【令和6年度版】
第1部 失業等給付等
【令和2年度試験 改正事項】
「失業等給付等」とは、「失業等給付」及び「育児休業給付」のことです(第69条第1項参考)。
以前は、「失業等給付」の中の「雇用継続給付」として「育児休業給付」が位置づけられていました(改正前第10条第6項第2号)。
しかし、令和2年4月1日施行の改正により、「育児休業給付」が「失業等給付」から分離されました(第3条参考)。
即ち、雇用保険法の給付は、次の体系となりました。
◆「失業等給付等 = 失業等給付 + 育児休業給付」
これは、育児休業給付金の支給額が一貫して増加していることを踏まえ(近時、基本手当に匹敵する支給総額となっています)、育児休業給付を失業等給付とは異なる給付体系として位置づけ、育児休業給付の収支について失業等給付の収支と区分して明確化することを目的とするものです(「序論」のこちら)。
ただし、従来の「育児休業給付」や「育児休業給付以外の給付」の内容自体には実質的な変更はありません。
給付の体系が変わりましたが、給付の内容自体には変更はないという認識で足ります(徴収法上の雇用保険率の取扱い等において変更があります。なお、その後、令和4年10月1日施行の改正によって、育児休業給付として従来の育児休業給付金に加えて出生時育児休業給付金が創設されました)。
以下、失業等給付等の全体像を見ていきます。
序論 失業等給付等の全体像
§1 失業等給付等の概観
【令和2年度試験 改正事項】
失業等給付等は、「失業等給付」である「求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付」の4種類(第10条第1項)と「育児休業給付」からなります(第3条、第69条第1項、「第3章の2 育児休業給付」)。
これらの給付は、さらに次の表のように細かく分かれます。
後にゴロ合わせで覚えていきますので、まだ眺めるだけで結構です。
以下、この序論は、雇用保険法をマスターするために、非常に重要な個所です。
各給付について若干解説を加えますと、以下の図のようになります。
条文上は、失業等給付については、第10条が次のように規定しています。
この条文は、重要です。太字部分のキーワードがすらすらと思い出せるようになる必要があります。
【条文】
※ 次の第10条は、平成29年1月1日施行の改正(【平成28.3.31法律第17号】)により改められています。
〔即ち、同条第3項中、従来、「高年齢継続被保険者」とあったのが、「高年齢被保険者」に改められ、第4項第3号が「三 求職活動支援費」と改められました。〕
※ また、本条は、令和2年4月1日施行の改正(【令和2.3.31法律第14号】第1条)により改められています。
〔即ち、同条第6項中、第2号を削り、第3号が第2号とされました。〕
第10条(失業等給付) 1.失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付とする。
2.求職者給付〔=一般被保険者に係る求職者給付〕は、次のとおりとする。
一 基本手当
二 技能習得手当
三 寄宿手当
四 傷病手当
3.前項の規定にかかわらず、第37条の2第1項に規定する高年齢被保険者に係る求職者給付は、高年齢求職者給付金とし、第38条第1項に規定する短期雇用特例被保険者に係る求職者給付は、特例一時金とし、第43条第1項に規定する日雇労働被保険者に係る求職者給付は、日雇労働求職者給付金とする。
4.就職促進給付は、次のとおりとする。
一 就業促進手当
二 移転費
三 求職活動支援費
5.教育訓練給付は、教育訓練給付金とする。
〔※ ただし、暫定措置として、教育訓練支援給付金があり(平成26年10月1日施行の改正により創設)、教育訓練給付は、暫定的に、教育訓練給付金と教育訓練支援給付金の2種類とされています(法附則第11条の2第1項後段)。〕
6.雇用継続給付は、次のとおりとする。
一 高年齢雇用継続基本給付金及び高年齢再就職給付金(第6節第1款において「高年齢雇用継続給付」という。)
二 介護休業給付金 |
※ ちなみに、令和2年4月1日施行の改正前の第10条第6項は、次の通りでした。
【改正前第10条】
改正前第10条(失業等給付)
〔第5項までは、省略。〕
6.雇用継続給付は、次のとおりとする。
一 高年齢雇用継続基本給付金及び高年齢再就職給付金(第6節第1款において「高年齢雇用継続給付」という。)
二 育児休業給付金
三 介護休業給付金 |
○ 以上の失業等給付等の各給付の名称や全体の中での位置づけを覚えることは必須です(例えば、「移転費は、求職者給付である」といったような設問に対して即座に正誤を判定できる必要があります)。
この名称・位置づけについて、以下のように、ゴロ合わせにより覚えます。
(1)失業等給付等の全体
失業等給付等は、「失業等給付」と「育児休業給付」からなります
「育児休業給付」は別個に押さえるとして、まずは、前者の「失業等給付」を押さえます。
「失業等給付」は、「求職者給付」、「就職促進給付」、「教育訓練給付」及び「雇用継続給付」の4種類であり、まずはこれを覚えます(あわせて、雇用保険二事業の名称も覚えます)。
※【ゴロ合わせ】
・「失業とーちゃん、九州に訓練継続。二事業はあんのか?」
(とーちゃんが失業したため、九州に職業訓練を受けに行きましたが、それでも就職先として2つくらい見つかるかどうかといった就職困難な状態でした。)
→「失業とー(=「失業等」給付)ちゃん、
九(=「求」職者給付)、州(=「就」職促進給付)に、訓練(=教育「訓練」給付)、継続(=雇用「継続」給付)。
二事業(=雇用保険「二事業」)は、あん(=雇用「安」定事業)、の、か(=「能」力「開」発事業)?」
(2)一般被保険者の求職者給付
次に、「一般被保険者の求職者給付」の4種類を覚えます。
「基本手当、技能習得手当(受講手当と通所手当からなります)、寄宿手当及び傷病手当」の4種類です
なお、「一般被保険者の求職者給付」とは、「一般被保険者が失業した場合に支給される求職者給付」ということです。
換言しますと、「一般被保険者であった者に支給される求職者給付」です(失業(離職)しますと、被保険者ではなくなり、被保険者であった者となります)。
また、一般被保険者が失業して、基本手当の支給を受けることができる資格(=これを「受給資格」といいます)を有する場合、この受給資格を有する者を「受給資格者」といいます。
「一般被保険者の求職者給付」の4種類は、受給資格者に支給されます(詳細は、すぐ後で述べます)。
ちなみに、「一般被保険者の求職者給付」という表現は、雇用保険法の第3章〔=失業等給付〕の第2節のタイトルによるものです。
行政手引では、「一般被保険者に係る求職者給付」と表現することもあります。
※【ゴロ合わせ】
・「給食の、一番、基本は、スープの濃縮」
(子供の給食を作っている調理師さんをイメージして下さい。一番のかなめは、スープの濃縮具合です。)
→「給食(=「求職」者給付)の、一番(=「一般」被保険者の求職者給付)、基本(=「基本」手当)は、
スープ(=「傷病」手当)の、濃(=技「能」習得手当)、縮(=寄「宿」手当)」
また、技能取得手当は、受講手当と通所手当の2つからなりますが、これもゴロで覚えます。
※【ゴロ合わせ】
・「技能の術(じゅつ)」
(技能は、一種の術ということです。)
→「技能(=「技能」習得手当)の、じゅ(=「受」講手当)、つ(=「通」所手当)」
(3)就職促進給付
就職促進給付の種類もゴロ合わせで覚えます。失業等給付の中で、最も名称を覚えにくく混乱しやすい給付です。試験でも、名称が出題されています。
※【ゴロ合わせ】
・「就職した、修行僧(しゅぎょうそう)は、再修行のしたくに、行く(きゅ)」
(坊さん〔お寺〕に就職した者が、修行のため出かける支度をしています。)
→「就職(=「就職」促進給付)した、修行僧(=「就業促」進手当)は、
再(=「再」就職手当)、修行(=「就業」促進定着手当)の、したく(=常用就職「支度」手当)に、
行(=「移」転費)、きゅ(=「求」職活動支援費)」
※ 特に、「就職促進給付」と「就業促進手当」が紛らわしいので注意して下さい。
なお、「求職活動支援費」は、以前は「広域求職活動費」でしたが、平成29年1月1日施行の改正により名称及び内容が見直されました(求職活動支援費のゴロ合わせ等は、当該個所でご紹介します)。
以上をゴロ合わせにより押さえておけば、失業等給付の種類については大丈夫なはずです。
§2 失業等給付等の種類
次に、失業等給付等の各給付について、趣旨等を押さえておきます。
〔Ⅰ〕失業等給付の種類
「失業等給付等」は、「失業等給付」と「育児休業給付」からなりますが、前者の「失業等給付」は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付とされます(第10条第1項)。次の図の通りです。
〔Ⅱ〕失業等給付等の各給付の概観
失業等給付等の各給付の概要を見ます。
〔A〕失業等給付
〔1〕求職者給付
○趣旨
「求職者給付」とは、被保険者が失業した場合に、その失業期間中(求職活動中)の生活の安定(所得保障)を図ることを目的とする保険給付です。
求職者給付は、被保険者が失業した場合に支給されるところ、「失業」とは、「被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること」をいいます(第4条第3項。こちら以下)。
従って、求職者給付は、単に職業に就けない場合に広く支給されるものではなく、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず就職できない場合に支給されるものであり、よって、求職者給付は求職活動をする間の生活の安定(所得保障)を図ることを目的とすることとなります。求職活動を予定していない者には支給されません。
〈1〉一般被保険者の求職者給付
一 総論
求職者給付のうち、「一般被保険者の求職者給付」は、「基本手当、技能習得手当(受講手当と通所手当からなります)、寄宿手当及び傷病手当」の4種類です(第10条第2項)。
(以下の用語の説明については、すでに触れたものがあります。)
「一般被保険者の求職者給付」は、「一般被保険者が失業した場合に支給される求職者給付」であり、換言しますと、「一般被保険者であった者に支給される求職者給付」です(既述のように、失業(離職)しますと、被保険者ではなくなり、被保険者であった者となります)。
なお、一般被保険者が失業して、基本手当の支給を受けることができる資格(=これを「受給資格」といいます)を有する場合、この受給資格を有する者を「受給資格者」といいます。
「一般被保険者の求職者給付」の4種類は、受給資格者に支給されます。
この受給資格の要件(受給資格の決定を受けるための要件)は、次の通りです(第13条)。
(ここは、後に詳しく学習しますので(ゴロ合わせで覚えます)、ここでは流し読みして下さい。)
〇 受給資格の要件:
(1)被保険者(一般被保険者)が失業した場合であること。
※ 失業とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいいます(第4条第3項)。
上記(1)について、具体的には、①一般被保険者が離職による資格喪失の確認を受けたこと、及び②労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることが必要です。
(2)算定対象期間(原則として、離職日以前の2年間)に、被保険者期間が通算して12箇月以上であること(原則。例外として、特定受給資格者及び特定理由離職者については、離職日以前の1年間(原則)に被保険者期間が通算して6箇月以上であれば足ります)。 |
二 各論
(一)基本手当
◆基本手当は、一般被保険者が失業した場合に、その失業期間中(求職活動中)の生活の安定(所得保障)を図ることを目的として支給される基本的な求職者給付です。
いわゆる失業手当といわれるものです。
基本手当の支給を受ける「要件」(支給要件)としては、上記の通り、受給資格を有する者であることが必要であり、一定の「手続」(受給手続。広義では、ここまでが「要件」となります)を経て受給資格の決定を受けます。
そして、基本手当の「効果(広義)」として、基本手当は、「受給期間」内の失業の認定を受けた日について、「基本手当の日額」(=「賃金日額」× 給付率)を、「所定給付日数」分を限度として支給されます(第20条等)。
即ち、基本手当は、失業の認定を受けた日について、基本手当の日額を単位として支給されますが、
支給日数の限度(制限)として、「所定給付日数」があり、
支給期間の限度(制限)として、「受給期間」(=原則として、離職日の翌日から起算して1年)があると押さえると、分かりやすいです。
上記のように、失業等給付についても、「支給要件」、「手続」、「効果(支給額や支給期間等)」の視点から整理します(「手続」と「効果」は、保険給付によっては逆の順番で検討することもあります)。
(二)傷病手当
◆傷病手当(第37条)は、受給資格者が求職の申込み後に傷病のため職業に就くことができない場合に、基本手当の支給を受けられない日について、基本手当に代えて支給される求職者給付です。
基本手当は失業の認定を受けた日について支給されますが、失業の認定は、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること(=失業)を認定するものです。
そこで、傷病のため就職不能の場合には、労働の能力を有していないとして失業の認定を受けられず、従って、基本手当の支給を受けられないのです。
傷病手当は、このように基本手当の支給を受けられない期間について、基本手当に代えて傷病手当を支給することにより、その傷病期間中の生活の安定(所得保障)を図る趣旨です。
よって、傷病手当は、基本手当を補完する機能があります。
(三)技能取得手当
◆技能習得手当(第36条第1項)は、受給資格者が、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける場合に、基本手当に加えて、当該訓練等を受ける期間について支給される求職者給付です。
受講手当(教材費等の補助の趣旨です)と通所手当(通所の交通費を補助する趣旨です)があります。
(四)寄宿手当
◆寄宿手当(第36条第2項)は、受給資格者が、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるため、生計維持関係にある同居の親族と別居して寄宿する場合に、基本手当に加えて支給される求職者給付です。
寄宿費の補助の趣旨です。
◯過去問:
・【平成21年問7A】
設問:
一般被保険者の求職者給付は、基本手当、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当の4つである。
解答:
正しいです(第10条第2項)。
三 求職者給付における就職の努力(第10条の2)
◆求職者給付の支給を受ける者については、誠実・熱心に求職活動を行って就職するよう努力義務が課されています(第10条の2)。
次の条文は、十分読み込んで下さい(選択式が平成16年度(こちら)に出題されていますが、出題から年数は経っており、努力義務規定であることなどに注意しておく必要があります)。
※ その後、平成29年度の択一式で出題されましたが、引き続き、条文をチェックしておいて下さい。
【条文】
第10条の2(就職への努力) 求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならない。 |
【選択式 平成16年度 A=「職業能力の開発及び向上」、B=「誠実かつ熱心」(こちら)】/
【過去問 平成19年問7C(こちら)】/【平成29年問1A(こちら)】
〇過去問:
・【選択式 平成16年度】
設問:
1 雇用保険法の規定によれば、求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ A を図りつつ、 B に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならない。
選択肢(本問に関連するもののみ)
①給付費用の削減 ③継続的 ⑤自己啓発の努力 ⑧職業能力の開発及び向上 ⑨誠実かつ熱心 ⑩積極的かつ計画的 ⑪地域的又は全国的 ⑫都道府県又は市町村の行う事業の活用
解答:
A=⑧「職業能力の開発及び向上」(第10条の2)
B=⑨「誠実かつ熱心」(同上)
・【平成19年問7C】
設問:
高年齢求職者給付金の支給を受ける者は、雇用保険法第10条の2が定める「必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努め」る義務を負わない。
解答:
誤りです。
第10条の2の「就職への努力」の規定は、「求職者給付」の支給を受ける者を対象としているものです。
「高年齢求職者給付金」の支給を受ける者(高年齢受給資格者)も「求職者給付」の支給を受ける者にあたりますから、「就職への努力」の規定が適用されます(求職者給付の中に、高年齢求職者給付金も含まれていることを忘れないようご注意です)。
・【平成29年問1A】
設問:
求職者給付の支給を受ける者は、必要に応じ職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならない。
解答:
正しいです。
第10条の2そのままの出題です。
前記の通り、「職業能力の開発及び向上」及び「誠実かつ熱心」という2つのキーワードが【選択式 平成16年度(こちら)】に出題されており、また、択一式の【平成19年問7C(前掲のこちら)】の類問もあります。
なお、努力義務に過ぎない点には注意です。
以上が、一般被保険者の求職者給付の概観となります。続いて、他の被保険者の求職者給付について見ます。
〈2〉高年齢被保険者の求職者給付 = 高年齢求職者給付金
◆高年齢被保険者の求職者給付は、高年齢求職者給付金の1種類のみです(第37条の2)。
※ 一般被保険者以外の被保険者に係る求職者給付は、それぞれ1種類のみです(ただし、日雇労働求職者給付金は、普通給付と特例給付に分かれます)。
即ち、高年齢被保険者が失業した場合は、求職者給付として高年齢求職者給付金が支給されます。
この高年齢求職者給付金の支給を受けることができる資格(高年齢受給資格)を有する者を、高年齢受給資格者といいます。
高年齢求職者給付金は、一時金です。
以前は、高年齢継続被保険者(同一事業主の適用事業に65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日において雇用されている被保険者)が失業した場合でないと、高年齢求職者給付金は支給されませんでした。
そして、高年齢継続被保険者には一度しか該当しないことから、高年齢求職者給付金も一度の支給に限定されました。
しかし、高年齢者に対する雇用保険法による保護を強化する見地から、平成29年1月1日施行の改正(【平成28.3.31法律第17号】)により、65歳以後に新たに雇用された者についても雇用保険法の適用を認めることに見直されました。
即ち、65歳以上の被保険者は高年齢被保険者とされ(第37条の2第1項)、高年齢被保険者が失業した場合は高年齢求職者給付金の支給対象とされました。
この改正後は、高年齢被保険者とは、単に65歳以上の被保険者であればよいため、一度、離職して高年齢求職者給付金の支給を受けても、その後、再度就職した場合には、再び「高年齢被保険者」の要件に該当し得ます。
従って、その後、離職した場合には、(支給要件を満たす限り)さらに高年齢求職者給付金の支給を受けられることとなりました。
このように、改正後の高年齢求職者給付金は、その支給要件に該当しさえすれば、何度でも支給されることに注意です。
また、高年齢被保険者は、就職促進給付(常用就職支度手当、移転費及び求職活動支援費のみ)、教育訓練給付並びに雇用継続給付の支給対象とされています。
【令和4年度試験 改正事項】
なお、特例高年齢被保険者について支給される給付の種類も、一般の高年齢被保険者の場合と同様です(こちら以下でみました)。
特例高年齢被保険者は、所定の要件のもとで任意加入することによって、「高年齢被保険者となる」ものですから(第37条の5第1項柱書)、特例高年齢被保険者の取扱いも、基本的には高年齢被保険者と同様になります。
なお、前述の通り、高年齢受給資格者とは、高年齢求職者給付金の支給を受けることができる資格を有する者をいいますから(第37条の2第1項かっこ書)、特例高年齢被保険者(であった者)も(高年齢求職者給付金の支給を受けられるため)高年齢受給資格者に含まれます。
以下のこのページでは、高年齢被保険者のみに言及し、特例高年齢被保険者には言及しないことが多いです。
以上については、「被保険者の種類」のこちら以下でより詳しい概要を説明しました。
なお、以前は、徴収法において、高年齢労働者(保険年度の初日(4月1日)において64歳以上の労働者)に係る雇用保険料の納付は免除されていましたが(改正前徴収法第11条の2等)、令和2年度からは、高年齢労働者についても雇用保険料が徴収されています(詳しくは、徴収法のこちら以下です)。
一般被保険者以外の被保険者に係る求職者給付金については、基本手当の仕組みをベースにしたうえで、それとの異同を考慮すると整理しやすいです(ただし、日雇労働被保険者に係る日雇労働求職者給付金は、特殊性が強いです)。
〈3〉短期雇用特例被保険者の求職者給付 = 特例一時金
◆短期雇用特例被保険者の求職者給付は、特例一時金の1種類のみです(第39条、第40条)。
即ち、短期雇用特例被保険者が失業した場合は、求職者給付として特例一時金が支給されます。
この特例一時金の支給を受けることができる資格(特例受給資格)を有する者を、特例受給資格者といいます。
特例一時金は、その名称の通り、一時金です(ただし、例外として、特例受給資格者が、特例一時金の支給を受ける前に、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける場合は、当該訓練等の期間中に限り、一般の受給資格者の求職者給付が支給されます)。
短期雇用特例被保険者は、季節的に雇用される者であるため、短期間での失業が繰り返されることが想定されますから、原則として一時金の支給に留めています(そして、特例受給資格者の常用労働化を促進する見地から、安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける場合には特例を設けたものです)。
〈4〉日雇労働被保険者の求職者給付 = 日雇労働求職者給付金
◆日雇労働被保険者の求職者給付は、日雇労働求職者給付金です(第45条)。
日雇労働求職者給付金には、いわゆる普通給付と特例給付があります。
特例給付は、日雇労働被保険者が一定期間継続的な就労と継続的な失業をするような場合に、普通給付における支給要件、受給手続及び支給日数等では十分保護できないことを考慮して、その実態に即した保護をしようとする制度です。
日雇労働求職者給付金の支給を受けることができる資格(日雇受給資格)を有する者を、日雇受給資格者といいます。
日雇労働求職者給付金は一時金ではなく、例えば、普通給付の場合は、失業の認定を受けた日について、一定の限度で支給されます。
日雇労働求職者給付金については、基本手当等と異なる部分が多く、特殊性が強いです。
これは、日雇労働被保険者の場合、事業主や就労場所が日常的に変動すること(不特定多数の事業主に雇用されます)、就労が非継続的であること(日々失業が繰り返される等)といった特殊性があることによります。
以上で、求職者給付の概観は終わります。続いて、就職促進給付の概観です。
〔2〕就職促進給付
〇趣旨
就職促進給付は、被保険者が失業した場合に、その再就職を促進・援助することを目的とする失業等給付です。
【平成29年度試験 改正事項】
就職促進給付は、「就業促進手当、移転費及び求職活動支援費」の3種類です(第10条第4項)。
就職促進給付は、似たような名称の給付が多く、また、各給付の支給要件、手続及び効果が類似していること等から、かなり学習しにくい給付です(しかし、試験にはよく出題されます)。
ポイントは、まず、下の図により、各給付の大まかな違いをとらえること、その上で、各給付の「支給要件、手続及び効果」をしっかり記憶すること、その際、就業促進手当においては、再就職手当の支給要件等を記憶し、他の3つはそこから導くようにするとよいことです。
〈1〉就業促進手当
【令和7年度試験 改正事項】
◆就業促進手当は、「再就職手当、就業促進定着手当及び常用就職支度手当」の3種類です(第56条の3参考)。
※ 就業促進定着手当は、再就職手当の支給要件に該当する者について、追加的に一時金を支給するものであるため、再就職手当の延長線上にある保険給付であり、再就職手当の一種です。
従って、就業促進定着手当は独立に考慮せずに(再就職手当(の支給額の問題)として位置付けます)、就業促進手当は「再就職手当及び常用就職支度手当」の2種類であると整理することもできます。
一 再就職手当(第56条の3第3項第1号)
◆再就職手当は、受給資格者が、安定した職業に、早期に再就職した場合に支給されるものです。
この再就職手当(就業促進定着手当も含みます。以下、この一において同様です)は、一般被保険者が失業した場合において早期に再就職をしたときに支給されるものです。
即ち、早期に再就職したため基本手当の支給を受けられなかった分の一部を支給(還元)することにより、再就職の促進を図ろうとする趣旨です(早期に再就職したため、再就職せずに基本手当の支給を受けていた者より過度に支給額が少なくなることを是正するのです)。
再就職手当が、一般被保険者であった者(受給資格者)のみを対象とし、高年齢受給資格者、特例受給資格者及び日雇受給資格者を対象としていない理由は、再就職手当が早期の再就職を促進することを目的としており、そのため基本手当の支給残日数(基本手当の所定給付日数からすでに基本手当等の支給を受けた日数を差し引いた日数)を問題とする必要があるところ(即ち、支給残日数が多い段階で再就職したほど、早期に再就職したことになります)、高年齢受給資格者、特例受給資格者及び日雇受給資格者については、この支給残日数(に準じた日数)を問題とすることができないことにあります(高年齢求職者給付金や特例一時金は一時金であるため、支給残日数は問題となりませんし、日雇労働求職者給付金も特殊な求職者給付であり、所定給付日数の制度がありません)。
対して、常用就職支度手当の場合は、後述のように就職困難者を対象としており、就職困難者の保護の見地から、特例受給資格者や日雇受給資格者も対象としています。
【平成29年度試験 改正事項】
なお、高年齢受給資格者は、以前は、就職促進給付のすべての給付の支給対象となりませんでした。
これは、高年齢受給資格者(65歳以上の者です)は、一般に老齢給付(老齢基礎年金、老齢厚生年金等)の受給権を有しますから、再就職の必要が乏しいことが多いこと、また、高年齢者に対する実際の求人も多くないことを考慮したものでした。
しかし、65歳以上の者であっても、低額な老齢給付しか受給できない者や無年金の者も存在しますから、雇用保険法による保護の必要性が少ないとは必ずしもいえないといった認識が強まってきたこと、また、労働力人口の減少や働ける高齢者の増加等に伴い、高齢者に対する求人も増加が予想され、高齢者の求職活動も限定的な例とは見られなくなりつつあること等に鑑み、平成29年1月1日施行の改正(【平成28.3.31法律第17号】)により、65歳以上の被保険者を高年齢被保険者とするとともに、高年齢受給資格者について就職促進給付の適用対象を拡大することに改められました。
具体的には、高年齢受給資格者については、就職促進給付のうち、「再就職手当」及び「就業促進定着手当」は支給対象となりません(これらの給付は早期の再就職を目的としているところ、高年齢受給資格者(一時金である高年齢求職者給付金が支給されます)については、早期再就職のバロメーターである支給残日数を問題とすることができないためです)。
その他の就職促進給付である「常用就職支度手当」、「移転費」及び「求職活動支援費」については、早期再就職を趣旨とはしていませんので、高年齢受給資格者についても支給対象となります。
覚え方としては、上記の「就職促進給付」の図(こちら)のうち、「B=常用就職支度手当」以下に配置されている給付は、高年齢受給資格者(を含むすべての受給資格者等)に対して支給されるとイメージして頂くとよろしいです。
二 就業促進定着手当(第56条の3第3項第2号かっこ書)
◆就業促進定着手当は、再就職手当の支給要件に該当する者が、再就職先に6箇月以上雇用され、再就職先での6箇月間の賃金が、離職前の賃金よりも低下した場合に、基本手当の支給残日数の20%を上限として、低下した賃金(差額分)の6箇月分を支給するものです。
平成26年4月1日施行の改正(【平成26.3.31法律第13号】)により新設されました。
再就職時点での賃金低下が早期再就職を躊躇(ちゅうちょ)させる一因となっていると考えられることを踏まえ、再就職を促進する見地から、安定した職業に早期に再就職したため再就職手当を受ける者が、6箇月以上雇用されるときに、再就職手当に加えて、低下した賃金を支給するものです。
再就職手当の支給要件に該当する者について追加的に一時金が支給されるものですから、再就職手当の一種であり、再就職手当の拡充を図るものです。
従って、就業促進定着手当の前に、まずは前提としての再就職手当を十分学習しておく必要があります。
【令和7年度試験 改正事項】
なお、令和7年4月1日施行の改正により、支給額の上限が引き下げられ、一律20%の上限とされました(従来は、40%又は30%)。
つまり、「基本手当日額 × 支給残日数 × 10分の2」が支給額の上限です。
人手不足の状況が今後も一層深刻化することが見込まれる中、賃金の低下が見込まれる再就職にインセンティブを設ける必要性が薄れていることが考慮されたものです。
なお、就業促進手当の全体像を把握するためには、まずは、「就業促進定着手当」を除外した残りの「再就職手当及び常用就職支度手当」を柱に考えるとよいです。その上で、「再就職手当」の一種として「就業促進定着手当」を思い出すと混乱しません。
三 常用就職支度手当(第56条の3第1項第2号)
◆常用就職支度手当は、受給資格者等(=受給資格者、高年齢受給資格者、特例受給資格者又は日雇受給資格者のことです。移転費及び求職活動支援費においても同じです(第56条の3第1項第2号))であって就職困難者(例えば、障害者等です)が、安定した職業に就いた場合に支給されるものです。
※ 以前は、「受給資格者等」には、高年齢受給資格者は含まれていませんでした。
しかし、平成29年1月1日施行の改正(【平成28.3.31法律第17号】)による高年齢被保険者の制度の創設により、高年齢受給資格者についても、常用就職支度手当、移転費及び求職活動支援費が支給されることとなり、「受給資格者等」に含まれることとなりました。
就業促進手当の概観は、以上のとおりです。次に、残りの就職促進給付の概観を見ます。
〈2〉移転費(第58条)
【平成30年度試験 改正事項】
◆移転費は、受給資格者等が、公共職業安定所、特定地方公共団体又は職業紹介事業者の紹介した職業に就くため、又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるため、その住所又は居所を変更する場合に支給されるものです。
安定所等が紹介した就職に就いたり、公共職業訓練等を受けるために住所等を移転した場合に、その移転費用を支給することにより、再就職の促進・援助を図ろうとする趣旨です。
なお、平成30年1月1日施行の改正(【平成29.6.30厚生労働省令第66号】)により、従来、紹介した職業に就く場合は、「公共職業安定所」からの紹介に限定されていたことが改められ、新たに、「特定地方公共団体」及び「職業紹介事業者」から紹介した職業に就く場合も移転費の支給要件を満たすものとされました。
〈3〉求職活動支援費(第59条)
【平成29年度試験 改正事項】
◆求職活動支援費は、受給資格者等が、求職活動に伴い一定の行為(公共職業安定所の紹介による広域求職活動、安定所の職業指導に従って行う職業教育訓練の受講等、又は求職活動を容易にするための役務の利用(面接等又は教育訓練等の受講の間の保育等サービスの利用)をする場合に支給されるものです。
それぞれ、広域求職活動費(こちら以下)、短期訓練受講費(こちら以下)及び求職活動関係役務利用費(こちら以下)といいます(施行規則第95条の2)。
求職活動に伴う費用を援助することによって、その再就職の促進・援助を図ろうとする趣旨です。
平成29年1月1日施行の改正(【平成28.3.31法律第17号】)により、従来の「広域求職活動費」の内容が拡大される形で見直されました。
○過去問:
・【平成18年問6A】
設問:
就職促進給付には、就業促進手当、移転費、広域求職活動費の3つがある。
解答:
誤りです。
本問は、出題当時は正しい内容でした。
しかし、平成29年1月1日施行の改正(【平成28.3.31法律第17号】)により、「広域求職活動費」は「求職活動支援費」に拡大変更されました(第10条第4項)。
よって、現在では本問は誤りです。
・【平成16年問5A(一部補正)】
設問:
就業促進手当には、就業手当、再就職手当、就業促進定着手当及び常用就職支度手当の4つがある。
解答:
本問は、出題当時は、「就業促進手当には、就業手当、再就職手当、常用就職支度手当の3つがある。」とあり、正しい内容でした。
本問では、出題後の平成26年の改正により新設されました「就業促進定着手当」を追加して補正しています。
本問のような出題があった場合は、正誤の判断は、他の肢との関係で行う必要があります。
といいますのは、本問の通り、就職促進手当には、就業促進定着手当も含めて、4種類があると考えることは可能ですが、ただ、就業促進手当は、厳密には、条文上は、3種類であると考えるのが自然ともいえるからです。
即ち、「就業促進定着手当」は、第56条の3の条文上は、独立の就業促進手当とは位置づけられていないともいえます。
つまり、第56条の3第1項では、「就業促進手当は、次の各号のいずれかに該当する者に対して」支給する旨を規定しているところ、この「各号」では、「就業手当」及び「再就職手当」(以上、第1号)並びに「常用就職支度手当」(第2号)の3種類のみを規定しているからです(「就業促進定着手当」は、就業促進手当の支給額を定めた第56条の3第3項において、「再就職手当」の支給額の一環として、同条第3項第2号かっこ書に規定されているに過ぎません)。
結論として、「就業促進定着手当」は、「再就職手当」の支給要件に該当する者について追加的に一時金が支給されるものであり、「再就職手当」の一種であることを押さえておきます。
そして、本問のような出題の正誤については、他の肢との兼ね合いから判断して下さい。
以上で、就職促進給付の概観を終わります。
〔3〕教育訓練給付
一 教育訓練給付は、教育訓練給付金の1種類です(第10条第5項、第60条の2)。
※ ただし、後述のように、暫定措置として、教育訓練支援給付金が存在するため、教育訓練給付は、暫定的に、教育訓練給付金と教育訓練支援給付金の2種類とされています(法附則第11条の2第1項後段)。
【平成29年度試験 改正事項】
教育訓練給付金は、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に、雇用の安定及び就職の促進を図る見地から支給されるものです。
一般被保険者若しくは一般被保険者であった者(以下、「一般被保険者等」ということがあります)又は高年齢被保険者若しくは高年齢被保険者であった者(以下、「高年齢被保険者等」ということがあります)を対象とします(高年齢被保険者等は、平成29年1月1日施行の改正により教育訓練給付対象者に追加されました)。
即ち、教育訓練開始日に一般被保険者若しくは高年齢被保険者である者、又は一般被保険者若しくは高年齢被保険者の資格喪失日から1年(原則)以内に教育訓練開始日がある者を対象としています(以上を「教育訓練給付対象者」といいます)。
従って、後者の場合(一般被保険者又は高年齢被保険者の資格喪失日から1年(原則)以内に教育訓練開始日がある者の場合)は、教育訓練開始日に特例受給資格者又は日雇受給資格者であっても対象となることになります。
以上のように、教育訓練給付金の支給要件においては、失業の有無は問われません(雇用が継続されている者であっても、職業に関する教育訓練を受けてその職業能力を開発・向上させ雇用の安定を図る(例えばリストラされない等)の必要性があるためです)。
ただし、後述の教育訓練支援給付金(平成26年10月1日施行の改正により創設)については、失業者を対象としています。
【令和2年度試験 改正事項】
二 教育訓練給付金は、具体的には、「一般教育訓練に係る教育訓練給付金」(一般教育訓練給付金)、「特定一般教育訓練に係る教育訓練給付金」(特定一般教育訓練給付金)及び「専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金」(専門実践教育訓練給付金)に分かれます。
これらは、支給要件、手続及び効果(支給額)が異なります。
まず、平成26年10月1日施行の改正(【平成26.3.31法律第13号】)により、教育訓練給付金が、一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金に区分されました。
前者の一般教育訓練給付金は、もともとあった教育訓練給付金とほぼ同様です。
即ち、「教育訓練給付対象者」であって、支給要件期間が3年(初めて教育訓練給付金を受ける者は1年)以上である者が、一般教育訓練を受け、修了した場合を対象とします(これが支給要件です)。
「支給要件期間」とは、教育訓練開始日(基準日)以前に被保険者であった期間を通算した期間のことです。
支給額は、受講費用の100分の20(上限は10万円)となります。
【平成30年度試験 改正事項】
後者の専門実践教育訓練給付金は、専門的・実践的な教育訓練を受けることによって中長期的な豊かなキャリア形成を支援する趣旨です。
即ち、「教育訓練給付対象者」であって、支給要件期間が3年(初めて教育訓練給付金を受ける者は2年)以上である者が、専門実践教育訓練を受け、修了した場合(当該訓練を受けている場合も含みます。即ち、受講期間中も支給されます)を対象とするものです(支給要件)。
※ なお、以前は、専門実践訓練給付金における支給要件期間の原則は、「10年以上」でしたが、平成30年1月1日施行の改正により、「3年以上」に緩和されました。
手続としては、受講開始前の手続が必要となるという特徴があります(受講開始前に当該専門実践教育訓練の受給資格の確認を受ける手続をとることが必要です)。
支給額は、支給単位期間(専門実践教育訓練開始日から6箇月(原則)ごとに区分した1の期間)について受講費用の100分の50(上記の者が当該専門実践教育訓練に係る資格の取得等をし、かつ、一般被保険者として雇用されたような場合は、100分の70(既に支給を受けた額(100分の50相当額)を減じて得た額が支給されます)となります(なお、いずれの場合も上限額があります)。
※ 支給額についても、平成30年1月1日施行の改正があり、専門実践教育訓練の支給額が引き上げられました(給付率が従来の40%から50%に引き上げられ、また、上限額も引き上げられました)。
【令和2年度試験 改正事項】
その後、令和元年10月1日施行の施行規則の改正(【平成31.3.8厚生労働省令第19号】)により、一般教育訓練給付金から独立する形で、特定一般教育訓練給付金が創設されました。
「リカレント教育」(学び直し)の重要性などを踏まえて、速やかな再就職と早期のキャリア形成に資する教育訓練を対象とする趣旨です。
一般教育訓練給付金の支給要件をベースとしつつ、ITスキルなどキャリアアップ効果の高い講座の受講を対象としたものであり、支給率や上限額が一般教育訓練給付金の2倍となっていること、専門実践教育訓練給付金の場合と同様に、受講開始前の手続が必要であることが特徴です。
これらの一連の改正に伴い、教育訓練給付金は、雇用保険法における失業等給付等の中で最も複雑な給付となってしまいました。
まずは、各給付金の支給要件、手続及び効果(支給額等)の概要を押さえてから、細部の知識に入って下さい。
三 なお、上述のように、暫定的な制度として、教育訓練支援給付金もあります(平成26年10月1日施行の改正(【平成26.3.31法律第13号】))。
支給要件は、専門実践教育訓練を受けている者であって、当該専門実践教育訓練開始日に45歳未満の離職者(当該教育訓練開始日に、一般被保険者の資格喪失日から1年以内にある者に限ります)であり、令和7年3月31日以前に当該教育訓練を開始したものであること等です。
失業者を支給対象としています。
【平成30年度試験 改正事項】
支給額は、1支給単位期間(専門実践教育訓練開始日から2箇月(原則)ごとに区分した一の期間)について、「基本手当日額 × 100分の80 × 支給単位期間における失業の認定を受けた日数(原則)」となります。
※ 支給額についても、以前は、給付率が50%でしたが、平成30年1月1日施行の改正により、80%に引き上げられました。
○過去問:
・【平成14年問1A(一部補正)】
設問:
雇用保険では、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行う失業等給付のほか、失業の有無を問わず労働者の自発的な教育訓練の受講を支援する教育訓練給付と、雇用安定及び能力開発のいわゆる二事業を行っている。
解答:
誤りです。
教育訓練給付も「失業等給付」の1つです(第10条第1項)。
本問では「失業等給付のほか」に教育訓練給付がある旨の出題となっています。
なお、雇用保険における給付としては、失業等給付のほか育児休業給付があります。
以上、教育訓練給付でした。次は、雇用継続給付の概要です。
〔4〕雇用継続給付
【令和2年度試験 改正事項】
雇用継続給付は、労働者について雇用の継続が困難となる事由(高年齢又は介護)が生じた場合に、その雇用の安定(継続)を図るために支給されるものです。
雇用継続給付は、次の2種類です(第10条第6項)。
〇雇用継続給付:
〈1〉高年齢雇用継続給付
➡ 高年齢雇用継続基本給付金(第61条)及び高年齢再就職給付金(第61条の2)の2種類があります。
〈2〉介護休業給付 ➡ 介護休業給付金(第61条の4) |
※ 以前は、「雇用継続給付」の中に、「育児休業給付」も規定されていましたが(改正前の「第3章第6節第2款」。第61条の4以下)、令和2年4月1日施行の改正により、この「第3章第6節第2款」が削られ、新たに、第3章の2として「育児休業給付」が設けられました(第61条の6、第61条の7)。内容的には、従来の育児休業給付と基本的に同様です)。
また、介護休業給付は、従来の第61条の6から第61条の4に(第61条の7は第61条の5に)繰上げられました。
これにより、育児休業給付は、「失業等給付」としての「雇用継続給付」ではなくなりましたが、育児休業給付が被保険者(労働者)の雇用を継続させることを目的としていることには変わりはなく、実質的には、雇用継続給付としての実態を保有しています。
この雇用継続給付(及び育児休業給付)も、学習するのが厄介な分野であり、「要件、手続及び効果」をしっかり理解して記憶することが肝要です。
まずは、次の図により全体構造を押さえて下さい。
〈1〉高年齢雇用継続給付
○趣旨
高年齢雇用継続給付は、60歳到達月から65歳到達月までの賃金月額(即ち、60歳到達月以後(60歳台前半)の賃金月額)が、60歳到達時等に比べて低下した場合(75%未満に低下したとき)に、その者の雇用継続を確保するために支給される雇用継続給付です。
つまり、60歳以後になりますと、賃金が引き下げられることも多く、かかる場合に当該高年齢者の離職・失業を防止するために賃金の一部を補助することによって、その雇用の継続を図る趣旨です。
高年齢雇用継続給付には、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類があります。
両者の名称は、求職者給付として「高年齢求職者給付金」が存在することもあって混乱しがちです。
「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の両者の名称には、「高年齢」が入る点で共通します。
これは、「『高年齢』雇用継続給付」の名称から思い出します。
そこで、この両者の名称は、「高年齢」を除外した残りの部分である「雇用継続・基本給付金」か「再就職給付金」かに注目して覚えればよいです。
前者の給付が基本であるため、「基本」給付金であり、後者は再就職した場合に支給されるものであるため「再就職」給付金となります。
高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金との違いは、基本的には、60歳到達月以後も雇用継続されている場合か(=高年齢雇用継続基本給付金)、それとも、離職して基本手当の支給を受けた受給資格者が60歳到達月以後に再就職した場合か(=高年齢再就職給付金)にあります。
前者の高年齢雇用継続基本給付金の場合、いったん離職して60歳到達月以後に再就職したときであっても、基本手当等の支給を受けていない等の要件を満たせば、その支給対象となることがあるため(詳細は、のちに本文でみます)、高年齢雇用継続基本給付金の支給要件の該当性を判断する際には、離職して基本手当等の支給を受けたのかどうか等にも注意する必要はあります。
ただ、高年齢雇用継続基本給付金の典型は、上記のように、60歳到達月以後も雇用継続されている場合ですので、この典型的イメージは持つ必要があります(その上で、例外もあると押さえます)。
一 高年齢雇用継続基本給付金(第61条)
◆高年齢雇用継続基本給付金は、原則として、60歳到達月以後も雇用継続されている被保険者について、60歳到達月以後に賃金が低下した場合に、雇用の継続を確保するため支給される高年齢雇用継続給付です。
より細かく表現しますと、高年齢雇用継続基本給付金は、算定基礎期間に相当する期間(被保険者であった期間と考えて下さい)が5年以上である被保険者(一般被保険者と高年齢被保険者(※1)のみが対象となります)について、支給対象月(基本的には、60歳到達月から65歳到達月までの月のこと)に支払われた賃金の額(即ち、支給対象月に支払われた賃金月額)が、みなし賃金月額(60歳到達時等の賃金月額。※2)の75%未満となった場合に、その支給対象月に支給されるものです。
なお、上記の「算定基礎期間」は基本手当の個所で学習するものであり、以上の内容を正確に理解するためには基本手当の学習が必要となります。ここでは、大まかに眺める程度で十分です。
※1 支給対象者:
高年齢雇用継基本続給付金(高年齢再就職給付金も同様)の対象となる者は、一般被保険者と高年齢被保険者のみです。
ただし、高年齢被保険者が高年齢雇用継続給付の支給対象となるのは、65歳到達月のみです(この点は、改正前の「高年齢継続被保険者」の場合も同様でした)。
高年齢被保険者は65歳以上の者を対象としているところ、高年齢雇用継続給付は65歳到達月まで支給されるものだからです。
従って、高年齢雇用継続給付は、基本的には、一般被保険者を対象としていることになります。
※2 みなし賃金月額:
「みなし賃金月額」とは、おおまかには60歳到達時等の賃金月額のことです。
即ち、「『みなし賃金日額』×30」を「みなし賃金月額」といいます(「みなし賃金月額」は、施行規則(施行規則第101条の4第1項第1号)で使用される表現です)。
より正確に表現しますと、「みなし賃金日額」とは、被保険者を受給資格者とみなして(本件被保険者は、雇用継続されている者であり(原則)、失業している受給資格者ではありませんから、「みなす」ことにしています)、当該被保険者が60歳に達した日(当該時点で被保険者であった期間が5年未満の場合は、5年に達した日)を離職日とみなして、基本手当の賃金日額(=原則として、算定対象期間(原則として、離職日以前の2年間)において被保険者期間として計算された最後の6箇月間に支払われた賃金総額を180で除して得た額)の規定を適用した場合に算定される賃金日額に相当する額のことをいいます。
これに30を乗じて得た額が、「みなし賃金月額」です。
つまり、基本的には、「みなし賃金月額」とは、60歳到達日以前の6箇月間の賃金月額を平均した賃金の月額のことです。
この「みなし賃金月額」に比べ、「60歳到達月以後の賃金月額」が75%未満に低下した月がある場合に、高年齢雇用継続基本給付金の支給対象となります。
二 高年齢再就職給付金(第61条の2)
◆高年齢再就職給付金は、離職して基本手当の支給を受けた受給資格者が、60歳到達月以後に安定した職業に再就職して被保険者(一般被保険者及び高年齢被保険者です)となった場合において、離職時より賃金が低下(75%未満に低下)したときに支給される高年齢雇用継続給付です。
ポイントは、基本手当の支給を受けたことがある受給資格者であること、60歳到達日以後に再就職したこと、及び離職して基本手当を受けた場合であるため、当該基本手当に係る賃金月額をそのまま利用し(即ち、高年齢雇用継続基本給付金のように「みなし賃金月額」は必要ありません)、当該離職時の賃金月額(受給した基本手当に係る賃金月額です)に比べて65歳到達月以後の賃金月額が75%未満に低下したときに支給されるものであることなどです。
〈2〉介護休業給付
介護休業給付は、介護休業給付金の1種類です(第10条第6項第2号、第61条の4)。
(介護休業給付という用語は、雇用保険法の第3章(失業等給付)の第6節(雇用継続給付)の第2款のタイトルとして出てきます。)
【平成29年度試験 改正事項】
一般被保険者又は高年齢被保険者が、対象家族を介護するための休業(介護休業)をした場合に支給される雇用継続給付です。
育児介護休業法により、介護休業の取得は認められますが、事業主に介護休業期間中の賃金の支払を義務づける法令上の規定はなく、介護休業期間中の事業主の賃金の支払は任意的なものであることから(ノーワークノーペイのルールないし民法第536条第1項の危険負担・債務者主義。詳しくは、労働一般のこちら)、介護休業期間中の所得保障を図ることにより、介護休業の取得を容易化するとともに介護休業者の失業を防止しその雇用の継続を図る趣旨です。
平成28年の改正により、介護休業給付金の支給額が、当分の間、67%に引き上げられ(平成28年8月1日施行)、また、同改正による育児介護休業法の改正に伴い、介護休業の分割取得や半日単位の取得が可能となりました(平成29年1月1日施行)。
以上が、「失業等給付」でした。
最後に、「失業等給付等」である「育児休業給付」を見ます。
〔B〕育児休業給付
【令和2年度 令和5年度試験 改正事項】
育児休業給付は、育児休業給付金及び出生時育児休業給付金の2種類です(第61条の6第1項)。
育児休業給付は、令和2年4月1日施行の改正により、失業等給付から分離されました。
そして、従来は、育児休業給付は、育児休業給付金の1種類でしたが、令和4年10月1日施行の改正により、育児介護休業法において「出生時育児休業」が創設されたことに伴い、雇用保険法の育児休業給付においても「出生時育児休業給付金」が新設されました。
【平成29年度 平成30年度 令和5年度試験 改正事項】
育児休業給付金は、一般被保険者又は高年齢被保険者が、1歳未満(例外として、1歳2か月、1歳6箇月又は2歳未満)の子(特別養子縁組の監護期間にある子等も含みます)に係る育児休業をした場合に支給される給付です(第61条の7)。
また、出生時育児休業給付金は、一般被保険者又は高年齢被保険者が、その子の出生後8週間以内(原則)に4週間以内の期間を定めて当該子を養育するための休業(当該被保険者が出生時育児休業給付金の支給を受けることを希望する旨を公共職業安定所長に申し出たものに限ります。これを「出生時育児休業」といいます)をした場合に支給される給付です(第61条の8)。
育児休業給付の趣旨は、上記の介護休業給付とパラレルです。
即ち、育児介護休業法により、育児休業(及び出生時育児休業。以下、この〔B〕において同じです)の取得は認められますが、育児休業期間(及び出生時育児休業期間。以下、この〔B〕において同じです)中の事業主の賃金の支払は任意的なものであることから、育児休業期間中の所得保障を図ることにより、育児休業の取得を容易化するとともに育児休業者の失業を防止しその雇用の継続を図る趣旨です。
なお、出生時育児休業は、子の出生直後の時期における男性の育児休業の取得の促進を図る趣旨から、育児介護休業法において新設されたものです。
出生時育児休業給付金は、特有の部分を除いては、基本的に育児休業給付金の仕組みがベースとなっています。
育児休業給付金及び出生時育児休業給付金は、一般被保険者及び高年齢被保険者のみを対象とします(第61条の7第1項かっこ書。これは、介護休業給付も同様です)。
育児休業給付金の支給額は、原則として、1支給単位期間(原則として、休業開始日から将来に向かって1箇月ごとに区分した各期間のこと)について、休業開始時賃金日額(育児休業開始日の前日を離職日とみなして算定した賃金日額)に支給日数(支給単位期間の区分に応じて定める日数。原則として30日)を乗じて得た額の50%(育児休業開始日から起算して当該育児休業給付金の支給に係る休業日数が通算して180日に達するまでの間に限り、67%)相当額です(第61条の7第4項)。
出生時育児休業給付金の支給額は、原則として、休業開始時賃金日額に支給日数(出生時育児休業ごとに、当該出生時育児休業開始日から終了日までの日数を合算して得た日数。28日が上限)を乗じて得た額の67%です(第61条の8第4項。育児休業給付金のように、「支給単位期間」の概念はありません)。
以上で、失業等給付等の内容の概観の説明を終わります。
次のページからは、求職者給付に入ります。