験問題のインデックスを掲載します。
リンク先に本試験問題及びその解説を掲載しています。
択一式
○【問6】= 確定給付企業年金法に関する問題:
▶確定給付企業年金法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
・【令和6年問6A】(社会一般のパスワード。以下、特記ない限りこのページにおいて同様です)
企業年金基金(以下本間において「基金」という。)は、分割しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。また、基金の分割は、実施事業所の一部について行うことができる。
確定給付企業年金法第78条第1項によると、事業主等がその実施事業所を増加させ、又は減少させようとするときは、その増加又は減少に係る厚生年金適用事業所の事業主の過半数の同意及び労働組合等の同意を得なければならない。
基金は、代議員会において代議員の定数の3分の2以上の多数により議決したとき、又は基金の事業の継続が不可能となったときは、厚生労働大臣の認可を受けて、解散することができる。
確定給付企業年金を実施する厚生年金適用事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けて、その実施する確定給付企業年金の清算人になることができる。
確定給付企業年金法第89条第6項によると、終了した確定給付企業年金の残余財産(政令で定めるものを除く。)は、政令で定める基準に従い規約で定めるところにより、その終了した日において当該確定給付企業年金を実施する事業主等が給付の支給に関する義務を負っていた者に分配しなければならない。
○【問7】= 確定拠出年金法に関する問題:
▶確定拠出年金法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
企業型年金加入者は、政令で定める基準に従い企業型年金規約で定めるところにより、年1回以上、定期的に自ら掛金を拠出することができる。
企業型年金加入者掛金を拠出する企業型年金加入者は、企業型年金加入者掛金を企業型年金規約で定める日までに事業主を介して資産管理機関に納付するものとする。
企業型年金の給付のうち年金として支給されるもの(以下本肢において「年金給付」という。)の支給は、これを支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、権利が消滅した月で終わるものとする。年金給付の支払期月については、企業型年金規約で定めるところによる。
個人型年金加入者は、厚生労働省令で定めるところにより、氏名及び住所その他の事項を、当該個人型年金加入者が指定した運用関連業務を行う確定拠出年金運営管理機関に届け出なければならない。
個人型年金加入者掛金の額は、個人型年金規約で定めるところにより、個人型年金加入者が決定し、又は変更する。
○【問8】= 国民健康保険法に関する問題:
▶国民健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
市町村(特別区を含む。以下本間において同じ。)は、国民健康保険事業の運営が適切かつ円滑に行われるよう、国民健康保険組合(以下「国保組合」という。)その他の関係者に対し、必要な指導及び助言を行うものとする。
国保組合は、規約の定めるところにより、組合員の世帯に属する者を包括して被保険者としないことができる。
国保組合が解散したときは、破産手続開始の決定による解散の場合を除き、監事がその清算人となる。ただし、規約に別段の定めがあるとき、又は組合会において監事以外の者を選任したときは、この限りでない。
国民健康保険審査会は、各都道府県に置かれ、被保険者を代表する委員、保険者を代表する委員及び保険医又は保険薬剤師を代表する委員各3人をもって組織される。
市町村若しくは国保組合又は国民健康保険団体連合会は、厚生労働省令で定めるところにより、事業状況を厚生労働大臣に報告しなければならない。
○【問9】=社会保障制度に関する問題:【組み合わせ問題】
▶社会保障制度に関する次のアからオの記述のうち、正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。
なお、本間の「ア、イ、ウ」は「令和5年版厚生労働白書(厚生労働省)」を参照しており、当該白書又は当該白書が引用している調査による用語及び統計等を利用している。
・【令和6年問9ア(「白書対策講座」のパスワード)】 (厚生労働白書)
日本の公的年金制度は、予測することが難しい将来のリスクに対して、社会全体であらかじめ備えるための制度であり、現役世代の保険料負担により、その時々の高齢世代の年金給付をまかなう世代間扶養である賦課方式を基本とした仕組みで運営されている。賃金や物価の変化を年金額に反映させながら、生涯にわたって年金が支給される制度として設計されており、必要なときに給付を受けることができる保険として機能している。
・【令和6年問9イ(「白書対策講座」のパスワード)】 (厚生労働白書)
公的年金制度の給付の状況としては、全人口の約3割が公的年金の受給権を有している。高齢者世帯に関してみれば、その収入の約8割を公的年金等が占めるなど、年金給付が国民の老後生活の基本を支えるものとしての役割を担っていることがわかる。
・【令和6年問9ウ(「白書対策講座」のパスワード)】 (厚生労働白書)
「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」による短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大には、これまで国民年金・国民健康保険に加入していた人が被用者保険の適用を受けることにより、基礎年金に加えて報酬比例の厚生年金保険給付が支給されることに加え、障害厚生年金には、障害等級3級や障害手当金も用意されているといった大きなメリットがある。また、医療保険においても傷病手当金や出産手当金が支給される。
・【令和6年問9エ(「白書対策講座」のパスワード)】【直近の改正事項】(社会保障協定)
日本から海外に派遣され就労する邦人等が日本と外国の年金制度等に加入し保険料を二重に負担することを防ぎ、また、両国での年金制度の加入期間を通算できるようにすることを目的として、外国との間で社会保障協定の締結を進めている。2024(令和6)年4月1日現在、22か国との間で協定が発効しており、一番初めに協定を締結した国はドイツである。
・【令和6年問9オ(「白書対策講座」のパスワード)】 (社会保障協定)
日本と社会保障協定を発効している国のうち英国、韓国、中国及びイタリアとの協定については、「両国での年金制度の加入期間を通算すること」を主な内容としている。
○【問10】=社会保障制度の死亡に係る給付に関する問題:
▶社会保険制度の死亡に係る給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
〔肢のAのみは、ここで解説します。〕
・【令和6年問10A】(船員保険法)
設問:
船員保険の被保険者が職務外の事由により死亡したとき、又は船員保険の被保険者であった者が、その資格を喪失した後6か月以内に職務外の事由により死亡したときは、被保険者又は被保険者であった者により生計を維持していた者であって、埋葬を行った者に対し、埋葬料として、 5万円を支給する。
解答:
誤りです。
3点の誤りがあります。
即ち、①「6か月以内」ではなく、「3か月以内」が、②「埋葬を行った者」ではなく、「埋葬を行う者」が、 ③「埋葬料」ではなく、「葬祭料」が正しいです(船員保険法第72条第1項、同法施行令第6条)。
・【令和6年問10B(社会一般のパスワード)】(国民健康保険法)
市町村(特別区を含む。)及び国保組合は、国民健康保険の被保険者の死亡に関しては、条例又は規約の定めるところにより、埋葬料として、5万円を支給する。
・【令和6年問10C(健康保険法のパスワード)】(健康保険法)
健康保険の日雇特例被保険者が死亡した場合において、その死亡の日の属する月の前2か月間に通算して26日分以上若しくは当該月の前6か月間に通算して78日分以上の保険料がその者について納付されていなくても、その死亡の際その者が療養の給付を受けていたときは、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものに対し、埋葬料として、5万円を支給する。
・【令和6年問10D(健康保険法のパスワード)】 (健康保険法)
健康保険の被保険者が死亡したときに、その者により生計を維持していた者がいない場合には、埋葬を行った者に対し、埋葬料として、5万円を支給する。
・【令和6年問10E(社会一般のパスワード)】 (高齢者医療確保法)
後期高齢者医療広域連合は、高齢者医療確保法の被保険者の死亡に関しては、条例の定めるところにより、埋葬料として、5万円を支給する。
選択式
次の文中の の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
1 厚生労働省から令和5年7月に公表された「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合についてみると、公的年金・恩給の総所得に占める割合が A の世帯が44.0%となっている。なお、国民生活基礎調査において、「高齢者世帯」とは、65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯をいう。
2 厚生労働省から令和5年8月に公表された「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」によると、令和3年度末において、第1号被保険者のうち要介護又は要支援の認定者(以下本肢において「認定者」という。)は677万人であり、第1号被保険者に占める認定者の割合は全国平均で B %となっている。
3 国民健康保険法第1条では、「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて C に寄与することを目的とする。」と規定している。
4 高齢者医療確保法第1条では、「この法律は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成及び保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の D の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の E の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け、もつて国民保健の向上及び高齢者の福祉の増進を図ることを目的とする。」と規定している。
選択肢:
①3.9 ②18.9 ③33.9 ④48.9
⑤40~60%未満 ⑥60~80%未満 ⑦80~100%未満 ⑧100%
⑨給付費用 ⑩給付割合 ⑪共助連帯 ⑫共同連帯
⑬自助と共助 ⑭自助と連帯 ⑮社会保険及び国民福祉の向上 ⑯社会保険及び国民保健の向上
⑰社会保障及び国民福祉の向上 ⑱社会保障及び国民保健の向上 ⑲費用負担 ⑳負担割合
選択式解答
A=⑧「100%」(「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」(こちら)の11頁)
B=②「18.9」(「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」(こちら)の2頁)
C=⑱「社会保障及び国民保健の向上」(国民健康保険法第1条)
D=⑫「共同連帯」(高齢者医療確保法第1条)
E=⑲「費用負担」(同上)
選択式の論点とリンク先
社会一般の選択式は、問1及び2がデータからの出題です。問2の介護保険事情状況報告は、当サイトでカバーしていましたが、問1の国民生活基礎調査はカバーしていませんでした。
問3及び4は、目的条文からの出題です。
問1の空欄Aは難しいですが、問2のBは後述のように「手計算」することができます。問3と問4から3つあるいは2つを正解したいところです。
〔1〕問1 = 空欄のA
選択式の問1(空欄のA。こちら)は、国民生活基礎調査からの出題ですが、厳しいです。
公的年金・恩給の総所得に占める割合が「A」の世帯が44%である、という出題であり、Aとしては、選択肢の⑦「80から100%未満」辺りが穏当かと考えてしまいがちです。
これは、国民生活基礎調査のデータを実際に学習していないと、なかなか⑧「100%」に踏み切れないところです。
「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」(こちら)の11頁で記載されていました。
該当箇所を抜粋しておきます。
〔2〕問2 = 空欄のB
選択式の問2(空欄のB。こちら)については、当サイトの「白書対策講座」の「介護」の「令和3年度介護保険事業状況報告」でも取り上げていました。こちら(白書対策講座のパスワード)です。
ただ、これも、今回の労働一般の選択式の問2(雇用者総数に占める女性の割合。こちら)のように、介護保険「第1号被保険者」の数を想像して計算すればよいです。
即ち、第1号被保険者とは、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者のことですから(社会一般のこちら。社会一般のパスワード)、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)を参考にできることになります。
現在の高齢化率は、約30%です(正確には、2023(令和5)年に29.1%。白書対策講座のこちら以下です。平成27年度に25%であったことが、択一式で出題されています。【平成27年問9E(こちら)】)。
総人口は、約1億2千万人ですから、「1億2千万人×30%=約3600万人」が65歳以上の人口ということになります。
(高齢化率を知らなくても、常識的に65歳以上の人口は総人口の3割前後辺りであろうと想像できます。)
そこで、第1号被保険者(≒65歳以上人口=3600万人)に対する認定者(677万人)の割合は、「0.188・・・」となり、これに近い選択肢は②「18.9」%と導くことができます。
以上のように、この問2は、正確な知識がなくても、十分正答できる内容でした。
〔3〕問3及び問4= 空欄のC~E
選択式の問3(空欄のC。こちら)及び問4(空欄のD及びE。こちら)は、国保法と高医法の目的条文からです。
国保法第1条は、当サイトの社会一般のこちら以下であり、高医法第1条は、こちらです。
後者の高医法の箇所で説明していますが、国保法の第1条の「社会保障」という文言については、国民健康保険法が被用者以外の者に係る「医療保険の基本法」であるため、目的条文に「社会保障」と入っていると覚えておきます。
また、「国民保健の向上」についても、国保法第1条と高医法第1条の両者で使用されていることを記載しています。
このように、目的条文の紛らわしい文言については、記憶を喚起できるフックのようなものを日頃から探して思い出せるようにして下さい。
なお、空欄のCについては、平成29年度の選択式の空欄Aと全く同じキーワードが抜かれています(こちら)。
空欄のD(共同連帯)は、当サイトでかなりマークしています。国年法のこちらや高医法の前掲のリンク先をご参照下さい。
空欄のE(費用負担)は、前期高齢者制度の趣旨であり、社会一般のこちらを参考です。
社会一般は、空欄Aは厳しいですが、その他の4つから3つは正答できそうです。
なお、D及びEについては、直前対策講座の【高医法 問1】のA及びB (こちら)において取り上げていました。
総評
選択式は、平均点が2.4点でした(前年度は2.8点)。
社会一般の選択式は、平成30年度以降3年度連続して基準点が2点に引き下げられており、近時、厳しい内容が出題されています。
前々回の令和4年度の選択式も、基準点の引き下げはありませんでしたが、簡単な内容ではありませんでした。
前回の令和5年度の選択式は、基準点を上回ることは容易でした。
今回は、微妙なところでした(基準点の引き下げはなし)。
問1及び2のデータ問題は、「たまたま」正解したとか、「たまたま」間違えたといったことがありがちであり、なかなか厳しいです。
問3及び4の目的条文については、十分学習していない方にとっては、選択肢の中を右往左往することとなりますが、学習している方にとってはサービス問題となります。
令和4年度と前回の令和5年度の選択式は、ともに社会保障関係のデータから1問出題され、その他に、確定給付企業年金法か確定拠出年金法から1問が出題され、船員保険法と児童手当法から1問ずつの出題という構成となっていました。
その他には、国民健康保険法、高齢者医療確保法、介護保険法などが入れ替わってくるという形です。
今回は、社会保障関係のデータから1問増え、2問となり、その他に、国民健康保険法と高齢者医療確保法が入りましたが、いずれも目的条文だったという特徴がありました。
確定給付企業年金法と確定拠出年金法は、選択式では出題されませんでしたが、択一式で両法が1問(5肢)出題されました。
一方、択一式は、かなり厳しいです。
【問6】(こちら)は、基金型企業年金(企業年金基金)の変更(分割、実施事業所の増減)や消滅(解散、清算)というマイナーな箇所からの出題であり、過去問もなかったことから厳しいです。
【問7】(こちら)は、肢のB(こちら)やD(こちら)を正答できたかがポイントでした。
【問8】(こちら)は、各肢とも難しく、正解肢であるB(こちら)が比較的易しく、このBを正解とできたかが分かれ目でした。
【問9】(こちら)は、社会保障協定に関する肢のオ(直近の改正事項を十分学習していない場合は、肢のエも)が難しく、肢のアとウをごく自然に判断することができたかがポイントでした。
ちなみに、当サイトでは、「白書対策講座」において、肢のアからウまではカバーしていました。
【問10】(こちら)は、肢のC(健保法の日雇特例被保険者の埋葬料。 こちら)が難しいため、その他の肢を検討したうえでの消去法で正解を導くことになりそうです。
以上のように、択一式についても、簡単に解答できる肢が少なくなっています。
市販の薄いテキストだけで充分といえるか、かなり厳しいといえ、例えば、市販のテキストをほぼ暗記したうえで、当サイトでカバーしている知識についてまでも補充する必要がありそうです。
結局、合格のための鍵は何かといえば、「当サイトをうまく利用して頂くこと」に尽きるといえそうです。
なお、社会一般と労働一般に共通しますが、「厚生労働白書」について、「出題されそうな個所はないか」といった視点により日頃から十分にチェックしておくことは必須です。