【令和6年度版】
§2 労働契約の期間 = 第14条等
◆労働契約に期間を定める場合は、原則として、3年が上限です(第14条第1項柱書)。
まず、労働契約の期間に関する第14条の条文を掲載しますので、熟読して下さい(【条文】とある下の※の小文字の部分は、近年の改正状況を記載していますが、読まなくて結構です。以下の条文についても同じです)。
【条文】
※ 次の第14条は、平成31年4月1日施行の改正(「働き方改革関連法。【平成30.7.6法律第71号】第1条)により改められています。
〔即ち、同条第1項第1号中、従来、「この号」とあった下に、「及び第41条の2第1項第1号」が追加されました。〕
労基法第14条(契約期間等) 1.労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。
一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第41条の2第1項第1号(労基法のパスワード)〔=高度プロフェッショナル制度〕において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
2.厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。
3.行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。 |
※ 上記の第14条第2項と第3項は、「有期労働契約の雇止めに関する基準等」の問題であり、「労働契約の終了」の「期間の満了」の個所(こちら)で学習します。ここでは、第1項について学習します。
○ 第14条第1項の趣旨:
この第14条第1項は、長期労働契約による人身拘束の弊害を排除するため、労働契約の期間の最長(上限)を原則として3年に制限したものです。
※ まず、全体像です。
第14条第1項の労働契約の期間については、知識を確実に記憶することが重要です。
そこで、次の図により全体像を把握して頂くと共に、ゴロ合わせによって記憶の定着を確実化して下さい。
※【ゴロ合わせ】
・「勇気を持って、3人を殺すための専門の訓練をする有期事業」
(殺し屋を養成する事業場の話です。3人を殺す命令が下り、そのための専門の訓練をしています。)
→「勇気(=「有期」労働契約)を持って、3(=「3」年)人を、こ(=「5」年)・ろ(=「6」0歳以上)すための、専門(=「専門」的知識等を有する労働者)の、訓練(=認定職業「訓練」)をする、有期事業(「ゆうきじぎょう」)」
以下、労働契約の期間について詳しく見ます。
なお、労働契約の期間についての過去問は、このページの最後(こちら)にまとめて掲載しています(一部、本文中においても掲載があります)。
知識を対比して整理するため、まず、期間の定めのない労働契約から触れておきます。
〔1〕期間の定めのない労働契約
◆期間の定めのない労働契約(雇用契約)については、各当事者は、いつでも解約の申入れができます(解約申入れ日から2週間経過により終了します。民法第627条第1項)。
※ 期間の定めのない労働契約については、労働者は、いつでも解約することができ、このように労働者が解約(辞職)する場合は特段の問題はありません。
しかし、使用者もいつでも解約できる(解雇の自由がある)としては、労働者の生活の安定が著しく害されますから、労基法等は、この使用者の解雇の自由を制限しています。
この概要については、前ページのこちら以下です。
次に、本題である期間の定めのある労働契約の場合です。
〔2〕期間の定めのある労働契約(有期労働契約)
一 期間の上限
(一)原則
(二)例外
以下の(1)~(3)の労働契約は、3年を超える期間について締結することができます(第14条第1項)。
(1)5年が上限となる場合
次の(A)又は(B)に該当する労働契約は、5年が上限となります(第14条第1項各号)。
(A)高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る)(第14条第1項第1号)
◆専門的な知識、技術又は経験(以下、この(A)及び第41条の2第1項第1号〔=高度プロフェッショナル制度〕において、「専門的知識等」といいます)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限ります)との間に締結される労働契約については、その期間は5年が上限となります(第14条第1項第1号)。
○趣旨
この(A)について上限を5年に緩和した趣旨は、高度の専門的知識等を有する労働者の場合、労働条件を定める際に使用者に対して劣位な立場となることは少ないといえるため、労働者の意に反して不利な労働条件による長期の契約が締結される危険性は低いと考えられることにあるとされています。
※ 高度の専門的知識等を有する労働者の具体例は、後述の※1(こちら)で説明します。
※ 高度の専門的知識等を必要とする業務に就く場合に限り上限を5年とできることに、要注意です(この高度の専門的知識等を有する労働者に係る労働契約の期間の上限の緩和は、機動的な事業運営のために専門的知識等を有する労働者を一定期間確保したいという事業主側の要請を背景としているものであるため、実際に当該労働者を当該高度の専門的知識等を必要とする業務に従事させていない場合は、適用する必要性が乏しいのであり、また、期間の上限の緩和の適用範囲が不当に拡大しないよう歯止めをかけたものです)。
当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就いていない場合は、労働契約の期間の上限は、原則通り、3年となります。
【過去問 平成16年問2B(こちら)】/【平成24年問2C(こちら)】/【平成28年問2A(こちら)】/【令和2年問5ア(こちら)】/【令和4年問5A(こちら)】
例えば、社労士の資格(=後述の通り、高度の専門的知識等に含まれます)を有して企業に雇用されていても、当該企業で社労士としての知識を必要とする業務に従事していない場合は、労働契約の期間は3年が上限となります。
(B)満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(上記(A)の労働契約は除く)(第14条第1項第2号)
◆満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前記(A)に掲げる労働契約を除きます)についても、その期間は5年が上限となります(第14条第1項第2号)。
【過去問 平成25年問6B(こちら)】/【平成29年問3A(こちら)】
○趣旨
この(B)について上限を5年に緩和した趣旨は、60歳以上の労働者は、一般に雇用の機会の確保が困難な場合があることから、その継続雇用を確保させようとしたものです。
※ 契約締結時に満60歳以上である労働者であることが必要です(【平成15.10.22基発第1022001号】参考)。 【過去問 平成18年問7D(こちら)】
以下、3年を超える期間について締結できるその他の2つの有期労働契約です。
(2)有期事業(第14条第1項柱書)
◆「一定の事業の完了に必要な期間を定める」労働契約(即ち、有期事業に係る労働契約)については、3年(又は5年)を超えても、当該事業の終期までの期間を定めることができます(第14条第1項柱書)。
例えば、4年間で完了する土木工事において、技師を4年間の契約で雇い入れるケースなどです。
工事の途中で契約期間が満了しますと、工事の続行に支障が生じるといった不都合を考慮したものです。
この「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」とは、その事業が有期的事業であることが客観的に明らかな場合であり、その事業の終期までの期間を定める契約であることが必要と解されています。
【過去問 平成27年問3B(こちら)】/【令和3年問2A(こちら)】
(3)認定職業訓練を受ける労働者
◆都道府県労働局長の許可を受けた使用者は、職業能力開発促進法(同法第24条第1項)に基づく都道府県知事の認定を受けて職業訓練を行えます(=認定職業訓練といいます)。
この認定職業訓練を受ける労働者の労働契約期間は、当該訓練生が受ける訓練職種について職業能力開発促進法施行規則に定める訓練期間の範囲内で定めることができます(労基法第70条(労基法のパスワード)、同法施行規則第34条の2の5)。
認定職業訓練を可能にさせる趣旨です。
※ 上記◆の「局長の許可」と「知事の認定」というキーワードは、注意して下さい。
「局長の許可」は、労基法第71条及び施行規則第34条の4で規定されているものです。
即ち、認定職業訓練を受ける労働者について、労基法の原則的規制が解除される3つの場合がありますが(本件の「労働契約の期間」のほか、「年少者の危険有害業務」及び「年少者の坑内労働」に関する規制です)、この3つの場合に「局長の許可」が必要となります(詳しい内容やゴロ合わせは、「技能者」の個所(こちら以下)で学習します)。
他方、「知事の認定」は、職業能力開発促進法に定められているものであり、使用者が職業訓練をする際に必要となるものです。
※【条文】
以下、念のため、上記の(3)に関する条文を掲載しておきますが、読まなくて結構です。
次の「※1 高度の専門的知識等を有する労働者の例」(こちら)に進んで下さい。
【条文】
第70条(職業訓練に関する特例) 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第24条第1項〔=こちら〕(同法第27条の2第2項において準用する場合を含む。)の認定を受けて行う職業訓練〔=都道府県知事の認定を受けて行う職業訓練。認定職業訓練といいます〕を受ける労働者について必要がある場合においては、その必要の限度で、第14条第1項の契約期間〔=労働契約の期間の制限〕、第62条及び第64条の3の年少者及び妊産婦等の危険有害業務の就業制限、第63条の年少者の坑内労働の禁止並びに第64条の2の妊産婦等の坑内業務の就業制限に関する規定について、厚生労働省令で別段の定め〔=施行規則第34条の2の5、第34条の3〕をすることができる。ただし、第63条の年少者の坑内労働の禁止に関する規定については、満16歳に満たない者に関しては、この限りでない。 |
第71条 前条の規定に基いて発する厚生労働省令〔=施行規則第34条の2の5〕は、当該厚生労働省令によつて労働者を使用することについて行政官庁〔=都道府県労働局長〕の許可を受けた使用者に使用される労働者以外の労働者については、適用しない。 |
・上記第70条及び第71条において「厚生労働省令で別段の定め」とされているのが、次の施行規則第34条の2の5です。
【施行規則】
施行規則第34条の2の5 法第71条の規定による許可を受けた使用者が行う職業訓練を受ける労働者(以下「訓練生」という。)に係る労働契約の期間は、当該訓練生が受ける職業訓練の訓練課程に応じ職業能力開発促進法施行規則(昭和44年労働省令第24号)第10条第1項第4号、第12条第1項第4号又は第14条第1項第4号の訓練期間(同規則第21条又は職業訓練法施行規則の一部を改正する省令(昭和53年労働省令第37号。以下「昭和53年改正訓練規則」という。)附則第2条第2項の規定により訓練期間を短縮する場合においてはその短縮した期間を控除した期間とする。)の範囲内で定めることができる。この場合、当該事業場において定められた訓練期間を超えてはならない。 |
【職業能力開発促進法】
職業能力開発促進法(都道府県知事による職業訓練の認定)第24条 1.都道府県知事は、事業主等の申請に基づき、当該事業主等の行う職業訓練について、第19条第1項〔=公共職業能力開発施設は、職業訓練の水準の維持向上のための基準として当該職業訓練の訓練課程ごとに教科、訓練時間、設備その他の厚生労働省令で定める事項に関し厚生労働省令で定める基準(都道府県又は市町村が設置する公共職業能力開発施設にあっては、当該都道府県又は市町村の条例で定める基準)に従い、普通職業訓練又は高度職業訓練を行うものとする〕の厚生労働省令で定める基準に適合するものであることの認定をすることができる。ただし、当該事業主等が当該職業訓練を的確に実施することができる能力を有しないと認めるときは、この限りでない。
〔第2項以下は、省略(全文は、こちら)。〕
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※1「高度の専門的知識等を有する労働者」の例:
第14条第1項第1号の「高度の専門的知識等を有する労働者」については、具体的には厚生労働大臣の告示によって定められています。
その告示は、のちに見て頂くこととして、ここでは、まず一覧表で暗記の便宜を図ります。
この「高度の専門的知識等を有する労働者」は、「専門業務型の裁量労働制の対象業務」に係る労働者(第38条の3。こちら以下)と類似し混同しやすいため、初めから両者を比較する形で押さえる方が効率的です。
※ なお、高度プロフェッショナル制度の対象労働者(対象業務)とも比較する必要がありますが、同制度の対象業務は、5つのパターンとなっており(こちら以下)、別途押さえれば足ります。
この下記の図の知識に関する出題例は多くはないのですが、「高度の専門的知識等を有する労働者」についてそこそこ出題があり、「1,075万円を下回らない」という数字が【選択式 平成18年度D(こちら)】で出題されたことがあります。また、平成24年度の択一式(【平成24年問2C(こちら)】)でも薬剤師について出題がありました。
細かく覚える必要はないですが、安全のため、注意個所は押さえておくことにします。さらに、余裕のある方には、ゴロ合わせもご用意しました(こちら以下で掲載しています)。
※【ポイント】
前掲の図の(1)から(5)までは、「高度の専門的知識等を有する労働者」(に係る業務)と「専門業務型の裁量労働制の対象業務」の両者に共通です。
注意点は、同図の左欄の(6)社労士、(8)技術士、(9)医師(歯科医師、獣医師を含みます)、薬剤師は、「高度の専門的知識等を有する労働者に係る業務」(以下、「高度」と略します)の方だけで規定されていること、また、同図右欄の(6)中小企業診断士は、「高度」の方には入っていないことです。
さらに、(7)建築士は、「高度」の場合は、「1級」に限定されています。
また、「高度」の(10)の「1,075万円未満」は、【選択式 平成18年度(こちら)】で出題されていますが、高度プロフェッショナル制度の対象労働者の年収要件(こちら)や、有期特措法(無期転換ルールの特例を定めたもの)における「専門的知識等を有する有期雇用労働者」の年収要件(労働一般のこちら以下)でも登場し、覚えておかれた方がよいです。
この高度の(10)は、ほぼ同図の右欄の(8)~(10)と同様と考えると良さそうです。
なお、同図の(11)の「ITストラテジスト試験」の合格者は、【平成27.3.18厚生労働省告示第68号】により追加されました(平成27年4月1日施行)。
○ 専門業務型の対象業務:
専門業務型の対象業務の場合は、前掲の図(こちら)の(1)~(5)は「高度」の場合と同じと覚えておきます。また、(7)1級建築士は、「1級」が取れることを覚えておきます。さらに、同図の左欄の(10)は、ほぼ専門業務型でも同様と考えておきます。
その他の主要なものは、後掲(専門業務型のこちら)のゴロ合わせで覚えておきます。
【令和6年度試験 改正事項】
※ なお、専門業務型の対象業務について、令和6年4月1日施行の改正により「M&Aアドバイザリー業務」が追加されました(前掲の図の右欄の一番下の(20)です)。
のちにこちらで見ます。
以下、告示の概要を見ます。前掲の図の内容を確認する程度にざっと見て頂ければ十分です(過去問の出題個所は、一応注意して下さい。なお、下記の順番は、前掲の図の順番とは異なっています)。
・労働基準法第14条第1項第1号に規定する専門的知識等であって高度のものとは、次のいずれかに該当する者が有する専門的な知識、技術又は経験をいうとされます。
=【平成15.10.22厚生労働省告示356号】(最終改正:【平成28.10.19厚生労働省告示第376号】)
1)博士の学位(外国において授与されたこれに該当する学位を含む。)を有する者
2)次に掲げるいずれかの資格を有する者
イ 公認会計士
口 医師
ハ 歯科医師
二 獣医師
ホ 弁護士 【過去問 平成16年問2A(こちら)】
へ 1級建築士
卜 税理士
チ 薬剤師 【平成24年問2C(こちら)】
リ 社会保険労務士 【前掲の平成16年問2A(こちら)】/【前掲の令和4年問5A(こちら)】
ヌ 不動産鑑定士
ル 技術士
ヲ 弁理士
※ 上記の2)に掲げる者が契約期間の上限を5年とすることができるのは、「労働者が本号〔=2)のこと〕に掲げる国家資格を有していることだけでは足りず、当該国家資格の名称を用いて当該国家資格に係る業務を行うことが労働契約上認められている等が必要である」とされます(【平成15.10.22基発第1022001号】)。
3)情報処理の促進に関する法律(昭和45年法律第90号)第29条に規定する情報処理技術者試験の区分のうち「ITストラテジスト試験に合格した者若しくは情報処理技術者試験規則等の一部を改正する省令(平成19年経済産業省令第79号)第2条の規定による改正前の当該区分のうち」システムアナリスト試験に合格した者又はアクチュアリーに関する資格試験(保険業法(平成7年法律第105号)第122条の2第2項の規定により指定された法人が行う保険数理及び年金数理に関する試験をいう。)に合格した者
〔参考〕
「アクチュアリー」とは、確率や数理統計の手法を駆使して、保険料率の算定や配当水準の決定、保険商品の開発及び企業年金の設計等を行うもの、をいいます。
※ 上記の3)の「 」の部分(ITストラテジスト試験合格者の部分)は、先にも触れましたが、【平成27.3.18厚生労働省告示第68号】により追加されました(平成27年4月1日施行)。
4)特許法(昭和34年法律第121号)第2条第2項に規定する特許発明の発明者、意匠法(昭和34年法律第125号)第2条第3項に規定する登録意匠を創作した者又は種苗法(平成10年法律第83号)第20条第1項に規定する登録品種を育成した者
5)次のいずれかに該当する者であって、労働契約の期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金の額を1年当たりの額に換算した額が1075万円を下回らないもの
【選択式 平成18年度 D=「1075万円を下回らない」(こちら)】
イ 農林水産業若しくは鉱工業の科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)若しくは機械、電気、土木若しくは建築に関する科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、設計、分析、試験若しくは評価の業務に就こうとする者、情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。ロにおいて同じ。)の分析若しくは設計の業務(ロにおいて「システムエンジニアの業務」という。)に就こうとする者又は衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務に就こうとする者であって、次のいずれかに該当するもの
(a)学校教育法(昭和22年法律第26号)による大学(短期大学を除く。)において就こうとする業務に関する学科を修めて卒業した者(昭和28年文部省告示第5号に規定する者であって、就こうとする業務に関する学科を修めた者を含む。)であって、就こうとする業務に5年以上従事した経験を有するもの
(b)学校教育法による短期大学又は高等専門学校において就こうとする業務に関する学科を修めて卒業した者であって、就こうとする業務に6年以上従事した経験を有するもの
(c)学校教育法による高等学校において就こうとする業務に関する学科を修めて卒業した者であって、就こうとする業務に7年以上従事した経験を有するもの
ロ 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務〔=いわゆるシステムコンサルタントのこと〕に就こうとする者であって、システムエンジニアの業務に5年以上従事した経験を有するもの
6)国、地方公共団体、一般社団法人又は一般財団法人その他これらに準ずるものによりその有する知識、技術又は経験が優れたものであると認定されている者(前各号に掲げる者に準ずる者として厚生労働省労働基準局長が認める者に限る。〔なお、現在のところ、定められていません〕)
以上で、告示の概要を終わります。
※2 その他の第14条第1項に関連する知識:
(1)定年制
定年の定めのある労働契約(=労働者が一定の年齢に達したときに労働契約が終了するという制度)は、期間の定めのある労働契約ではなく、期間の定めのない労働契約と解されています(従って、第14条第1項による期間の上限の制限は、適用されません)。
なぜなら、定年制の場合、定年年齢に達する前に、労働者にはいつでも労働契約を解約できる自由が保障されているといえるからです(従って、期間の定めのない労働契約の場合と同様に、期間の上限を定める必要がないのです)。
なお、定年制にも、厳密には次の2タイプがあります(このいずれの場合も、上記の理由があてはまり、期間の定めのある労働契約には該当しません)。
(a)定年解雇制
定年年齢に達した場合に、使用者が解雇の意思表示をして労働契約を終了させるものです。
➡ そこで、解雇に関する規制が適用されます。
(b)定年退職制
定年年齢に達した場合に、当然に労働契約が終了するものです。
➡ そこで、この場合は、定年年齢到達による契約終了について、解雇は問題となりません。
※ 定年制については、「労働契約の終了」の「定年到達」の個所(こちら)で詳しく見ます。
(2)契約の更新
なお、第14条第1項は、契約の更新の場合にも適用されます。更新も、労働契約の新たな「締結」にあたるため、同規定の文言上適用されるのです。
そして、例えば、契約期間の上限が5年の有期労働契約の場合、その契約の更新にあたっても、上限を5年として契約期間を定めることができます。
二 第14条第1項違反の効果
(一)公法上の効果
まず、第14条第1項の労働契約の期間の制限の規定に違反した場合(即ち、3又は5年の上限を超える期間を定めて労働契約を締結した場合等)は、使用者に罰則が適用されます(30万円以下の罰金 = 第120条第1号)。
この場合、労働者には、罰則は適用されないと解されています(【昭和23.4.5基発第535号】)。【過去問 平成10年問2A】
本規定の趣旨が、労働者の長期の人身拘束を防止するという労働者保護にあるためです。
(二)私法上の効果
1 また、第14条第1項の契約期間を超える期間を定めた労働契約は、同規定違反となるため、当該制限を超える期間を定めた部分は無効となり、当該無効部分は労基法の定める基準によりますから、3年又は5年の期間となるものと解されています(第13条。こちら以下参考)。(【平成15.10.22基発第1022001号】参考、通説、裁判例)
【過去問 平成16年問2A(こちら)】/【令和5年問5A(こちら)】
5年となるのは、高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約、又は満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約の場合です。
【過去問 平成30年問5D(こちら)】
2 この上限の制限を超えて引き続き労働に従事している場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、民法第629条第1項(=黙示の更新。こちら)が適用されます。
この場合は、期間の定めのない労働契約となると解する立場が多いです。
(参考)
以上の1及び2については、争いがあります。
通説、裁判例及び行政解釈は、上記1について、3年又は5年の期間となると解し、上記2について、期間の定めのない労働契約となると解しています(荒木「労働法」第4版522頁(初版482頁)、水町「詳解労働法」第2版385頁(初版376頁)、菅野「労働法」第12版317頁(第11版309頁)。【旭川大学事件=札幌高判昭和56.7.16】等)。
対して、1については、例えば、「期間の定めのない労働契約」となるといった反対説があります(野川「労働法」535頁、「労働法の世界」第12版74頁(第8版65頁・第6版63頁))。
この点、第13条からは、第14条第1項の基準に達しない労働条件を定める労働契約(=期間の上限の制限に違反する労働契約)については、当該上限の制限に違反する部分は無効となりますが、これは、制限に違反した部分だけが無効となるのであり、制限に違反しない労働契約の期間の部分もある以上、期間の定め自体が無効となるわけではないとできます(定めた期間の一部のみが無効)。
そして、無効となった部分は、「この法律で定める基準」である「有期労働契約における期間の上限の基準」によるとして、上限である3年又は5年の有期労働契約と取り扱われると解することは、第13条からは不自然ではありません。
対して、「期間の定めのない労働契約」となるとする説は、労基法は上限を超える期間を定めること自体を禁止したものであることを重視して、それに違反した場合は一部無効ではなく全部無効である(期間の定め自体が無効である)と評価するのがふさわしいという考え方といえます。
両説の実質的な妥当性についても、微妙なところです。
ただ、上記1について「3年又は5年の期間となる」と解した上で、上記2の黙示の承認がなされた場合について「期間の定めのない労働契約」となると解する場合(通説)は、上記1について「期間の定めのない労働契約」となるとする反対説と実際上の違いは少ないこととなります。
過去問の【平成16年問2A(こちら)】、【平成30年問5D(こちら)】及び【令和5年問5A(こちら)】は、上記1について「3年又は5年の期間」となるという通説、裁判例及び行政解釈の立場を前提としていますから、試験対策上はこの立場を押さえます。
以上までについて、過去問を見ます。
○過去問:
・【選択式 平成18年度】
設問:
労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(一定の労働契約については5年)を超える期間について締結してはならないこととされている。
そこで、例えば、システムエンジニアの業務に就こうとする者であって、一定の学校において就こうとする業務に関する学科を修めて卒業し、就こうとする業務に一定期間以上従事した経験を有し、かつ、労働契約の期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金の額を1年当たりの額に換算した額が C ものとの間に締結される労働契約にあっては、5年とすることができる。
選択肢(本問に関連するもののみ):
⑤1000万円を上回る ⑥1025万円を上回る ⑦1050万円を下回らない ⑧1075万円を下回らない
解答:
C=⑧「1075万円を下回らない」(【平成15.10.22厚生労働省告示第356号】。こちら以下のロ)
・【平成23年問2A】
設問:
労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(労働基準法第14条第1項の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結してはならず、また、期間を定める労働契約の更新によって継続雇用期間が10年を超えることがあってはならない。
解答:
誤りです。
「期間を定める労働契約の更新によって継続雇用期間が10年を超えることがあってはならない」という規定はありません。
即ち、有期労働契約の期間自体は、原則として、3年又は5年を最長として規制されていますが、当該有期労働契約を更新した場合に、更新前の当初の有期労働契約の期間から通算した契約期間についての規制はありません。
なお、労働契約法第17条第2項においては、「使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」として、有期労働契約に係る労働契約の更新において、短期間の契約の反復更新をしない配慮義務を定めています。
また、後に学習します有期労働契約の雇止めに関する基準第4条(基準第4条。こちら)も、「使用者は、期間の定めのある労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。」と規定しています。
ちなみに、有期労働契約が5年(原則)を超えて反復更新された場合は、有期契約労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換させる仕組みが設けられています(いわゆる無期転換ルール。労働契約法第18条。のちにこちらで学習します)。
・【平成16年問2A】
設問:
労働基準法第14条第1項では、労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(弁護士、社会保険労務士等に係る労働契約で同項第1号に該当するもの、又は同項第2号に該当するものについては5年)を超える期間について締結してはならないこととされている。
この労働基準法第14条第1項に規定する期間を超える期間を定めた労働契約を締結した場合は、同条違反となり、当該労働契約の期間は、同項第1号又は第2号に該当するものについては5年、その他のものについては3年となる。
解答:
正しいです。
本問の前段では、高度の専門的知識等を有する労働者の例として、「弁護士」と「社労士」が出題されており(こちらの図の左欄の(3)と(6)です)、やはり、ある程度は、この高度の専門的知識等を有する労働者の代表例を押さえておく必要がありそうです。
本問の後段についても、前述の(二)「私法上の効果」(こちら)の1の通りであり、正しい内容です。
・【平成16年問2B】
設問:
労働基準法第14条第1項第1号の高度の専門的知識等を有する労働者であっても、当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就かない場合には、労働契約の期間は3年が上限である。
解答:
正しいです。
高度の専門的知識等を有する労働者であっても、当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就かない場合には、有期労働契約の期間は原則通りとなり、3年が上限となります(第14条第1項第1号かっこ書参考)。
本文は、こちらです。
・【平成25年問6B】
設問:
使用者は、満60歳以上の労働者との間に、5年以内の契約期間の労働契約を締結することができる。
解答:
正しいです。
有期労働契約の契約期間が5年の上限となる場合は、高度の専門的知識等を有する者との間に締結される労働契約及び満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約です(第14条第1項各号)。
・【平成29年問3A】
設問:
満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約について、労働契約期間の上限は当該労働者が65歳に達するまでとされている。
解答:
誤りです。
満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約は、その期間は5年が上限となります(第14条第1項第2号)。従って、65歳までではありません(例えば、62歳の労働者は、67歳までが期間の上限となります)。
・【平成27年問3B】
設問:
労働期間の制限を定める労働基準法第14条の例外とされる「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」とは、その事業が有期的事業であることが客観的に明らかな場合であり、その事業の終期までの期間を定める契約であることが必要である。
解答:
正しいです(厚労省コンメ令和3年版上巻221頁(平成22年版上巻213頁))。
・【令和3年問2A】
設問:
労働基準法第14条にいう「一定の事業の完了に必要な期間を定める」労働契約については、3年(同条第1項の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結することが可能であるが、その場合には、その事業が有期的事業であることが客観的に明らかであり、その事業の終期までの期間を定める契約であることが必要である。
解答:
正しいです(厚労省コンメ令和3年版上巻221頁(平成22年版上巻213頁))。
前掲(こちら)の【平成27年問3B】と同内容の設問でした。
・【平成28年問2A】
設問:
使用者は、労働者が高度の専門的知識等を有していても、当該労働者が高度の専門的知識等を必要とする業務に就いていない場合は、契約期間を5年とする労働契約を締結してはならない。
解答:
正しいです。
前掲の【平成16年問2B(こちら)】と類問です。本文は、こちらです。
なお、後掲の【平成24年問2C】(こちら)においても、本問と同様の論点が含まれています(ただし、この平成24年の問題は応用問題でした)。
・【令和2年問5ア】
設問:
専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約については、当該労働者の有する高度の専門的知識等を必要とする業務に就く場合に限って契約期間の上限を5年とする労働契約を締結することが可能となり、当該高度の専門的知識を必要とする業務に就いていない場合の契約期間の上限は3年である。
解答:
正しいです。
高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約の期間が5年となるのは、当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く場合に限られます(第14条第1項第1号かっこ書、同条第1項柱書)。
当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就かない場合は、労働契約の期間の上限の原則のルールが適用され、労働契約の期間3年を上限とします(第14条第1項柱書)。
高度の専門的知識等を有する労働者に係る労働契約の期間の上限の緩和は、機動的な事業運営のために専門的知識等を有する労働者を一定期間確保したいという事業主側の要請を背景としているものであるため、実際に当該労働者を当該高度の専門的知識等を必要とする業務に従事させていない場合は、適用する必要性が乏しいのであり、また、期間の上限の緩和の適用範囲が不当に拡大しないよう歯止めをかけたものです(例えば、トラックの運転手として雇用しようとした者がたまたま社労士の資格を有しているからといって、5年の労働契約の期間とすることはできないということです)。
本文は、こちらです。
本論点は、前掲の【平成28年問2A(こちら)】など、過去問で頻出です。
・【令和4年問5A】
設問:
社会保険労務士の国家資格を有する労働者について、労働基準法第14条に基づき契約期間の上限を5年とする労働契約を締結するためには、社会保険労務士の資格を有していることだけでは足りず、社会保険労務士の名称を用いて社会保険労務士の資格に係る業務を行うことが労働契約上認められている等が必要である。
解答:
正しいです(第14条第1項第1号かっこ書)。
頻出の論点です。
前回は前掲の【令和2年問5ア(こちら)】で出題されました。当該設問の解説をご参照下さい。
なお、社会保険労務士が「高度の専門的知識等を有する労働者」に該当することは、【平成16年問2A(こちら)】で出題されています。
・【平成30年問5D】
設問:
労働基準法第14条第1項第2号に基づく、満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(期間の定めがあり、かつ、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものではない労働契約)について、同条に定める契約期間に違反した場合、同法第13条の規定を適用し、当該労働契約の期間は3年となる。
解答:
誤りです。
第14条第1項第2号に基づく満60歳以上の労働者との間に締結される有期労働契約(有期事業に係る労働契約を除きます)の期間は、5年が上限となります。
この契約期間を超える期間を定めた労働契約は、同規定違反となるため、当該制限を超える期間を定めた部分は無効となり、当該無効部分は労基法の定める基準によりますから、5年の期間となるものと解されています(第13条。こちら以下参考。【平成15.10.22基発第1022001号】)。(期間の定めのない労働契約になると解する説もありますが、通達や通説は、5年の期間になると解しています。)
以上、本文はこちらです。
本問は、前掲の【平成16年問2A(こちら)】と類問です。
・【令和5年問5A】
設問:
労働基準法第14条第1項に規定する期間を超える期間を定めた労働契を締結した場合は、同条違反となり、当該労働契約は、期間の定めのない労働契約となる。
解答:
誤りです。
本問の最後の部分の「当該労働契約は、期間の定めのない労働契約となる」が誤りです。通達(【平成15.10.22基発第1022001号】)裁判例及び通説は、第14条第1項の契約期間を超える期間を定めた労働契約は、同規定違反となるため、当該制限を超える期間を定めた部分は無効となり、当該無効部分は労基法の定める基準によりますから、3年又は5年の期間となるものと解しています(第13条。こちら以下参考)。
【平成16年問2A(こちら)】や【平成30年問5D(こちら)】が類問です。
本文は、こちら以下です。
次に、有期労働契約労働者による任意退職の暫定措置を学習します。
三 労働者による任意退職の暫定措置(法附則第137条)
◆1年を超える有期労働契約を締結した労働者は、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後は、いつでも退職できます。
ただし、上限が5年となる労働者や有期事業については、この暫定措置は適用されません(法附則第137条)。
【過去問 平成16年問2D(こちら)】/【平成18年問7D(こちら)】/【平成24年問2C(こちら)】
※ 赤字の部分を記憶して下さい。
○趣旨
有期労働契約は、期間満了前は解約できないのが原則です(民法第628条=やむを得ない事由があるときは解除できますが、損害賠償責任を負う場合があります)。
そして、平成15年の労基法の改正(平成16年1月1日施行)の前は、有期労働契約の期間の上限は1年と規定されていましたが、当該改正後は労働者が最長で3年拘束されてしまうことの懸念があったため、当分の間は、1年経過後は労働者に任意退職の自由を保障しようとしたものです。
また、本件暫定措置では、民法第628条の適用が排除されています(法附則第137条本文)。従って、やむを得ない事由がなくても解約でき、また、損害賠償責任も負いません。
なお、「有期事業」の場合は、平成15年の改正前から1年の上限がなかったことから、本件暫定措置も適用されません。
また、「上限が5年となる労働者」の場合は、高度の専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限ります)については、労働条件を定める際に使用者に対して劣位な立場となることは少ないといえること、また、満60歳以上の労働者については、その継続雇用が目的であることに鑑み、これらの労働者について1年経過後の任意退職を認める必要は乏しいといえるため、本件暫定措置は適用されません。
【条文】
法附則第137条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの〔=有期事業〕を除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者〔=即ち、高度の専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限ります)及び満60歳以上の労働者〕を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条〔=下記※1〕に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定〔=期間の定めのある雇用契約でも、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除ができる。ただし、当該事由が一方当事者の過失により生じたときは、損賠賠償責任を負う〕にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。 |
※ 出題が多い条文です。上記の赤字の部分のほか、上限が5年となる労働者や有期事業については適用を除外されていることを要記憶です。
※1 平成15年改正法附則第3条(検討)
「政府は、この法律〔=労基法〕の施行後3年を経過した場合において、この法律による改正後の労働基準法第14条の規定について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」
しかし、現在に至るまで特段の措置は講じられていません。
「労働者による任意退職の暫定措置」に関する過去問です。
○過去問:
・【平成24年問2C】
設問:
満60歳以上で薬剤師の資格を有する者が、ある事業場で3年の期間を定めた労働契約を締結して薬剤師以外の業務に就いていた場合、その者は、民法第628条の規定にかかわらず、労働基準法附則第137条の規定に基づき、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
解答:
誤りです。
法附則第137条により、1年経過日以後に任意退職できる有期労働契約の労働者には、期間の上限が5年となる労働者の2タイプは含まれません。
即ち、高度の専門的知識等を有する労働者と満60歳以上の労働者は含まれません。
この点、薬剤師は、高度の専門的知識等を有する労働者に係る5年の労働契約の期間の上限の対象者ではありますが、本問の労働者は薬剤師以外の業務に就いているため、同上限は適用されません。
しかし、本問の労働者は満60歳以上であるため、結局、第137条は適用されず、1年経過日以後でも任意退職することはできません。
本問は、第137条をしっかり把握していないと、戸惑うこととなる出題といえます。
・【平成18年問7D】
設問:
平成16年5月に満60歳の誕生日を迎えたある労働者が、同年8月に3年の期間を定めた労働契約を締結した場合において、平成18年8月に他の有利な条件の転職先をみつけて退職することを決意した。この場合、当該労働者は、労働基準法附則第137条の規定により、当該使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
解答:
誤りです。
法附則第137条は、満60歳以上の労働者(第14条第1項第2号)については適用されません。
本問では、契約締結時に満60歳以上であるため、第14条第1項第2号の満60歳以上の労働者に該当しますから、法附則第137条は適用されず、1年経過しても、任意退職することはできません。
・【平成16年問2D】
設問:
一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、1年を超える期間の定めのある労働契約を締結した労働者(労働基準法第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から6か月を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
解答:
誤りです。
「6か月」ではなく、「1年」が正しいです(法附則第137条)。
四 期間の下限
なお、労働契約の期間の下限については、直接的には、規制されていません。
ただし、不必要に短い期間の労働契約が反復更新されることは、労働者の雇用の不安定化をもたらしますので、労働契約法において、有期労働契約の期間の長期化の配慮義務の規定が定められています。
即ち、使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければなりません(労契法第17条第2項)。
のちに、有効労働契約のこちらでも見ます。
以上で、労働契約の期間に関する問題を終わります。次のページからは、労働契約の成立過程に関する問題を学習します。