令和4年度 雇用保険法
令和4年度の雇用保険法の本試験問題のインデックスを掲載します。
リンク先に本試験問題及びその解説を掲載しています。
択一式
○【問1】=特例高年齢被保険者に関する問題:
▶特例高年齢被保険者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(特例高年齢被保険者が1の適用事業を離職した場合に支給される高年齢求職者給付金の賃金日額は、当該離職した適用事業において支払われた賃金のみにより算定された賃金日額である。)
(特例高年齢被保険者が同じ日に1の事業所を正当な理由なく自己の都合で退職し、他方の事業所を倒産により離職した場合、雇用保険法第21条の規定による待期期間の満了後1か月以上3か月以内の期間、高年齢者求職者給付金を支給しない。)
(特例高年齢被保険者が1の適用事業を離職したことにより、1週間の所定労働時間の合計が20時間未満となったときは、特例高年齢被保険者であった者がその旨申し出なければならない。)
(特例高年齢被保険者の賃金日額の算定に当たっては、賃金日額の下限の規定は適用されない。)
(2の事業所に雇用される65歳以上の者は、各々の事業における1週間の所定労働時間が20時間未満であり、かつ、1週間の所定労働時間の合計が20時間以上である場合、事業所が別であっても同一の事業主であるときは、特例高年齢被保険者となることができない。)
○【問2】=適用事業に関する問題:
▶適用事業に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(法人格がない社団は、適用事業の事業主とならない。)
(雇用保険に係る保険関係が成立している建設の事業が労働保険徴収法第8条の規定による請負事業の一括が行われた場合、被保険者に関する届出の事務は元請負人が一括して事業主として処理しなければならない。)
(事業主が適用事業に該当する部門と暫定任意適用事業に該当する部門とを兼営する場合、それぞれの部門が独立した事業と認められるときであっても当該事業主の行う事業全体が適用事業となる。)
(日本国内において事業を行う外国会社(日本法に準拠してその要求する組織を具備して法人格を与えられた会社以外の会社)は、労働者が雇用される事業である限り適用事業となる。)
(事業とは、経営上一体をなす本店、支店、工場等を総合した企業そのものを指す。)
○【問3】=被保険者の届出に関する問題:
▶被保険者の届出に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(事業主は、その雇用する被保険者を当該事業主の1の事業所から他の事業所に転勤させた場合、両事業所が同じ公共職業安定所の管轄内にあっても、当該事実のあった日の翌日から起算して10日以内に雇用保険被保険者転勤届を提出しなければならない。)
(事業主は、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出する所定の資格取得届を、年金事務所を経由して提出することができる。)
(事業主は、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなったことについて、当該事実のあった日の属する月の翌月10日までに、雇用保険被保険者資格喪失届に必要に応じ所定の書類を添えて、その事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない。)
(事業年度開始の時における資本金の額が1億円を超える法人は、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者となったことについて、資格取得届に記載すべき事項を、電気通信回線の故障、災害その他の理由がない限り電子情報処理組織を使用して提出するものとされている。)
(事業主は、59歳以上の労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなるとき、当該労働者が雇用保険被保険者離職票の交付を希望しないときでも資格喪失届を提出する際に雇用保険被保険者離職証明書を添えなければならない。)
○【問4】=所定給付日数に関する問題:
▶次の①から④の過程を経た者の④の離職時における基本手当の所定給付日数として正しいものはどれか。
①29歳0月で適用事業所に雇用され、初めて一般被保険者となった。
②31歳から32歳まで育児休業給付金の支給に係る休業を11か月間取得した。
③33歳から34歳まで再び育児休業給付金の支給に係る休業を12か月間取得した。
④当該事業所が破産手続を開始し、それに伴い35歳1月で離職した。
A 90日
B 120日
C 150日
D 180日
E 210日
○【問5】=高年齢雇用継続給付に関する問題:
▶高年齢雇用継続給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(60歳に達した被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。)であって、57歳から59歳まで連続して20か月間基本手当等を受けずに被保険者でなかったものが、当該期間を含まない過去の被保険者期間が通算して5年以上であるときは、他の要件を満たす限り、60歳に達した日の属する月から高年齢雇用継続基本給付金が支給される。)
(支給対象期間の暦月の初日から末日までの間に引き続いて介護休業給付の支給対象となる休業を取得した場合、他の要件を満たす限り当該月に係る高年齢雇用継続基本給付金を受けることができる。)
(高年齢再就職給付金の支給を受けることができる者が同一の就職につき再就職手当の支給を受けることができる場合、その者の意思にかかわらず高年齢再就職給付金が支給され、再就職手当が支給停止となる。)
(高年齢雇用継続基本給付金の受給資格者が、被保険者資格喪失後、基本手当の支給を受けずに8か月で雇用され被保険者資格を再取得したときは、新たに取得した被保険者資格に係る高年齢雇用継続基本給付金を受けることができない。)
(高年齢再就職給付金の受給資格者が、被保険者資格喪失後、基本手当の支給を受け、その支給残日数が80日であった場合、その後被保険者資格の再取得があったとしても高年齢再就職給付金は支給されない。)
○【問6】=育児休業給付に関する問題:
▶育児休業給付に関する次のアからオの記述のうち、正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。
なお、本問において「対象育児休業」とは、育児休業給付金の支給対象となる育児休業をいう。
(保育所等における保育が行われない等の理由により育児休業に係る子が1歳6か月に達した日後の期間について、休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合、延長後の対象育児休業の期間はその子が1歳9か月に達する日の前日までとする。)
(育児休業期間中に育児休業給付金の受給資格者が一時的に当該事業主の下で就労する場合、当該育児休業の終了予定日が到来しておらず、事業主がその休業の取得を引き続き認めていても、その後の育児休業は対象育児休業とならない。)
(産後6週間を経過した被保険者の請求により産後8週間を経過する前に産後休業を終了した場合、その後引き続き育児休業を取得したときには、当該産後休業終了の翌日から対象育児休業となる。)
(育児休業の申出に係る子が1歳に達した日後の期間について、児童福祉法第39条に規定する保育所等において保育を利用することができないが、いわゆる無認可保育施設を利用することができる場合、他の要件を満たす限り育児休業給付金を受給することができる。)
(育児休業を開始した日前2年間のうち1年間事業所の休業により引き続き賃金の支払を受けることができなかった場合、育児休業開始日前3年間に通算して12か月以上のみなし被保険者期間があれば、他の要件を満たす限り育児休業給付金が支給される。)
○【問7】=雇用保険制度に関する問題:
▶雇用保険制度に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(雇用保険法では、疾病又は負傷のため公共職業安定所に出頭することができなかった期間が15日未満である受給資格者が失業の認定を受けようとする場合、行政庁が指定する医師の診断を受けるべきことを命じ、受給資格者が正当な理由なくこれを拒むとき、当該行為について懲役刑又は罰金刑による罰則を設けている。)
(偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合に政府が納付をすべきことを命じた金額を徴収する権利は、これを行使することができる時から2年を経過したときは時効によって消滅する。)
(厚生労働大臣は、基本手当の受給資格者について給付制限の対象とする「正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合」に該当するかどうかの認定をするための基準を定めようとするときは、あらかじめ労働政策審議会の意見を聴かなければならない。)
(行政庁は、関係行政機関又は公私の団体に対して雇用保険法の施行に関して必要な資料の提供その他の協力を求めることができ、協力を求められた関係行政機関又は公私の団体は、できるだけその求めに応じなければならない。)
(事業主は、雇用保険に関する書類(雇用安定事業又は能力開発事業に関する書類及び労働保険徴収法又は同法施行規則による書類を除く。)のうち被保険者に関する書類を4年間保管しなければならない。)
選択式
次の文中の の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
1 雇用保険法第13条の算定対象期間において、完全な賃金月が例えば12あるときは、 A に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。)の総額を180で除して得た額を賃金日額とするのが原則である。賃金日額の算定は B に基づいて行われるが、同法第17条第4項によって賃金日額の最低限度額及び最高限度額が規定されているため、算定した賃金日額が2,500円のときの基本手当日額は C となる。
なお、同法第18条第1項、第2項の規定による賃金日額の最低限度額(自動変更対象額)は2,540円、同法同条第3項の規定による最低賃金日額は2,577円とする。
2 雇用保険法第60条の2に規定する教育訓練給付金に関して、具体例で確認すれば、平成25年中に教育訓練給付金を受給した者が、次のアからエまでの時系列において、いずれかの離職期間中に開始した教育訓練について一般教育訓練に係る給付金の支給を希望するとき、平成26年以降で最も早く支給要件期間を満たす離職の日は D である。ただし、同条第5項及び同法施行規則第101条の2の9において、教育訓練給付金の額として算定された額が E ときは、同給付金は支給しないと規定されている。
ア 平成26年6月1日に新たにA社に就職し一般被保険者として就労したが、平成28年7 月31日にA社を離職した。このときの離職により基本手当を受給した。
イ 平成29年9月1日に新たにB社へ就職し一般被保険者として就労したが、平成30年9月30日にB社を離職した。このときの離職により基本手当を受給した。
ウ 令和元年6月1日にB社へ再度就職し一般被保険者として就労したが、令和3年8月31 日にB社を離職した。このときの離職では基本手当を受給しなかった。
エ 令和4年6月1日にB社へ再度就職し一般被保険者として就労したが、令和5年7月31 日にB社を離職した。このときの離職では基本手当を受給しなかった。
選択肢:
A ①最後の完全な6賃金月 ②最初の完全な6賃金月 ③中間の完全な6賃金月 ④任意の完全な6賃金月
B ①雇用保険被保険者資格取得届 ②雇用保険被保険者資格喪失届 ③雇用保険被保険者証
④雇用保険被保険者離職票
C ①1,270 円 ②1,288円 ③2,032円 ④2,061円
D ①平成28年7 月31日 ②平成30年9月30日 ③令和3年8月31日 ④令和5年7月31日
E ①2,000円を超えない ②2,000円を超える ③4,000円を超えない ④4,000円を超える
選択式解答
A=①「最後の完全な6賃金月」(【行政手引50601イ】)
B=④「雇用保険被保険者離職票」(施行規則第19条等。こちら以下を参考)
C=④「2,061円」(第18条第3項、施行規則第28条の5)
D=③「令和3年8月31日」(第60条の2第2項ただし書)
E=③「4,000円を超えない」(第60条の2第5項、施行規則第101条の2の9)
選択式の論点とリンク先
〔1〕問1
問1(空欄A~C)は、設問をざっと読みますと、基本手当の日額(基本手当日額)の問題であることがわかります。
そこで、まず、こちら(雇用保険法のパスワード)の図を思い出して頂くと良いです(時間のない択一式の場合は、このように図等によって、問われている論点に関する全体像(必要な知識)を瞬時に思い出せるかどうかが鍵になります。従いまして、通常の学習においても、知識を一発で思い出せるように反復訓練して頂くことが重要です)。
もとに戻りますが、要するに、「基本手当日額=賃金日額×給付率」です。
そして、空欄のA(こちら)では、「賃金日額」が問題となっています。
1 空欄のA
賃金日額は、原則として、こちらの図のように算定します。
即ち、賃金日額は、原則として、算定対象期間において被保険者期間(第14条)として計算された最後の6箇月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金を除きます)の総額を180で除して得た額とします(第17条第1項)。
この点、空欄のA(こちら)の直前では、「完全な賃金月」とありますが、これは行政手引で示されている実務の考え方であり、当サイトではこちらで触れています。
即ち、賃金日額は、前記の通り、「算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6箇月に支払われた賃金の総額」を算定基礎(分子)としますが、実際は、算定上の便宜を考慮して、賃金締切日の翌日から次の賃金締切日までの期間(賃金支払対象期間)が1箇月であるときに、当該1箇月の賃金支払基礎日数が11日以上ある場合を1箇月として計算する取扱いとなっています(【行政手引50601イ】参考)。
具体的には、算定対象期間に「完全な賃金月」が6以上あるときは、「最後の完全な6賃金月」〔=空欄のA〕に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金を除きます)の総額を180で除して得た額を賃金日額とするのが実務上の取扱いの原則です。
この「賃金月」とは、同一の事業主のもとにおける賃金締切日(賃金締切日が1暦月に2回以上ある場合には歴月の末日に最も近い賃金締切日。以下同じ)の翌日から次の賃金締切日までの期間をいい、その期間が満1か月であり、かつ、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を「完全な賃金月」というとされます。
そこで、「最後の6箇月に支払われた賃金の総額」は、「最後の完全な6賃金月」(=空欄のA)に支払われた賃金の総額として算定します。
この空欄Aについては、「完全な6賃金月」という考え方を知らなくても、条文上、「最後の6箇月に支払われた賃金の総額」であり、空欄Aの選択肢(こちら)のうち、「最後の」とあるのは①「最後の完全な6賃金月」しかありませんから、この①が正解であろうとは判断しやすいと思います。
ただし、行政手引からの実務上の用語が問われているため、慣れていないと戸惑う内容となっています。
2 空欄のB
空欄のB(こちら)は、賃金日額の算定の基礎となる資料は何かが問われています。
被保険者が離職した場合は、事業主は、原則として、資格喪失届に離職証明書を添付して所轄の公共職業安定所長に提出しなければなりません(施行規則第7条第1項後段。こちら以下)。
この事業主が作成する離職証明書に基づき、所轄の公共職業安定所長が離職票を作成して、離職者に交付します(施行規則第17条第1項)。
離職証明書には、当該被保険者に関する「離職の日以前の賃金支払状況等」を記載する欄が設けられており、この欄に基本手当の支給に係る賃金日額の算定基礎となる賃金を事業主が記載します(こちら以下を参考です)。
そこで、賃金日額の算定も、「離職証明書 ➡ 離職票」に基づいて行われます。
空欄Bの選択肢(こちら)中では、④に「離職票」がありますから、これが正解です。
この空欄Bは、そう難しくはないかもしれませんが、手続の問題ですので、苦手にする方もおられるでしょう。
3 空欄のC
空欄のC(こちら)は、賃金日額が2,500円のときの基本手当日額がいくらになるかの問題です。これは、難しかったと思います。
設問のなお書に、次のようにある点がポイントです。
〔※ なお、サイト上では改正後の新しい内容に書き換えているため、以下の金額と異なります。ただ、数字の細部よりも考え方を押さえて頂ければ結構です。〕
「なお、同法第18条第1項、第2項の規定による賃金日額の最低限度額(自動変更対象額)は2,540円、同法同条第3項の規定による最低賃金日額は2,577円とする。」
前記の通り、「基本手当日額=賃金日額×給付率」ですが、賃金日額の下限額(最低限度額)があり、本問では、算定した賃金日額(2,500円)が下限額(2,540円)より低いですから、賃金日額は下限額である「2,540円」にひとまずはなります。
しかし、これについて、平成29年8月1日施行の改正により、「下限額と最低賃金日額との調整」という制度が新設されています。
即ち、自動変更対象額(本問では、賃金日額の下限額を意味します)が最低賃金を基礎として算定された賃金日額(最低賃金日額)を下回る場合には、当該最低賃金日額が下限額とされます(第18条第3項、施行規則第28条の5)。
大まかには、賃金日額の下限額を最低賃金法の地域別最低賃金を上回る額に設定しようとした趣旨です。詳細は、本文のこちらです。
この制度は、令和2年8月1日からの賃金日額について初めて適用され、今回の令和3年8月1日からの賃金日額においても引き続き適用されました(この2年間は、賃金日額の下限額が最低賃金日額を下回っているということです)。
本問の2,500円等の数字は、そのままこの令和3年8月1日からの適用分のものと同じであり、今回の最低賃金日額は「2,577円」であり、下限額である「2,540円」は、この最低賃金日額を下回るため、最低賃金日額「2,577円」が賃金日額となります。
さらに、「基本手当日額=賃金日額×給付率」ですから、この「2,577円」に給付率を乗じたものが基本手当日額です。
「2,577円」の場合の給付率は、こちらの下部の図の通り、100分の80です(60歳以上であっても同じです)。
よって、「2,577円×80%」として、「2061.6円」が基本手当日額となります。
この場合の端数処理については、1円未満の端数の切り捨てとなります(国等の債権債務等の金額の端数処理に関する法律第2条第1項。こちらの下部です)。
本問では、「2,062円」といった選択肢はありませんから、この端数処理は論点となっていません。
以上より、④「2,061円」が空欄Cの正解となります。
出題当時の本文では、この「2,577円」をゴロ合わせにより押さえており、これを思い出しますと、今回の設問の「2,577円」の意味も判明しやすく、本問の論点がどこにあるのかが早めにつかめた可能性があります。
一方、賃金日額について学習が不十分である場合は、本問の論点がどこにあるのかを把握することができず、かなり苦しいことになります。
この問1の空欄Cは初めて登場した論点であり、難しかったと思います。空欄Aも、行政手引の用語が用いられており、やや微妙でした。
全体的に厳しかったです。
〔2〕問2
問2は、一般教育訓練給付金の支給要件に関する問題です。
雇用保険法の選択式としては、見慣れない事例系の問題ですが、支給要件(特に支給要件期間)を正確に記憶し思い出すことができるかが鍵です。
1 空欄のD
まず、事案は、次の図のとおりです。
空欄のD(こちら)は、一般教育訓練給付金の支給を受ける場合に、平成26年以降で最も早く支給要件期間を満たす離職の日がいつかという内容です。
ここで、次の①~③の知識を一気に思い出す必要があります(本文のこちらの三等を参考です)。
①教育訓練給付金の支給要件として、支給要件期間が3年以上であることが要求されること(ただし、初めて一般教育訓練給付金の支給を受ける者については、当分の間、支給要件期間が1年以上であれば足りること)。
②支給要件期間とは、教育訓練開始日(基準日)以前に被保険者であった期間を通算した期間のことであること。
これは、教育訓練開始日を離職日とみなして算定した基本手当の所定給付日数に係る「算定基礎期間」に相当する期間とイメージするとよいこと。
具体的には、支給要件期間に通算されない期間として、「前後の資格の得喪が1年を超える場合の前の期間」や「前に教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合の当該教育訓練給付金に係る基準日前の被保険者であった期間」などがあること(支給要件期間については、本文のこちら以下を参考です)。
③教育訓練給付対象者が、基準日前厚生労働省令で定める期間〔=3年〕内に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、教育訓練給付金は支給されないこと(第60条の2第5項。こちら)。
本問では、「平成25年中に教育訓練給付金を受給した」とありますから、平成26年以降に一般教育訓練給付金の支給を受ける場合は、①支給要件期間は3年以上であることが必要となります。
次に、前掲のこちらの図では、㋐と㋑の被保険者であった期間に係る離職については、基本手当を受給しています(なお、「㋐」等は、設問の「ア」等に対応しています)。
しかし、前記の②のように、前に基本手当の支給を受けたことがあっても、前に教育訓練給付金の支給を受けたことがなければ、離職日前の被保険者であった期間は支給要件期間に算入することができる点に注意です。
本問では、平成25年中に受給した教育訓練給付金に係る被保険者であった期間は支給要件期間に算入できませんが、こちらの図の㋐の被保険者であった期間以降の期間は、算入できないわけではありません。
そこで、本問で支給要件期間に算入(通算)できるかどうかについては、「前後の資格の得喪が1年を超える場合の前の期間」かどうかがポイントであることになります。
前掲のこちらの図では、㋐と㋑の間の期間の間は1年を超えていますが、その他の㋑と㋒(及び㋒と㋓)の間の期間の間は1年を超えていません。
そこで、㋑と㋒と㋓の被保険者であった期間は通算できることになります。
㋑の期間は1年を超えており、㋒の期間は2年を超えていますから、合計で3年を超えますので、後者の㋒の離職日において、もっとも早く支給要件期間を満たすことになります。
なお、この㋒の離職日(令和3年8月31日)の前の3年以内には教育訓練給付金の支給を受けていませんので(平成25年に支給を受けています)、上記③の不支給にも該当しません。
ちなみに、上記の被保険者であった期間の計算については(雇用された日から離職日までの期間を単純に計算します)、本問では、㋑(平成29年9月1日就職・平成30年9月30日離職)に係る被保険者であった期間は、9月1日から翌年9月30日までの1年と1月であり、㋒(令和元年6月1日に再就職・令和3年8月31日に再離職)に係る被保険者であった期間は、6月1日から翌々年の8月31日までの2年と3月であり、両者を合計しますと、「3年4月」となり、3年は超えます。
なお、支給要件期間の通算に当たって、各被保険者であった期間を加算(通算)する場合は、暦年、暦月及び暦日のそれぞれごとに加算し、暦月の12月をもって1年、暦日の30日をもって1月とします(サイト本文では、こちらの基本手当の所定給付日数に係る算定基礎期間における被保険者であった期間の個所で掲載していますが、育児休業給付の支給要件期間に係る被保険者であった期間の場合も同様です。育児休業給付の【行政手引 58012ハ】)。
2 空欄のE
空欄のE(こちら)は、教育訓練給付金が不支給となる「教育訓練給付金の額として算定された額」の問題であり、これは単純な記憶問題であり、4千円です(第60条の2第5項、施行規則第101条の2の9)。(こちら)
類問は、択一式の【平成25年問4エ(こちら)】で出題されています。
以上、雇用保険法の選択式は厳しい内容であり、基準点をらくらくクリアーできるといった内容とはほど遠かったです。
総評
選択式は、結構厳しい出題でした。
問1(基本手当日額)も、単純な問題ではありません。
空欄AとBは実務色があります。また、空欄C(下限額と最低賃金日額との調整)は、平成29年施行の改正事項ですが、前々回の出題時から適用されている制度であるため、近時の改正事項であるともいえ、過去出題がなかったこともあって、論点を把握できなかった方もおられるかもしれません。
また、問2は、一般教育訓練給付金に関する事例問題であり、事案を迅速に分析する力と事案に適合した正確な知識を思い出す能力が要求されます。
暗記で対応できる従来の出題内容より1段上のレベルにある出題といえます。
今後も、知識を正確に記憶し瞬時に思い出せる訓練をする他、事例問題に慣れておく必要があります。
択一式についても、簡単ではなく、きちんと学習していませんと苦労する内容になっています。
問1では、近時の出題傾向と異なり、直近の改正事項(特例高年齢被保険者)について、それも結構細かい知識が問われました。
問4は、単純な知識問題を事例風にして出題するという新傾向問題でした。
問5(高年齢雇用継続給付)及び問6(育児休業給付)については、いくつかの肢は厳しい内容でした。
今回の出題内容についても、当サイト上の知識だけで正答することは可能ですから、あまり行政手引の細部に手を広げすぎたりする必要はなく、当サイトを熟読して頂くことが最も有用な試験対策であるといえそうです。