令和5年度 雇用保険法
令和5年度の雇用保険法の本試験問題のインデックスを掲載します。
リンク先に本試験問題及びその解説を掲載しています。
択一式
○【問1】=被保険者に関する問題:
▶雇用保険の被保険者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(名目的に就任している監査役であって、常態的に従業員として事業主との間に明確な雇用関係があると認められる場合は、被保険者となる。)
(専ら家事に従事する家事使用人は、被保険者とならない。)
(個人事業の事業主と同居している親族は、当該事業主の業務上の指揮命令を受け、就業の実態が当該事業所における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われ、取締役等に該当しない場合には、被保険者となる。)
(ワーキング・ホリデー制度による入国者は、旅行資金を補うための就労が認められるものであることから、被保険者とならない。)
(日本の民間企業等に技能実習生(在留資格「技能実習1号イ」、「技能実習1号口」、「技能実習2号イ」及び「技能実習2号口」の活動に従事する者)として受け入れられ、講習を経て技能等の修得をする活動を行う者は被保険者とならない。)
○【問2】=失業の認定に関する問題:
▶失業の認定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(基本手当に係る失業の認定日において、前回の認定日から今回の認定日の前日までの期間の日数が14日未満となる場合、求職活動を行った実績が1回以上確認できた場合には、当該期間に属する、他に不認定となる事由がある日以外の各日について、失業の認定が行われる。)
(許可・届出のある民間職業紹介機関へ登録し、同日に職業相談、職業紹介等を受けなかったが求人情報を閲覧した場合、求職活動実績に該当する。)
(失業の認定日が就職日の前日である場合、当該認定日において就労していない限り、前回の認定日から当該認定日の翌日までの期間について失業の認定をすることができる。)
(求職活動実績の確認のためには、所定の失業認定申告書に記載された受給資格者の自己申告のほか、求職活動に利用した機関や応募先事業所の確認印がある証明書が必要である。)
(受給資格者が被保険者とならないような登録型派遣就業を行った場合、当該派遣就業に係る雇用契約期間につき失業の認定が行われる。)
○【問3】=賃金に関する問題:
▶雇用保険法における賃金に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(退職金相当額の全部又は一部を労働者の在職中に給与に上乗せする等により支払う、いわゆる「前払い退職金」は、臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金に該当する場合を除き、原則として、賃金日額の算定の基礎となる賃金の範囲に含まれる。)
(支給額の計算の基礎が月に対応する住宅手当の支払が便宜上年3回以内まとめて支払われる場合、当該手当は賃金日額の算定の基礎に含まれない。)
(基本手当の受給資格者が、失業の認定を受けた期間中に自己の労働によって収入を得た場合であって、当該収入を得るに至った日の後における最初の失業の認定日にその旨の届出をしないとき、公共職業安定所長は、当該失業の認定日において失業の認定をした日分の基本手当の支給の決定を次の基本手当を支給すべき日まで延期することができる。)
(雇用保険法第18条第3項に規定する最低賃金日額は、同条第1項及び第2項の規定により変更された自動変更対象額が適用される年度の4月1日に効力を有する地域別最低賃金の額について、一定の地域ごとの額を労働者の人数により加重平均して算定した額に20を乗じて得た額を7で除して得た額とされる。)
(介護体業に伴う勤務時間短縮措置により賃金が低下している期間に倒産、解雇等の理由により離職し、受給資格を取得し一定の要件を満たした場合であって、離職時に算定される賃金日額が当該短縮措置開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額に比べて低い場合は、当該短縮措置開始時に離職したとみなした場合に算定される賃金日額により基本手当の日額が算定される。)
○【問4】=訓練延長給付に関する問題:
▶訓練延長給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(訓練延長給付の支給を受けようとする者は、公共職業安定所長が指示した公共職業訓練等を初めて受講した日以降の失業認定日において受講証明書を提出することにより、当該公共職業訓練等を受け終わるまで失業の認定を受けることはない。)
(受給資格者が公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるために待期している期間内の失業している日は、訓練延長給付の支給対象とならない。)
(公共職業安定所長がその指示した公共職業訓練等を受け終わってもなお就職が相当程度に困難であると認めた者は、30日から当該公共職業訓練等を受け終わる日における基本手当の支給残日数(30日に満たない場合に限る。)を差し引いた日数の訓練延長給付を受給することができる。)
(訓練延長給付を受ける者が所定の訓練期間終了前に中途退所した場合、訓練延長給付に係る公共職業訓練等受講開始時に遡って訓練延長給付を返還しなければならない。)
・【令和5年問4E】 【直近の改正事項】
(公共職業安定所長は、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律第4条第2項に規定する認定職業訓練を、訓練延長給付の対象となる公共職業訓練等として指示することができない。)
○【問5】=就職促進給付に関する問題:
▶就職促進給付に関する次のアからオの記述のうちしいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。
(障害者雇用促進法に定める身体障害者が1年以上引き続き雇用されることが確実であると認められる職業に就いた場合、当該職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1未満であれば就業促進手当を受給することができない。)
(受給資格者が1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる職業に就いた日前3年の期間内に厚生労働省令で定める安定した職業に就いたことにより就業促進手当の支給を受けたことがあるときは、就業促進手当を受給することができない。)
(受給資格者が公共職業安定所の紹介した雇用期間が1年未満の職業に就くためその住居又は居所を変更する場合、移転費を受給することができる。)
(職業に就いた者(1年を超え引き続き雇用されることが確実であると認められる職業に就く等、安定した職業に就いた者を除く。)であって当該職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が当該受給資格に基づく所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上のものに対して支給される就業促進手当の額は、雇用保険法第56条の3にいう基本手当日額に10分の3を乗じて得た額である。)
(受給資格者が公共職業安定所の職業指導に従って行う再就職の促進を図るための職業に関する教育訓練を修了した場合、当該教育訓練の受講のために支払った費用につき、教育訓練給付金の支給を受けていないときに、その費用の額の100分の30(その額が10万円を超えるときは、10万円)が短期訓練受講費として支給される。)
A(アとイ) B(アとウ) C(イとエ) D(ウとオ) E(エとオ)
○【問6】=育児休業給付に関する問題:
・【令和5年問6】 【直近の改正事項】
▶次の場合の第1子に係る育児休業給付金の支給単位期間の合計月数として正しいものはどれか。
令和3年10月1日、初めて一般被保険者として雇用され、継続して週5日勤務していた者が、令和5年11月1日産前体業を開始した。同年12月9日第1子を出産し、翌日より令和6年2月3日まで産後休業を取得した。翌日より育児休業を取得し、同年5月4日職場復帰した。その後同年6月10日から再び育児休業を取得し、同年8月10日職場復帰した後、同年11月9日から同年12月8日まで雇用保険法第61条の7第2項の厚生労働省令で定める場合に該当しない3度目の育児休業を取得して翌日職場復帰した。
A 0か月
B 3か月
C 4か月
D 5か月
E 6か月
○【問7】=教育訓練給付金に関する問題:
▶教育訓練給付金の支給申請手続に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(特定一般教育訓練期間中に被保険者資格を喪失した場合であっても、対象特定一般教育訓練開始日において支給要件期間を満たす者については、対象特定一般教育訓練に係る修了の要件を満たす限り、特定一般教育訓練給付金の支給対象となる。)
(一般教育訓練給付金の支給を受けようとする支給対象者は、疾病又は負傷、在職中であることその他やむを得ない理由がなくとも社会保険労務士により支給申請を行うことができる。)
(特定一般教育訓練に係る教育訓練給付金の支給を受けようとする者は、管轄公共職業安定所長に教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票を提出する際、職務経歴等記録書を添付しないことができる。)
(一般教育訓練に係る教育訓練給付金の支給を受けようとする者は、当該教育訓練給付金の支給に係る一般教育訓練の修了予定日の1か月前までに教育訓練給付金支給申請書を管轄公共職業安定所長に提出しなければならない。)
(専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金の支給を受けようとする者は、当該専門実践教育訓練の受講開始後遅滞なく所定の書類を添えるなどにより教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票を管轄公共職業安定所長に提出しなければならない。)
選択式
次の文中の の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
1 技能習得手当は、受給資格者が公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける場合に、その公共職業訓練等を受ける期間について支給する。技能習得手当は、受講手当及び A とする。受講手当は、受給資格者が公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けた日(基本手当の支給の対象となる日(雇用保険法第19条第1項の規定により基本手当が支給されないこととなる日を含む。)に限る。)について、 B 分を限度として支給するものとする。
2 雇用保険法第45条において、日雇労働求職者給付金は、日雇労働被保険者が失業した場合において、その失業の日の属する月の前2月間に、その者について、労働保険徴収法第10条第2項第4号の印紙保険料が「 C 分以上納付されているとき」に、他の要件を満たす限り、支給することとされている。また、雇用保険法第53条に規定する特例給付について、同法第54条において「日雇労働求職者給付金の支給を受けることができる期間及び日数は、基礎期間の最後の月の翌月以後4月の期間内の失業している日について、 D 分を限度とする。」とされている。
3 60歳の定年に達した受給資格者であり、かつ、基準日において雇用保険法第22条第2項に規定する就職が困難なものに該当しない者が、定年に達したことを機に令和4年3月31日に離職し、同年5月30日に6か月間求職の申込みをしないことを希望する旨を管轄公共職業安定所長に申し出て受給期間の延長が認められた後、同年8月1日から同年10月31日まで疾病により引き続き職業に就くことができなかった場合、管轄公共職業安定所長にその旨を申し出ることにより受給期間の延長は令和5年 E まで認められる。
選択肢:
①7月31日 ②9月30日 ③10月31日 ④12月31日
⑤30日 ⑥40日 ⑦50日 ⑧60日
⑨移転費 ⑩各月13日 ⑪各月15日 ⑫各月26日
⑬各月30日 ⑭寄宿手当
⑮教育訓練給付金 ⑯通算して26日
⑰通算して30日 ⑱通算して52日
⑲通算して60日 ⑳通所手当
選択式解答
選択式の論点とリンク先
〔1〕問1
問1(空欄のA及びB。こちら)は、技能習得手当の種類及び受講手当の支給額に関する出題です。
少しマイナーな給付からの出題ですが、空欄のAについては正答必須です。
平成13年度の選択式において出題されていたほか(【D=「技能習得手当」。E=「通所手当」(こちら。雇用保険法のパスワード)】)、択一式の【平成15年問6A(こちら)】及び【平成19年問3C(こちら)】においても出題されています。
当サイトでは、「技能の術(じゅつ)」と覚えていました。
空欄B(こちら)の支給日数(の上限)は、数字が問われました。雇用保険法の選択式では、数字の出題が多いです。
当サイトでは、支給日数については、「じゅ(4=じ)こう手当だから、40日」と、支給額については、「受講(ゴー=日額500円)手当」と、「一発ゴロ」で押さえていました。
雇用保険法の給付の数字関係については、そのほとんどを「一発ゴロ」にでもして覚えておくという準備が必要です。
なお、以上について、当サイトの「直前対策講座」のこちらの【問2】では、A「受講手当及び通所手当」とC「40日分を限度として日額500円」を空欄としており、空欄2つについて的中しました。
〔2〕問2
問2(空欄のC及びD。こちら)は、日雇労働求職者給付金の「普通給付」の支給要件と「特例給付」の支給額についての出題です。
日雇労働求職者給付金は、結構出題が多いのですが、令和3年度・4年度と出題がなかったところ、今回、選択式で狙われました。
2つの空欄ともに数字の出題ですが、当サイトでは、こちらのゴロで押さえていました。
ただし、空欄のDについては、選択肢中に⑧「60日」と⑲「通算して60日」があり、迷われたかもしれません。
ですが、以上までの空欄4つのうち3つは正答可能でした。
なお、「直前対策講座」のこちらの【問7】のA(「通算して26日分以上」)は的中しました。
〔3〕問3
問3(空欄のE。こちら)は、行政手引からのそれもかなり細かい事項からの出題であり、正答は困難です。
当サイトでは、こちらで掲載はしていましたが、「次は応用問題であり、余裕のある場合に押さえて下さい。」と記載していましたように、少なくとも選択式で出題される可能性については全く考慮していませんでした。
出題者も、正答することは期待していなかったと思います。
ただし、一度出題されますと、将来、択一式の形で類問が出題されることもあり得ますから、この際に考え方は押さえておいたほうが良いでしょう。
【行政手引】については、こちらの58頁の【50286(6)】のロ及び例示2以下の図です(読まなくても結構です)。
「60歳以上の定年退職者等に係る受給期間の延長」(第20条第2項。こちら以下)により受給期間が延長された場合においても、「妊娠・傷病等により引き続き30日以上職業に就くことができない場合の受給期間の延長」(第20条第1項。こちら以下)は適用されると解されています。
この場合、「定年退職者等の延長されたトータルの受給期間」に加算できる日数は、「傷病等により職業に就くことができない期間」の日数ですが、当該「就職不能期間の全部又は一部が、猶予期間(求職の申込みをしないことを希望する期間)内にあるとき」は、当該傷病等による就職不能期間のうち「猶予期間内にない期間」分の日数(つまり重複していない日数)が加算できる日数となるとされます。
そこで、本問では、前掲の図の通り、求職の申込みをしないことを希望する期間が6か月であり、令和4年9月30日までと設定し、傷病により就職不能となった令和4年8月1日から同年10月31日までの92日間のうち、定年退職者等に係る受給期間の延長期間と重複する「令和4年8月1日から同年9月30日までの61日分」については、傷病等による就職不能期間に係る延長からは除外し、重複しない「令和10月1日から同年10月31日までの31日間」を延長期間とします。
そこで、定年退職者等に係る受給期間の延長期間の末日(令和5年9月30日)の翌日から起算して31日分(令和5年10月31日まで)が延長されるという考え方です。
短時間で処理するには、かなり難しかったことでしょう。実際の本試験会場では、素早く「捨て問」であると判断して、次の科目に移ることになります。
総評
選択式は、通常の学習により基準点を上回ることは可能であったといえます。
ただし、数字や給付の位置づけをしっかりと記憶していませんと、得点できない内容になっています。
他の科目についても同様ですが、特に雇用保険法では、数字をチェックしておく必要があります。
記憶したつもりでも、試験会場で思い出せないことがあります。思い出せるように反復学習を重ねるほか、ゴロ合わせなどによって脳裏に刻み付けておく必要があります。
択一式は、【問2(こちら)】は、行政手引からの細かい知識が多く、【問6(こちら)】は事例問題であり、厳しかったですが、その他を正解したいところです。
なお、直近の改正事項が1肢(【問4E(こちら)】)と1問(【問6(こちら)】の育児休業給付金における育児休業の分割取得)で出題されていることには注意です。
雇用保険法は、前々回の令和3年度辺りから、選択式で「嫌」な問題(事例問題含む)を見かけるようになりました。
ただし、通常の学習で正答できる問題は用意されていますので、まずは、過去問とその周辺の知識を確実にマスターすることが必要であり、テキストの学習の際に、過去問出題箇所周辺を特にウェイトを置いて反復するのがよさそうです。