【令和6年度版】
第2節 労働契約の期間
§1 概観
◆労働契約(雇用契約)は、期間を定めることも定めないことも可能です。
期間の定めの有無により、労働契約は、期間の定めのある労働契約(以下、「有期労働契約」ということがあります)と期間の定めのない労働契約(以下、「無期労働契約」ということがあります)に大別されます(なお、労働契約と雇用契約は、基本的に同義であるため、言い換えが可能です)。
ちなみに、従来、有期労働契約の労働者を「有期契約労働者」と、無期労働契約の労働者を「無期契約労働者」ということが一般でした(「有期労働契約」と「有期契約労働者」と順番が微妙に異なります)。
労働基準法や労働契約法において、「有期契約労働者」・「無期契約労働者」の定義規定はありませんが、労働契約法において、「期間の定めのある労働契約」を(同法第3章の「労働契約の継続及び終了」において)「有期労働契約」というと定義しており(労働契約法第17条第1項(労働一般のパスワード))、従って、労働契約法上、「有期契約労働者」とは、使用者(労働契約法の「使用者」は、労基法の「事業主」に相当します)と「期間の定めのある労働契約」を締結している労働者のことを意味することとなります。
労働契約法の平成24年改正法施行通達である【平成24.8.10基発0810第2号】第5の1(労働一般のこちら)でも、「有期労働契約により労働する労働者」を「有期契約労働者」というと定義しています。
ただし、「パートタイム労働法」から改正された「短時間・有期雇用労働法」(原則として令和2年4月1日施行)においては、この「有期契約労働者」に相当する労働者を「有期雇用労働者」と表現しています。
即ち、短時間・有期雇用労働法における「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいいます(短時間・有期雇用労働法第2条第2項(労働一般のパスワード)。こちら)。
この「有期雇用労働者」とは、労働契約法等で従来から慣用的に用いられています「有期労働契約者」と同義であると解されます。
当サイトでは、主に「短時間・有期雇用労働法」に関する場面では、「有期雇用労働者」を用い、その他の場面(労働基準法や労働契約法等)では、「有期契約労働者」を用いることが多いです。
まず、この有期労働契約と無期労働契約についての法規制(主として解約の問題)について概要を見ます。
(A)期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の場合
まず、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)について、民法及び労基法等による規制(解約の問題)を概観します。
一 民法の取扱い = 解約の自由の原則
◆民法の雇用契約においては、期間の定めのない雇用契約の場合、各当事者は、いつでも解約の申入れができ、解約の申入れ日から2週間経過により雇用契約は終了します(民法第627条第1項)= 解約の自由。
【民法】
※ 次の民法第627条は、令和2年4月1日施行の民法の改正により、第2項が改められました。
即ち、第2項中、従来、「場合には、」とあった下に、「使用者からの」が追加されました(下線部分です)。
この改正の趣旨については、こちらで見ます。
民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ) 1.当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
2.期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3.6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。 |
※ この民法第627条第1項は、解雇権濫用法理に関係するため重要です。第2項と第3項は、試験対策上は、考慮しなくてよいと思われます(こちら参考)。
(参考)
なお、後述の民法第628条(期間の定めのある雇用契約であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに解除できる)は、条文の内容上、期間の定めのない雇用契約についても適用されます。
そこで、民法上は、期間の定めのない雇用契約についても、やむを得ない事由があるときは、2週間の予告期間を経ずに、直ちに雇用契約を終了させることができます(ただし、損害賠償責任が生じるときがあります)。
もっとも、以上については、労基法により修正されます。詳細は、後述します(こちら)。
※【参考:民法改正の趣旨】
【令和2年度試験 改正事項(民法改正)】
参考程度ですが、前記の民法第627条第2項の改正の趣旨は、次の通りです。
改正前は、期間の定めのない雇用であって、期間によって報酬を定めた場合に解約を申入れるときは、
(ⅰ)6箇月未満の期間によって報酬を定めた場合には、当期の前半に解約を申入れることによって、次期以後に解約され(改正前民法第627条第2項)、
(ⅱ)6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、3箇月前に解約を申入れることによって、解約されました(民法第627条第3項)。
しかし、労働者からの解約の場合に、特に上記(ⅱ)について、解約の申入れから3箇月拘束されるというのは酷であるため、労働者の辞職の自由を保障する見地から、民法第627条第2項及び第3項は、使用者からの解約の申入れに限り適用されることに見直されたものです。
ただし、労基法が適用される場合は、使用者からの解約、即ち、解雇については、労基法第20条の解雇予告制度が適用されて、30日前までの解雇予告が必要であるため(原則)、民法第627条第2項の適用は基本的に排除されると解されています(水町「詳解労働法」第2版952頁(初版921頁))。
労働者からの解約の申入れの場合は、民法第627条第1項が適用され、雇用の期間の定めのない場合、労働者はいつでも解約の申入れをすることができ、解約の申入れの日から2週間を経過することにより終了します。
二 労基法等による修正
上記の民法の取扱いによれば、期間の定めのない雇用契約においては、(原則として)使用者も労働者もいつでも解約の申入れをできることとなります = 解約の自由(2週間の予告期間を置くことは必要です)。
この各当事者の解約の自由について、使用者側から見た場合が「解雇の自由」であり、労働者側から見た場合が「辞職(任意退職)の自由」です。
しかし、使用者に「解雇の自由」を認めては、労働者の生活の安定が著しく害されますから、労基法等は、この使用者の解雇の自由を制限しています(詳細は、「労働契約の終了」の「解雇」の個所(こちら以下)で学習します)。
対して、期間の定めのない雇用契約における労働者の辞職(任意退職)の自由については、労基法等においても特には制限していません。
以上が、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の場合の主として解約に関する法規制の概要です。
(B)期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の場合
次に、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)についてです。
労働契約に期間を定める場合は、原則として、3年が上限です(第14条第1項柱書)。
この期間の上限等の問題については、次のページで詳しく見ます。
以下では、上記の期間の定めのない労働契約との対比の観点から、解約に関する民法・労基法等の規制の概要について見ておきます。
一 民法の取扱い
(一)中途解約の制限
◆期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)の場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに雇用契約を解除できます。
ただし、この解除事由が、一方当事者の過失によって生じたものであるときは、損害賠償責任を負います(民法第628条)。
◆この民法第628条を反対解釈しますと、期間の定めのある雇用契約の場合は、やむを得ない事由があるとき以外は、各当事者は、解除できないこととなります。
つまり、有期労働契約の場合は、民法上、原則として、中途解約は認められません。
これは、当事者が期間を定めた以上、当該期間の満了により契約も終了するというのが当事者の意思なのであり、中途解約は、この当事者意思に反し、契約は守られるべきという信義則にも反するからとできます。
【民法】
民法第628条(やむを得ない事由による雇用の解除) 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。 |
※ この条文は、必須知識です。
※ なお、この民法第628条は、条文上、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても」となっていますから、「期間を定めない場合」についても適用されることが前提となっています。
即ち、期間の定めのない雇用契約については、前掲の民法第627条第1項により、(やむを得ない事由がないときは)2週間の予告期間をおけばいつでも解約できますが、他方、本件の民法第628条により、期間の定めのない雇用契約について、やむを得ない事由があるときは、直ちに(予告期間なしに)解約できることとなります(ただし、過失があるときは損害賠償責任を負います。また、前述(こちら)のように、この民法第628条は労基法により修正されるため、使用者の解雇の自由は制限されます)。
【参考】
以下の民法の規定は、参考知識であり、さしあたり覚えなくて結構です。
(二)その他
1 期間の定めのある雇用契約について、民法上、期間満了前の中途解約が認められている場合として、上記の民法第628条以外にも次のような例があります。
(a)使用者が破産した場合(民法第631条)
・使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には、雇用に期間の定めがあるときであっても、労働者又は破産管財人は、民法第627条の規定により解約の申入れをすることができます。この場合、各当事者は、相手方に対し、解約によって生じた損害の賠償を請求することができません。
(b)当事者の債務不履行の場合(民法第415条、第541条以下)
2 なお、期間の定めのある雇用契約についての民法の主要な規定として、前掲の民法第628条のほかに次があります(若干、頭の片隅にとどめる程度には読んでおいて下さい。のちほど関係する個所があります)。
(ア)雇用期間が5年を超えたとき等
【令和2年度試験 改正事項(民法改正)】
雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができ(民法第626条第1項)、この場合、使用者なら3箇月前、労働者なら2週間前に、その予告をしなければなりません(同条第2項)。※1
(イ)黙示の更新
期間満了後も労働者が引き続きその労働に従事する場合に、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一条件でさらに雇用をしたものと推定されます。
この場合、各当事者は、民法第627条〔=上記の期間の定めのない雇用契約においてはいつでも解約申入れができるというもの〕の規定により解約の申入れができます(民法第629条第1項)。
※1【参考:民法改正】
上記の(ア)民法第626条は、令和2年4月1日施行の民法の改正により改められました(読まなくて結構です)。
従来は、こちらのように、
(ⅰ)雇用の期間が5年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができ(ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については10年でした。改正前民法第626条第1項)、(ⅱ)これより契約の解除をしようとするときは、3箇月前にその予告をしなければならないとされていました(改正前民法第626条第2項)。
今般の民法改正により、まず、(ⅰ)の「終身」という用語が改められ(過度の長期間の拘束として民法第90条の公序違反となりかねない内容であるためです)、また、「商工業の見習を目的とする雇用」に関する規定が削除されました(「商工業の見習を目的とする雇用」のみを10年までは解約できないとする合理性が乏しいためです)。
また、上記(ⅱ)については、労働者の辞職の自由を保障するため、5年を超える等の期間の定めのある雇用を労働者から解除する場合は、(期間の定めのない雇用の解除の場合と同様に)2週間前の予告で足りるとして、予告期間が短縮されました。
以上の改正により、民法第626条は次のようになりました。
【民法】
民法第626条(期間の定めのある雇用の解除) 1.雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2.前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは3箇月前、労働者であるときは2週間前に、その予告をしなければならない。 |
・【令和2年4月1日施行の改正前の民法第626条】
改正前民法第626条(期間の定めのある雇用の解除) 1.雇用の期間が5年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、10年とする。
2.前項の規定により契約の解除をしようとするときは、3箇月前にその予告をしなければならない。 |
第629条(雇用の更新の推定等) 1.雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。
2.従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、身元保証金については、この限りでない。 |
二 労基法等による修正等
上記の一(民法第628条)の通り、民法上、期間の定めのある雇用契約の場合は、各当事者は、やむを得ない事由がない限り、期間満了前に契約を解除できないのが原則です = 中途解約の制限。
以下、これに関連する修正等についてご紹介します。
(一)使用者による解約(解雇)について = 労働契約法第17条第1項
◆使用者による期間満了前の解約(解雇)の場合は、労働契約法第17条第1項がこの民法第628条の中途解約の制限について強行規定化しています。
即ち、使用者は、期間の定めのある労働契約の場合、やむを得ない事由がなければ、期間満了前に解雇できません。
【過去問 労働一般 平成22年問5E(こちら)】
【労働契約法】
労働契約法第17条(契約期間中の解雇等) 1.使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2.使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。 |
〇趣旨
この労働契約法第17条第1項が特に定められた理由は、上記の民法第628条が任意規定なのか強行規定なのかなどについて争いがあったため(即ち、従来、期間の定めのある雇用契約について、やむを得ない事由がなくても解約できるという定めをした場合、適法なのかどうかなどについて、争いがありました)、使用者が有期労働契約を中途解約する場合については、やむを得ない事由がない限りは認められないという中途解約の制限を強行規定として明確化したことにあります(従って、「使用者は、やむ得ない事由がなくても、有期労働契約を中途で解約できる」といった定めは、この労働契約法第17条第1項に違反し、無効となることになります)。
また、この労働契約法第17条第1項は、やむを得ない事由の証明責任を使用者に負わせることを明らかにしたものでもあります。
なお、この労働契約法第17条第1項は、やむを得ない事由があるときに「直ちに」解除できること、及び当事者に過失ある場合に「損害賠償責任」が生じることについては定めていませんから、これらについては、民法第628条がなお適用されるものと解されています。
ただし、「直ちに」解除できるのは労働者が解除する場合であり、使用者が解除する場合は、解雇予告の制度(のちにこちら以下で学習します)が適用され、「直ちに」解除できるという点は適用が排除されるものと解されます。
※ ちなみに、この労働契約法第17条は、同法の制定当時(平成20年3月1日施行)に規定されていましたが、平成24年の改正の際に、例えば、第1項に「(以下この章において「有期労働契約」という。)」が追加される等の文言の整理が行われています。
◯過去問:
・【労働一般 平成22年問5E】
設問:
使用者は、期間の定めのある労働契約(「有期労働契約」という。)については、やむを得ない事由がある場合であっても、その契約が満了するまでの間においては、労働者を解雇することができない。
解答:
誤りです。
労働契約法第17条第1項を反対解釈しますと、使用者は、有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合なら、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができます。
(二)労働者による解約について = 労基法第14条第1項による契約期間の制限
他方、民法第628条によれば、労働者についても、期間の定めのある雇用契約の場合は、やむを得ない事由がない限り、期間満了前は契約を解除できないことになります。
もっとも、上記の通り(こちらの(ア))、民法第626条により、5年を超える期間の定めがある場合等においては、5年経過後は解約できます。
これでは、労働者の人身拘束という弊害が生じる危険性を否定できないため、労基法第14条第1項は労働契約の期間の上限を定めました。
以下(次のページになります)では、この労基法第14条第1項の労働契約の期間の制限を学習します。
(参考)
なお、民法上は、雇用契約の期間の上限(最長期間)も下限(最短期間)も制限されていないことは、一応、注意して下さい。
上記の民法第626条(こちら)の5年に関する規定も、雇用契約の期間の上限を5年と定めているのではなく、単に5年経過後は解約を認めているものに過ぎません。
労働契約(雇用契約)の期間の上限を定めているのは、労基法です(次のページで見ます)。なお、労基法も、期間の下限については定めていません。
※ 以上の他、有期労働契約(有期雇用労働者)については、「短時間・有期雇用労働法」において規定されているものがあります(不合理な待遇の禁止など)。
次の「有期労働契約の全体構造」の中で少しご紹介します。
有期労働契約の全体構造
※ ここで、有期労働契約の全体構造をまとめておきます(詳しくは、「労働契約の終了」の「期間の満了」の個所(こちら)で学習します。以下は、後に学習する事項ばかりですので、流し読みで結構です)。
この全体構造では、有期労働契約を、「発生(成立)➡ 変更(展開)➡ 消滅(終了)」の時系列の視点で整理しています。
〇 有期労働契約の全体構造:
(一)有期労働契約の発生(成立)
◆有期労働契約の発生(成立)に関連する労基法、労働契約法、民法及び短時間・有期雇用労働法の主な規定を挙げますと、次の通りです(なお、以下の短時間・有期雇用労働法上の制度については、ここでは深入りしないで結構です)。
1 労働契約の期間の上限(労基法第14条第1項。こちら以下)
➡ 有期労働契約の期間は、原則として3年が上限です(次のページで学習します)。
2 労働契約締結の際の労働条件の明示(労基法第15条第1項。こちら以下) 【令和6年度試験 改正事項】 ※ 労働契約締結の際の「労働契約の期間」についての絶対的明示事項として、「労働契約の期間に関する事項」と「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む)」があります。
後者(かっこ書を除く)は、平成24年の労基法(施行規則)の改正により新設された規定です(平成25年4月1日施行)。 また、後者のかっこ書の「通算契約期間・更新回数の上限の定めがある場合の当該上限」は、令和6年4月1日施行の施行規則の改正により追加されました。 さらに、無期転換ルールに基づき、契約期間内に無期転換申込権が発生する有期労働契約を締結(更新)する場合においては、無期転換申込みに関する事項及び無期転換後の労働条件を明示することが要求されました(施行規則第5条第5項の新設)。 これらの令和6年4月1日施行の改正事項については、詳しくはこちらなどで見ます。図はこちらの図の左欄の(2)と最下部の※1です。
※ 上記2の特則として、短時間・有期雇用労働法第6条(労働一般のパスワード)において、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときの事業主の「労働条件に関する文書の交付等」の義務が定められています(こちら以下)。
3 事業主が講ずる措置の内容等の説明(短時間・有期雇用労働法第14条。こちら以下) 【令和2年度試験 改正事項】 ※ 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、当該事業主が講ずる(不合理な待遇の禁止等に係る)雇用管理の改善等の措置の内容について説明しなければならず(短時間・有期雇用労働法第14条第1項)、また、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに待遇の決定に当たって考慮した事項について説明しなければなりません(同法同条第2項)。
4 契約期間の長期化の配慮義務(必要以上に短い期間による反復更新をしない配慮義務)(労働契約法第17条第2項。こちら)
5 均衡・均等待遇のルール 【令和2年度試験 改正事項】 ※ 令和2年4月1日施行(原則)の「パートタイム労働法」から「短時間・有期雇用労働法」への改正に伴い、「短時間・有期雇用労働法」において、有期雇用労働者(有期契約労働者と同義です。短時間・有期雇用労働法第2条第2項)と短時間労働者に共通するルールが定められました。 このうち、いわゆる均衡・均等待遇のルール(同一の事業主に雇用される通常の労働者とのバランスのとれた待遇の確保の要請)として、次のような規定があります。
(1)不合理な待遇の禁止(短時間・有期雇用労働法第8条。こちら以下)
従来は、労働契約法旧第20条において、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違が禁止されていました。 しかし、前記改正により、短時間労働者と有期雇用労働者を通じて労働条件の相違の不合理性の判断方法をより明確化する等の趣旨から、同条と旧パートタイム労働法第8条が統合されて、短時間・有期雇用労働法第8条に改められました。これにより、労働契約法第20条は廃止されました。
(2)通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止(短時間・有期雇用労働法第9条。こちら以下)
(3)通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者「以外」の短時間・有期雇用労働者の待遇(同法第10条~第12条。こちら以下)
※ その他、短時間・有期雇用労働法において、有期雇用労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとする場合について、当該事業所において雇用する有期雇用労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする努力義務規定(同法第7条第2項。短時間労働者についても同様です)などもあります。
次に、有期労働契約の変更に関する問題です。
(二)有期労働契約の変更
1 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(いわゆる無期転換ルール) (労働契約法第18条。こちら以下。平成25年4月1日施行)
2 通常の労働者への転換の推進(短時間・有期雇用労働法第13条。こちら以下)。
3 紛争の解決等 【令和2年度試験 改正事項】 ※ 短時間・有期雇用労働法において、苦情の自主的解決(同法第22条。こちら)、都道府県労働局長による紛争の解決の援助(第24条。こちら)、調停の委任(第25条。こちら)、公表(第18条第2項。こちら)といった、紛争の解決のための制度が定められています(こちら以下)。
(三)有期労働契約の消滅(終了)
○ 有期労働契約の終了に関連する規定は、以下の通り、大きく1と2に分かれます。
1 民法上、期間の定めのある労働契約(雇用契約)は、やむを得ない事由があるとき以外は、各当事者は、解除できない(民法第628条)のが原則です = 中途解約の制限。 (期間を定めた当事者間の合意(契約)の尊重の趣旨です。)
➡ そこで・・・
(1)労働者については
労働契約の期間満了前は、やむを得ない事由がない限り、解約できないのが原則であるため、労働者の人身拘束の問題が生じます。
➡ 従って、労基法が、有期労働契約の期間の上限を定めました(労基法第14条第1項)。(上記の(一)の1ですでに触れました。詳細は、次のページで見ます。)
(2)使用者については
労働契約法第17条第1項が、上記民法第628条を徹底し、使用者は、期間満了前は、やむを得ない事由がない限り解雇(解約)できないことを強行規定化しました = 雇用保障の効果。
2 他方、有期労働契約は、期間の満了により、当然に終了するのが原則です(それが当事者間の合意(契約)であるためです)= 自動終了の効果。 そこで、期間満了の際は、基本的には、合意により更新がなされるか(あるいは、民法第629条第1項(こちら)の黙示の更新があるか)、それとも、更新されないか(雇止め)が問題となるだけとなります。 この有期労働契約の期間満了により使用者がその更新をしないことを「雇止め」といいます(有期労働契約の期間満了による終了のことですが、使用者が更新をしない(更新を拒否する)という側面に焦点があてられた表現です)。
しかし、使用者による雇止めを無制約に認めますと、有期契約労働者は不安定な地位におかれることとなるため、その保護が問題となります。 この雇止めに対する有期契約労働者の保護に関する規定としては、次のようなものが挙げられます。 【令和6年度試験 改正事項】 (1)雇止め等に関する基準等(労基法第14条第2項、第3項。【平成15.10.22厚生労働省告示第357号】(最終改正【令和5.3.30厚生労働省告示第114号】)の「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」(こちら以下))
(2)雇止め法理(労働契約法第19条。こちら以下)(この(2)は、平成24年の労契法の改正により新設されました(平成24年8月10日施行)。)
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次のページからは、労働契約の期間についての詳細を学習します。