令和6年度 労基法
令和6年度(2023年度)の労働基準法の本試験問題のインデックスを掲載します。
リンク先に本試験問題及びその解説を掲載しています。
択一式
○【問1】=労働者に関する問題:
▶労働基準法の総則(第1条~第12条)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
労働基準法第1条にいう、「人たるに値する生活」とは、社会の一般常識によって決まるものであるとされ、具体的には、「賃金の最低額を保障することによる最低限度の生活」をいう。
「労働基準法3条は労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、特定の信条を有することを、雇入れを拒む理由として定めることも、右にいう労働条件に関する差別取扱として、右規定に違反するものと解される。」とするのが、最高裁判所の判例である。
事業場において女性労働者が平均的に能率が悪いこと、勤続年数が短いことが認められたため、男女間で異なる昇格基準を定めていることにより男女間で賃金格差が生じた場合には、労働基準法第4条違反とはならない。
在籍型出向(出向元及び出向先双方と出向労働者との間に労働契約関係がある場合)の出向労働者については、出向元、出向先及び出向労働者三者間の取決めによって定められた権限と責任に応じて出向元の使用者又は出向先の使用者が、出向労働者について労働基準法等における使用者としての責任を負う。
労働者に支給される物又は利益にして、所定の貨幣賃金の代わりに支給するもの、即ち、その支給により貨幣賃金の減額を伴うものは労働基準法第11条にいう「賃金」とみなさない。
○【問2】=労働基準法の解釈(定義)に関する問題:【新傾向の組み合わせ問題】
▶労働基準法の解釈に関する次のアからウまでの各記述について、正しいものには〇、誤っているものには×を付した場合の組合せとして、正しいものはどれか。
労働基準法において一の事業であるか否かは主として場所的観念によって決定するが、例えば工場内の診療所、食堂等の如く同一場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部門が存する場合に、その部門が主たる部門との関連において従事労働者、労務管理等が明確に区別され、かつ、主たる部門と切り離して適用を定めることによって労働基準法がより適切に運用できる場合には、その部門を一の独立の事業とするとされている。
労働基準法において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいい、「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
労働契約とは、本質的には民法第623条に規定する雇用契約や労働契約法第6条に規定する労働契約と基本的に異なるものではないが、民法上の雇用契約にのみ限定して解されるべきものではなく、委任契約、請負契約等、労務の提供を内容とする契約も労働契約として把握される可能性をもっている。
A(ア〇 イ〇 ウ〇) B(ア〇 イ〇 ウ×) C(ア〇 イ× ウ〇)
D(ア× イ〇 ウ×) E(ア× イ× ウ〇)
○【問3】=労働契約等に関する問題:
▶労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
使用者は、労働基準法第14条第2項に基づき厚生労働大臣が定めた基準により、有期労働契約(当該契約を3日以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。
・【令和6年問3B】 【直近の改正事項】
使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により、労働者に対して労働契約の締結と有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の更新のタイミングごとに、「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」に加え、「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲」についても明示しなければならない。
使用者が労働者に対して損害賠償の金額をあらかじめ約定せず、現実に生じた損害について賠償を請求することは、労働基準法第16条が禁止するところではないから、労働契約の締結に当たり、債務不履行によって使用者が損害を被った場合はその実損害額に応じて賠償を請求する旨の約定をしても、労働基準法第16条に抵触するものではない。
使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは、利子をつけなければならない。
労働基準法第23条は、労働の対価が完全かつ確実に退職労働者又は死亡労働者の遺族の手に渡るように配慮したものであるが、就業規則において労働者の退職又は死亡の場合の賃金支払期日を通常の賃金と同一日に支払うことを規定しているときには、権利者からの請求があっても、 7日以内に賃金を支払う必要はない。
○【問4】=賃金のデジタル払いに関する問題: 【前年度の改正事項】
▶使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払方法として、労働基準法施行規則第7条の2第1項第3号に掲げる要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(指定資金移動業者)のうち労働者が指定するものの第2種資金移動業に係る日座への資金移動によることができる(いわゆる賃金のデジタル払い)が、次の記述のうち、労働基準法施行規則第7条の2第1項第3号に定めるものとして、誤っているものはどれか。
賃金の支払に係る資金移動を行う口座(以下本間において「口座」という。)について、労働者に対して負担する為替取引に関する債務の額が500万円を超えることがないようにするための措置又は当該額が500万円を超えた場合に当該額を速やかに500万円以下とするための措置を講じている。
破産手続開始の申立てを行ったときその他為替取引に関し負担する債務の履行が困難となったときに、口座について、労働者に対して負担する為替取引に関する債務の全額を速やかに当該労働者に弁済することを保証する仕組みを有していること。
口座について、労働者の意に反する不正な為替取引その他の当該労働者の責めに帰することができない理由で当該労働者に対して負担する為替取引に関する債務を履行することが困難となったことにより当該債務について当該労働者に損失が生じたときに、当該損失を補償する仕組みを有していること。
口座について、特段の事情がない限り、当該口座に係る資金移動が最後にあった日から少なくとも10年間は、労働者に対して負担する為替取引に関する債務を履行することができるための措置を講じていること。
口座への資金移動に係る額の受取について、現金自動支払機を利用する方法その他の通貨による受収ができる方法により1円単位で当該受取ができるための措置及び少なくとも毎月1回は当該方法に係る手数料その他の費用を負担することなく当該受取ができるための措置を講じていること。
○【問5】=労働時間に関する問題: 【個数問題】
▶労働基準法に定める労働時間に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
労働基準法第32条の2に定めるいわゆる1か月単位の変形労働時間制を適用するに当たっては、常時10人未満の労働者を使用する使用者であっても必ず就業規則を作成し、1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない定めをしなければならない。
使用者は、労働基準法第33条の「災害その他避けることのできない事由」に該当する場合であっても、同法第34条の休憩時間を与えなければならない。
労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(テレワーク)においては、「情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと」さえ満たせば、労働基準法第38条の2に定めるいわゆる事業場外みなし労働時間制を適用することができる。
・【令和6年問5エ】 【直近の改正事項】
使用者は、労働基準法第38条の3に定めるいわゆる専門業務型裁量労働制を適用するに当たっては、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、専門業務型裁量労働制を適用することについて「当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかつた当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。」を定めなければならない。
労働基準法第41条の2に定めるいわゆる高度プロフェッショナル制度は、同条に定める委員会の決議が単に行われただけでは足りず、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を所轄労働基準監督署長に届け出ることによって、この制度を導入することができる。
○【問6】=年次有給休暇に関する問題:
▶労働基準法に定める年次有給休暇に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
月曜日から金曜日まで1日の所定労働時間が4時間の週5日労働で、1週間の所定労働時間が20時間である労働者が、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した場合に労働基準法第39条(以下本間において「本条」という。)の規定により当該労働者に付与される年次有給休暇は、5労働日である。
月曜日から本曜日まで1日の所定労働時間が8時間の週4日労働で、1週間の所定労働時間が32時間である労働者が、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した場合に本条の規定により当該労働者に付与される年次有給休暇は、次の計算式により7労働日である。
〔計算式〕10日 × 4日 / 5.2日 ≒ 7.69日 端数を切り捨てて7日
令和6年4月1日入社と同時に10労働日の年次有給休暇を労働者に付与した使用者は、このうち5日については、令和7年9月30日までに時季を定めることにより与えなければならない。
使用者の時季指定による年5日以上の年次有給休暇の取得について、労働者が半日単位で年次有給休暇を取得した日数分については、本条〔第39条〕第8項の「日数」に含まれ、当該日数分について使用者は時季指定を要しないが、労働者が時間単位で取得した分については、本条第8項の「日数」には含まれないとされている。
産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業した期間及び生理日の就業が著しく困難な女性が同法第68条の規定によって就業しなかった期間は、本条〔第39条〕第1項「使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給体暇を与えなければならない。」の適用においては、これを出勤したものとみなす。
○【問7】=就業規則等に関する問題:
▶労働基準法に定める就業規則等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
労働基準法第89条第1号から第3号までの絶対的必要記載事項の一部が記載されていない就業規則は他の要件を其備していても無効とされている。
事業の附属寄宿合に労働者を寄宿させる使用者は、「起床、就寝、外出及び外泊に関する事項」、「行事に関する事項」、「食事に関する事項」、「安全及び衛生に関する事項」及び「建設物及び設備の管理に関する事項」について寄宿舎規則を作成し、行政官庁に届け出なければならないが、これらはいわゆる必要的記載事項であるから、そのいずれか一つを欠いても届出は受理されない。
同一事業場において、労働基準法第3条に反しない限りにおいて、一部の労働者についてのみ適用される別個の就業規則を作成することは差し支えないが、別個の就業規則を定めた場合には、当該2以上の就業規則を合したものが同法第89条の就業規則となるのであって、それぞれ単独に同条の就業規則となるものではないとされている。
育児介護休業法による育児体業も、労働基準法第89条第1号の休暇に含まれるものであり、育児体業の対象となる労働者の範囲等の付与要件、育児休業取得に必要な手続、体業期間については、就業規則に記載する必要があるとされている。
労働基準法第41条第3号の「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」は、同法の労働時間に関する規定が適用されないが、就業規則には始業及び終業の時刻を定めなければならないとされている。
選択式
次の文中の の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
1 年少者の労働に関し、最低年齢を設けている労働基準法第56条第1項は、「使用者は、 A 、これを使用してはならない。」と定めている。
2 最高裁判所は、労働者が始業時刻前及び終業時刻後の作業服及び保護具等の若脱等並びに始業時刻前の副資材等の受出し及び散水に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当するかが問題となった事件において、次のように判示した。
「労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)32条の労働時間(下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の B に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の B に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の B に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当すると解される。」
3 最高裁判所は、賃金に当たる退職金債権放棄の効力が問題となった事件において、次のように判示した。
本件事実関係によれば、本件退職金の「支払については、同法〔労働基準法〕24条1項本文の定めるいわゆる全額払の原則が適用されるものと解するのが相当である。しかし、右全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もつて労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活をおびやかすことのないようにしてその保護をはかろうとするものというべきであるから、本件のように、労働者たる上告人が退職に際しみずから賃金に該当する本件退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、右全額払の原則が右意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない。もつとも、右全額払の原則の趣旨とするところなどに鑑みれば、右意思表示の効力を肯定するには、それが上告人の C ものであることが明確でなければならないものと解すべきである」。
4 労働安全衛生法第45条により定期自主検査を行わなければならない機械等には、同法第37条第1項に定める特定機械等のほか D が含まれる。
5【一部補正】
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその付属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業(休業の日数が4日以上の場合に限る。)したときは、 E 、電子情報処理組織を使用して、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
選択肢:
①7日以内に ②14日以内に ③30日以内に ④管理監督下
⑤空気調和設備 ⑥研削盤 ⑦権利濫用に該当しない ⑧構内運搬車
⑨指揮命令下
⑩児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで
⑪児童が満18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで
⑫支配管理下 ⑬自由な意思に基づく ⑭従属関係下
⑮退職金債権放棄同意書への署名押印により行われた ⑯退職に接着した時期においてされた
⑰遅滞なく ⑱フォークリフト
⑲満15歳に満たない者については ⑳満18歳に満たない者については
選択式解答
A=⑩「児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで」(第56条第1項(労基法のパスワード)。こちら)
B=⑨「指揮命令下」(【三菱重工長崎造船所事件 = 最判平成12.3.9】。こちら)
C=⑬「自由な意思に基づく」(【シンガー・ソーイング・メシーン事件=最判昭和48.1.19】。こちら)
D= ⑱「フォークリフト」(安衛法施行令第15条第1項第1号(安衛法のパスワード)、安衛法のこちら以下の②(ⅰ))
E=⑰「遅滞なく」(規則第97条第1項柱書。こちら)
選択式の論点とリンク先
〔1〕問1
問1(こちら)は、いわゆる「最低年齢」(児童の使用禁止)に関する出題です。
労基法が原則として使用を禁止する児童とは、「満15歳に達した日以後の最初の3月31日までにある者」(満15歳の年度末までにある者)です(第56条第1項(労基法のパスワード)。こちら)。
義務教育終了までの者は、原則として使用できないものとしたものです。
選択肢(こちら)には、⑪「児童が満18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで」や、⑳「満18歳に満たない者については」がありますが、例えば、ご自分が高校生であったときにアルバイト等に就くことに公的な厳しい制約があったかどうかを思い出して頂くとよいです。
なお、児童手当法における児童とは、 「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者」をいいますから(原則として国内居住も必要です。児童手当法第3条第1項(社会一般のパスワード))、注意が必要です。
以上のような基本的な定義(における数字等)をしっかり記憶しておくことが、合格のために不可欠です。
〔2〕問2
問2(こちら)は、労働時間の定義を示した【三菱重工長崎造船所事件 = 最判平成12.3.9】からの出題です(こちら)。
判例の立場は、「指揮命令下説」と称されることもあり(こちらを参考)、そこから「指揮命令下」のキーワードを思い出すことも可能です。
なお、前年度の令和5年度の選択式においても、労働時間に関する判例から出題されており(【大林ファシリティーズ事件=最判平成19.10.19】。こちら)、そこでも「指揮命令下」というキーワードはその設問中に記載されていました。
〔3〕問3
問3(こちら)は、賃金債権の放棄が賃金全額払の原則に違反しないかが問題となった【シンガー・ソーイング・メシーン事件=最判昭和48.1.19】からの出題です。
当サイトでは、こちら以下です。
この判例については、択一式で頻繁に出題されており(直近の出題は、令和元年度の【令和元年問5B(こちら)】です)、難しくはなかったと思います。
空欄Cのいわゆる自由意思の法理(同意等が「労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在すること」)については、労働者の同意(自由意思)に基づく相殺の可否に関する判例(こちら以下)のほか、最近では、マタニティ・ハラスメントに関する【広島中央保健生協事件(以下、「マタハラ判決」といいいます)= 最判平成26.10.23】 (こちら以下)や、就業規則の変更による退職金の減額について労働者が同意していた事案である【山梨県民信用組合事件= 最判平成28.2.19】(こちら以下)などにおいても採用されています。
自由意思の法理は、労働法の根幹にかかわってくるという側面があるため、学者の関心も高いです(労働者の意思によって強行規定の適用を排除するようなことを認めかねないという問題があります。最近では、今年の2月に刊行された「注釈 労働基準法・労働契約法」第3巻の均等法の中で、マタハラ判決について、両角道代教授がかなりのページを割いて有益な論考を展開されています。また、自由意思の法理については、これまでも色々な雑誌で取り上げられているのですが、最近では、法律時報本年6月号で川口美貴教授が同法理の法的性格について検討されています)。
ちなみに、当サイトのツイッター(X)では、昨年の11月にこの自由意思の法理について取り上げていました(こちら。本問のメシーン事件は②の箇所)。
〔4〕問4
問4(こちら)は、定期自主検査の対象となる機械等の具体例を問うものです(当サイトでは、安衛法のこちら以下(安衛法のパスワード)の②(ⅰ))。
本問の解答は「フォークリフト」ですが、正解するのは結構厳しかったと思われます。
ただ、本試験会場においては、知識がなくても、あきらめずに粘らなければなりません。
定期自主検査の対象となる機械等としては、問題文より「特定機械等」が含まれるのであり(これは、問題文に記載がなくても覚えておく必要があります)、これに近いものが選択肢の中にあるかどうかを考える手があります。
選択肢の中で機械等らしきものとしては、⑤「空気調和設備」、⑥「研削盤」、⑧「構内運搬車」及び⑱「フォークリフト」があります
一方、特定機械等としては、例えば、建設用リフトがあります。
建設用リフトは、荷物用のエレベーターですが、荷物を上下させて運搬するという点では、フォークリフト(車のつめを上下させて荷物を移動・運搬等するもの)と共通する性格があり、いずれも昇降部分が壊れる等の危険性があるという共通性があります。
このような観点から、⑱「フォークリフト」を選択することも可能です。
〔5〕問5
問5(こちら)は、「労働者死傷病報告」の問題です。
当サイトでは、こちらで記載していますが、休業日数が4日以上かどうかで分かれており、正確な知識がないと正答しにくいです。
ただ、令和3年度(【令和3年問10E(こちら)】)に関連問題が出題されていますので(その他にも、労働者死傷病報告に関する過去問は少なくないです)、過去問を分析する過程で労働者死傷病報告の報告時期についても押さえた方もおられるでしょう。
なお、「労働者死傷病報告」については、令和7年1月1日施行の改正(【令和6.3.18厚生労働省令第45号】。「じん肺法施行規則等の一部を改正する省令」)により、本件報告を含む報告数の多い報告について、原則として電子申請によることとされました(例外として、当分の間は、従来通り、報告書により提出することも可能です。令和6年省令第45号附則第2条等。詳細は、安衛法のこちらです)。
そこで、 本問(こちら)の設問中にも、「、電子情報処理組織を使用して」という文言を追加して補正してあります。
ちなみに、労働者死傷病報告は、労基法においても規定があり(労基法のこちら)、令和2年度(【令和2年問2E(こちら)】)に労基法で出題されています(ただし、労働者死傷病報告ではなく、事業改正の際の報告についての出題です)。
安衛法のテキストの最後の方は、結構、学習が十分行き届かないことが少なくなく、この労働者死傷病報告の報告時期についても、例えば、選択肢の①「7日以内に」などとしがちであり、本問は難しかったといえます。
総評
今回の選択式は、安衛法の2つの空欄(空欄DとE)が結構厳しく、学習の進んだ方であっても、2問とも落とす可能性があります。その場合は、労基法の3問を全問正解することが要求されてしまいます。
労基・安衛法の選択式が怖いのは、このようなパターン(安衛法の2つの空欄が結構難しくて両方とも誤答する危険性があるため、労基法の3つの空欄の全部正解が不可欠となるパターン)です。
安衛法についても、選択式に出題されそうな基本的で「危ない」数字・キーワード等を反復学習して記憶しておく必要があります。
今回、労基法の3つの空欄については、基本的な知識や論点であり、通常の学習でカバーできたと思います。
択一式については、直近の改正事項から2肢、前年度の改正事項から1問(5肢)出題されており、近時の改正事項からの出題が多かったのが特徴でした。
その他の設問については、過去問と同様ないしその周辺の知識が問われていることが多く、難易度的にはそう高くはなかったです。
各肢についてざっと見ますと、以下の通りです。
【問1】(こちら以下)については、肢のB、C、Dは、過去問もあり、どのテキストにも記載されている知識であるため、正答しやすかったといえます。
【問2】(こちら以下)については、3つの肢のうち、正しいものには〇、誤っているものには×を付した場合の組合せとして正しいものを解答するものであり、初めての出題形式でした。
ただ、肢アとイは基本的知識であり、この両者が正答できれば選択肢が絞れ正解できる内容でしたので、肢ウがやや微妙だとしても、あまり影響がありませんでした。
【問3】(こちら以下)については、【問3B】は、労働条件の明示事項に関する直近の改正事項であり、【問3A】は、「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」に関する直近の改正事項の周辺からの出題でした。後者の数字について、きちんと記憶している学習方法をとれていたかどうかをチェックする必要があります。
【問3E】については、第23条(金品の返還)の制度趣旨から検討すると、判断しやすいと思います。
【問4】(こちら以下)は、賃金のデジタル払いに関する出題であり、前年度の改正事項からでした。
当サイトでは、全肢について記載しており、数字を太字にしてはいましたが、かなり細かいため、厳しかったと思います。
【問5】(こちら以下)は、個数問題です。個々の肢は、比較的平易な内容なのですが、ひとつでも不確かな場合には不正解になるため厄介です。
なお、専門業務型裁量労働制に関する【問5エ】は、直近の改正事項からの出題でした。
【問6】(こちら以下)は、年次有給休暇からの出題です。
比例付与から2肢、使用者の時季指定義務から2肢、出勤日とみなす日から1肢出題されており、いずれも正確な知識が要求されます。
【問7】(こちら以下)は、主に就業規則に関する出題です。
肢A(こちら)は、「就業規則」の絶対的必要記載事項の一部不記載の問題、肢B(こちら)は、「寄宿舎規則」の必要的記載事項の(一部)不記載の問題ですが、前者が必要記載事項の不記載の場合の「事後的な問題(有効性・効力の問題)」であり、後者が不記載の場合の「事前的な問題(受理されるかの問題)」です。
正解肢の内容については、【令和3年問7A(こちら)】で出題されていましたので、正答することは十分の可能でした。
今回は、事例問題や実務色の強い問題などが少なく、取り組みやすい出題内容であったとと思います。
全体的な知識は市販の薄いテキストによって確認し、要所を当サイトで確認して頂くといった学習方法でよさそうです。