令和5年度 労基法
令和5年度(2022年度)の労働基準法の本試験問題のインデックスを掲載します。
リンク先に本試験問題及びその解説を掲載しています。
択一式
○【問1】=労働者に関する問題:
▶一部労働不能の場合の休業手当の額の事例問題:
○【問2】=休憩時間に関する問題:(組み合わせ問題)
▶ 労働基準法第34条(以下本間において「本条」という。)に定める休憩時間に関する次のアからオの記述のうち、正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。
(休憩時間は、本条第2項により原則として一斉に与えなければならないとされているが、道路による貨物の運送の事業、倉庫における貨物の取扱いの事業には、この規定は適用されない。)
(一昼夜交代勤務は労働時間の延長ではなく2日間の所定労働時間を継続して勤務する場合であるから、本条の条文の解釈(1日の労働時間に対する休憩と解する)により1日の所定労働時間に対して1時間以上の休憩を与えるべきものと解して、2時間以上の体憩時間を労働時間の途中に与えなければならないとされている。)
(休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせるのは、事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも本条〔第34条〕第3項(休憩時間の自由利用)に違反しない。)
(本条〔第34条〕第1項に定める「6時間を超える場合においては少くとも45分」とは、1勤務の実労働時間の総計が6時間を超え8時間までの場合は、その労働時間の途中に少なくとも45分の休憩を与えなければならないという意味であり、休憩時間の置かれる位置は間わない。)
(工場の事務所において、昼食休憩時間に来客当番として待機させた場合、結果的に来客が1人もなかったとしても、休憩時間を与えたことにはならない。)
○【問3】=年少者及び妊産婦等に関する問題:
▶ 労働基準法の年少者及び妊産婦等に係る規定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(年少者を坑内で労働させてはならないが、年少者でなくても、妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た女性については、坑内で行われるすべての業務に就かせてはならない。)
(女性労働者が妊娠中絶を行った場合、産前6週間の休業の問題は発生しないが、妊娠4か月(1か月28日として計算する。)以後行った場合には、産後の体業について定めた労働基準法第65条第2項の適用がある。)
(6週間以内に出産する予定の女性労働者が休業を請求せず引き続き就業している場合は、労働基準法第19条の解雇制限期間にはならないが、その期間中は女性労働者を解雇することのないよう行政指導を行うこととされている。)
(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等を規定した労働基準法第33条第1項は年少者にも適用されるが、妊産婦が請求した場合においては、同項を適用して時間外労働等をさせることはできない。)
(年少者の、深夜業に関する労働基準法第61条の「使用してはならない」、危険有害業務の就業制限に関する同法第62条の「業務に就かせてはならない」及び坑内労働の禁上に関する同法第63条の「労働させてはならない」は、それぞれ表現が異なっているが、すべて現実に労働させることを禁止する趣旨である。)
○【問4】=総則に関する問題:
▶ 労働基準法の総則(第1条~第12条)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(労働基準法第2条により、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきもの」であるが、個々の労働者と使用者の間では「対等の立場」は事実上困難であるため、同条は、使用者は労働者に労働組合の設立を促すように努めなければならないと定めている。)
(特定の思想、信条に従って行う行動が企業の秩序維持に対し重大な影響を及ぼす場合、その秩序違反行為そのものを理由として差別的取扱いをすることは、労働基準法第3条に違反するものではない。)
(労働基準法第5条に定める「監禁」とは、物質的障害をもって一定の区画された場所から脱出できない状態に置くことによって、労働者の身体を拘束することをいい、物質的障害がない場合には同条の「監禁」に該当することはない。)
(法人が業として他人の就業に介入して利益を得た場合、労働基準法第6条違反が成立するのは利益を得た法人に限定され、法人のために違反行為を計画し、かつ実行した従業員については、その者が現実に利益を得ていなければ同条違反は成立しない。)
(労働基準法第10条にいう「使用者」は、企業内で比較的地位の高い者として一律に決まるものであるから、同法第9条にいう「労働者」に該当する者が、同時に同法第10条にいう「使用者」に該当することはない。)
○【問5】=労働契約等に関する問題:
▶ 労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(労働基準法第14条第1項に規定する期間を超える期間を定めた労働契を締結した場合は、同条違反となり、当該労働契約は、期間の定めのない労働契約となる。)
(社宅が単なる福利厚生施設とみなされる場合においては、社宅を供与すべき旨の条件は労働基準法第15条第1項の「労働条件」に含まれないから、労働契約の締結に当たり同旨の条件を付していたにもかかわらず、社宅を供与しなかったときでも、同条第2項による労働契約の解除権を行使することはできない。)
(使用者が労働者からの申出に基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸付け、その後この貸付金を賃金から分割控除する場合においても、その貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、労働基準法第17条の規定は適用されない。)
(労働者が、労働基準法第22条に基づく退職時の証明を求める回数については制限はない。)
(従来の取引事業場が休業状態となり、発注品がないために事業が金融難に陥った場合には、労働基準法第19条及び第20条にいう「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」に該当しない。)
○【問6】=賃金等に関する問題:
▶ 労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(労働基準法第24条第1項に定めるいわゆる直接払の原則は、労働者と無関係の第三者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の親権者その他法定代理人に支払うことは直接払の原則に違反しないが、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは直接払の原則に違反する。)
(いかなる事業場であれ、労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出された者でないこと、という要件さえ満たせば、労働基準法第24条第1項ただし書に規定する当該事業場の「労働者の過半数を代表する者」に該当する。)
(賃金の所定支払日が休日に当たる場合に、その支払日を繰り上げることを定めることだけでなく、その支払日を繰り下げることを定めることも労働基準法第24条第2項に定めるいわゆる一定期日払に違反しない。)
(使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならないが、その支払いには労働基準法第24条第1項の規定は適用されない。)
(会社に法令違反の疑いがあったことから、労働組合がその改善を要求して部分ストライキを行った場合に、同社がストライキに先立ち、労働組合の要求を一部受け入れ、一応首肯しうる改善案を発表したのに対し、労働組合がもっぱら自らの判断によって当初からの要求の貫徹を目指してストライキを決行したという事情があるとしても、法令違反の疑いによって本件ストライキの発生を招いた点及びストライキを長期化させた点について使用者側に過失があり、同社が労働組合所属のストライキ不参加労働者の労働が社会観念上無価値となったため同労働者に対して命じた休業は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」によるものであるとして、同労働者は同条に定める体業手当を請求することができるとするのが、最高裁判所の判例である。)
○【問7】=労働時間等に関する問題:
▶ 労働基準法に定める労働時間等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(労働基準法第32条の3に定めるフレックスタイム制において同法第36条第1項の協定(以下本間において「時間外・休日労働協定」という。)を締結する際、 1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、1か月及び1年について協定すれば足りる。)
(労使当事者は、時間外・休日労働協定において労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる業務の種類について定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければならない。)
・【令和5年問7C】 (労働一般のパスワード)
(労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合、労働基準法第38条第1項により、当該労働者に係る同法第32条、第40条に定める法定労働時間及び同法第34条に定める休憩に関する規定の適用については、労働時間を通算することとされている。)
(労働基準法第39条第5項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たり、勤務割による勤務体制がとられている事業場において、「使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である。」とするのが、最高裁判所の判例である。)
(使用者は、労働時間の適正な把握を行うべき労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録することとされているが、その方法としては、原則として「使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること」、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」のいずれかの方法によることとされている。)
選択式
次の文中の の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
1 労働基準法の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から A 間行わない場合においては、時効によって消滅することとされている。
2 最高裁判所は、労働者の指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過した後にされた使用者の時季変更権行使の効力が問題となった事件において、次のように判示した。
「労働者の年次有給休暇の請求(時季指定)に対する使用者の時季変更権の行使が、労働者の指定した休暇期間が開始し又は経過した後にされた場合であつても、労働者の体暇の請求自体がその指定した休暇期間の始期にきわめて接近してされたため使用者において時季変更権を行使するか否かを事前に判断する時間的余裕がなかつたようなときには、それが事前にされなかつたことのゆえに直ちに時季変更権の行使が不適法となるものではなく、客観的に右時季変更権を行使しうる事由が存し、かつ、その行使が B されたものである場合には、適法な時季変更権の行使があつたものとしてその効力を認めるのが相当である。」
3 最高裁判所は、マンションの住み込み管理員が所定労働時間の前後の一定の時間に断続的な業務に従事していた場合において、上記一定の時間が、管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて労働基準法上の労働時間に当たるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。
「労働基準法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない時間(以下「不活動時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである〔・・・(略)・・・〕。そして、不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動時間であっても C が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、 C が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である」。
4 労働安全衛生法第35条は、重量の表示について、「一の貨物で、重量が D 以上のものを発送しようとする者は、見やすく、かつ、容易に消滅しない方法で、当該貨物にその重量を表示しなければならない。ただし、包装されていない貨物で、その重量が一見して明らかであるものを発送しようとするときは、この限りでない。」と定めている。
5 労働安全衛生法第68条は、「事業者は、伝染病の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、 E しなければならない。」と定めている。
選択肢:
①2年 ②3年 ③5年 ④10年
⑤100キログラム ⑥500キログラム ⑦1トン ⑧3トン
⑨ 役務の提供における諾否の自由 ⑩企業運営上の必要性から
⑪休業を勧奨 ⑫行政官庁の許可を受けて
⑬厚生労働省令で定めるところにより
⑭使用者の指揮命令下に置かれていない場所への移動
⑮その就業を禁止 ⑯遅滞なく ⑰当該時間の自由利用 ⑱必要な療養を勧奨
⑲病状回復のために支援 ⑳労働からの解放
選択式解答
A=①「2年」(第115条(労基法のパスワード)。こちら以下)。
B=⑯「遅滞なく」(【電電公社此花電報電話局事件=最判昭和57.3.18】。こちら)
C=⑳「労働からの解放」(【大林ファシリティーズ事件=最判平成19.10.19】。こちら)
D=⑦「1トン」(安衛法第35条(安衛法のパスワード)。安衛法のこちら)
選択式の論点とリンク先
〔1〕問1
問1(こちら)は、災害補償その他の請求権(賃金請求権を除く)についての消滅時効期間を問うものです(本文は、こちら以下(労基法のパスワード))。
基本的な知識であり正答する必要がありますが、一方、数字は「ど忘れ」していることや、他の数字と混乱することなどもあり、いざ空欄として出題されると、やはり怖いです。
そこで、当サイトでは、重要な数字については、基本的にほぼゴロ合わせを作成しており、これによって記憶を喚起できるようにしています。
労基法の消滅時効期間の全体については、こちらの表のとおりです。
令和2年4月1日施行の改正により、「賃金請求権」の消滅時効期間が改められ少しややこしいこととなりましたが、「その他の請求権」の消滅時効期間については、従来と同じであり「2年」です。
ゴロ合わせは、こちらです。
ちなみに、当サイトの「直前対策講座」では、こちら(直前対策講座のパスワード)の【問2】で取り上げていました。消滅時効期間の「2年」ではありませんが、「災害補償その他の請求権」を空欄としていました。
〔2〕問2
問2(こちら)は、使用者の時季変更権の行使時期が問題となった【電電公社此花電報電話局事件=最判昭和57.3.18】(こちら)からの出題です。
使用者の時季変更権の行使時期については明確な規定はありませんが、年休権の保障の趣旨や信義則(民法第1条第2項及び第3項、労契法第3条第4項)からは、時季変更権の行使は、原則として、指定された時季の開始前までにはなされる必要があり、事後の時季変更権の行使は認められないといえます。
この例外が本問のケースといえます。
空欄Bの「遅滞なく」は、年休権の保障の趣旨や信義則から要求されることになります。
今回、年休についての判例として、択一式の【令和5年問7D(こちら)】でも出題されています。
〔3〕問3
問3(こちら)は、マンション住込み管理人の所定時間外の業務の労働時間性が問題となった【大林ファシリティーズ事件=最判平成19.10.19】からの出題です(こちら)。
休憩時間とは、「労働者が権利として労働から離れることを保障された時間」をいい、労働時間と休憩時間との区別も、労働からの解放・離脱が認められているのか、それとも、使用者の指揮命令の下に置かれているものと評価できるのかによります。
このような観点から、「不活動時間であっても」「労基法上の労働時間に当たる」空欄Cの場合とは、「労働からの解放」が保障されていない時間であることがわかります。
また、空欄Cの前に、「当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。」とありますから、空欄Cも「労働から離れること」に関連する文言が入るであろうと推測することが可能でした。
〔4〕問4
問4(こちら)は、安衛法の重量表示(同法第35条)に関する出題です。
当サイトでは、「重量表じい(1)」という「一発ゴロ」で押さえていました(安衛法のこちら以下)。
この数字については、択一式の【平成24年問10E(こちら)】で出題されており、また、古い時代の平成7年度の記述式でも出題されています。
従って、ゴロにより覚えておく必要があったといえます。
このように、過去問で出題されている数字については、ゴロによって記憶を完全なものにしておくこと、かつ、これをすべての科目で行うことが重要な学習課題です。
〔5〕問5
問5(こちら)は、「病者の就業禁止」についてであり(安衛法のこちら以下)、直接の過去問はありませんでした。
ただし、労働者が伝染病等にかかった場合は、その労働者が就業してしまえば他の従業員等に感染させてしまうという問題が発生しますから、事業者が「その就業を禁止」しなければならないことは想像しやすいといえます。
総評
選択式は、通常の学習により基準点を上回ることができる出題内容であったといえます。
安衛法の2つの空欄がさほど難しくなかった点は幸いでした。
労基法の3つの空欄も、易しすぎるわけではなく、難しすぎるわけでもないという適度の難易度であったと思います。
他方、労基法の択一式については、当サイトであっても直接の記載がない肢が10肢程度ありました。
過去未出題の論点もいくつかあり、現場で少々思考することが必要となる肢が少なくなく、また、正確な知識を有することが前提となっています。
素材としては、条文そのものが単純に出題されたという肢は少なく、通達、判例、ガイドライン等からバランスよく出題されています。
択一式は、全体としてはレベルは高めで良問が多かったといえます(安衛法を含む択一式の平均点は4.2点であり、昨年度(4.7点)より下がりました)。