令和2年度 労災保険法

令和2年度の労災保険法の本試験問題のインデックスを掲載します。

 

リンク先に本試験問題及びその解説を掲載しています。

 

択一式

○【問1】= 支給制限に関する問題:

 

【令和2年問1A】

(業務遂行中の負傷であれば、労働者が過失により自らの負傷の原因となった事故を生じさせた場合、それが重大な過失でない限り、政府は保険給付の全部又は一部を行わないとすることはできないか)

 

【令和2年問1B】

(業務遂行中の負傷であれば、負傷の原因となった事故が、負傷した労働者の故意の犯罪行為によって生じた場合であっても、政府は保険給付の全部又は一部を行わないとすることはできないか)

 

【令和2年問1C】

(業務遂行中の負傷であれば、労働者が過失により自らの負傷を生じさせた場合、それが重大な過失でない限り、政府は保険給付の全部又は一部を行わないとすることはできないか)

 

【令和2年問1D】

(業務起因性の認められる疾病に罹患した労働者が、療養に関する指示に従わないことにより疾病の程度を増進させた場合であっても、指示に従わないことに正当な理由があれば、政府は保険給付の全部又は一部を行わないとすることはできないか)

 

【令和2年問1E】

(業務起因性の認められる疾病に罹患した労働者が、療養に関する指示に従わないことにより疾病の回復を妨げた場合であっても、指示に従わないことに正当な理由があれば、政府は保険給付の全部又は一部を行わないとすることはできないか)

 

 

○【問2】= 労災保険に関する諸問題:

 

【令和2年問2A】

(船舶が沈没した際現にその船舶に乗っていた労働者の死亡が3か月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期がわからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没した日に、当該労働者は、死亡したものと推定するか)

 

【令和2年問2B】

(航空機に乗っていてその航空機の航行中行方不明となった労働者の生死が3か月間わからない場合には、遺族補償給付、葬祭料、遺族給付及び葬祭給付の支給に関する規定の適用については、労働者が行方不明となって3か月経過した日に、当該労働者は、死亡したものと推定するか)

 

 ・【令和2年問2C】

(偽りその他不正の手段により労災保険に係る保険給付を受けた者があるときは、政府は、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収することができるか)

 

【令和2年問2D】

(偽りその他不正の手段により労災保険に係る保険給付を受けた者があり、事業主が虚偽の報告又は証明をしたためその保険給付が行われたものであるときは、政府は、その事業主に対し、保険給付を受けた者と連帯してその保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部である徴収金を納付すべきことを命ずることができるか)

 

【令和2年問2E】(改正に伴い一部補正)

(労災保険法に基づく保険給付を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの(遺族補償年金については当該遺族補償年金を受けることができる他の遺族、複数事業労働者遺族年金については当該複数事業労働者遺族年金を受けることができる他の遺族、遺族年金については当該遺族年金を受けることができる他の遺族)は、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができるか)

 

 

○【問3】= 一人親方等の特別加入に係る特定作業従事者の特定作業に関する問題:

 

労災保険法第33条第5号の「厚生労働省令で定める種類の作業に従事する者」は労災保険に特別加入することができるが、「厚生労働省令で定める種類の作業」に当たる次の記述のうち、誤っているものはどれか。

 

【令和2年問3A】

A 国又は地方公共団体が実施する訓練として行われる作業のうち求職者を作業環境に適応させるための訓練として行われる作業

 

【令和2年問3B】

B 家内労働法第2条第2項の家内労働者又は同条第4項の補助者が行う作業のうち木工機械を使用して行う作業であって、仏壇又は本製若しくは竹製の食器の製造又は加工に係るもの

 

【令和2年問3C】

C 農業(畜産及び養蚕の事業を含む。)における作業のうち、厚生労働大臣が定める規模の事業場における土地の耕作若しくは開墾、植物の栽培若しくは採取又は家畜(家きん及びみつばちを含む。)若しくは蚕の飼育の作業であって、高さが1メートル以上の箇所における作業に該当するもの

 

【令和2年問3D】

D 日常生活を円滑に営むことができるようにするための必要な援助として行われる作業であって、炊事、洗濯、掃除、買物、児童の日常生活上の世話及び必要な保護その他家庭において日常生活を営むのに必要な行為

 

【令和2年問3E】

E 労働組合法第2条及び第5条第2項の規定に適合する労働組合その他これに準ずるものであって厚生労働大臣が定めるもの(常時労働者を使用するものを除く。以下「労働組合等」という。)の常勤の役員が行う集会の運営、団体交渉その他の当該労働組合等の活動に係る作業であって、当該労働組合等の事務所、事業場、集会場又は道路、公園その他の公共の用に供する施設におけるもの(当該作業に必要な移動を含む。)

 

 

○【問4】= 罰則に関する問題:個数問題

 

【令和2年問4ア】

(事業主が、行政庁から厚生労働省令で定めるところにより労災保険法の施行に関し必要な報告を命じられたにもかかわらず、報告をしなかった場合、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されるか)

 

【令和2年問4イ】

(事業主が、行政庁から厚生労働省令で定めるところにより労災保険法の施行に関し必要な文書の提出を命じられたにもかかわらず、提出をしなかった場合、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されるか)

 

【令和2年問4ウ】

(事業主が、行政庁から厚生労働省令で定めるところにより労災保険法の施行に関し必要な文書の提出を命じられた際に、虚偽の記載をした文書を提出した場合、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されるか)

 

【令和2年問4エ】

(行政庁が労災保険法の施行に必要な限度において、当該織員に身分を示す証明書を提示しつつ事業場に立ち入り質問をさせたにもかかわらず、事業主が当該職員の質問に対し虚偽の陳述をした場合、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されるか)

 

【令和2年問4オ】

(行政庁が労災保険法の施行に必要な限度において、当該職員に身分を示す証明書を提示しつつ事業場に立ち入り帳簿書類の検査をさせようとしたにもかかわらず、事業主が検査を拒んだ場合、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されるか)

 

 

○【問5】= 障害補償給付の加重に関する問題:

 

【令和2年問5】

 

障害等級認定基準についての行政通知によれば、既に右示指の用を廃していた(障害等級第12級の9、障害補償給付の額は給付基礎日額の156日分)者が、新たに同一示指を亡失した場合には、現存する身体障害に係る障害等級は第11級の6(障害補償給付の額は給付基礎日額の223日分)となるが、この場合の障害補償給付の額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 

A 給付基礎日額の67日分

B 給付基礎日額の156日分

C 給付基礎日額の189日分

D 給付基礎日額の223分

E 給付基礎日額の379日分 

 

 

○【問6】= 業務災害の保険給付に関する問題:【没問】

 

【令和2年問6A】

(労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため所定労働時間のうちその一部分のみについて労働し、当該労働に対して支払われる賃金の額が給付基礎日額の20%に相当する場合、休業補償給付と休業特別支給金とを合わせると給付基礎日額の100%となるか)

  

 ・【令和2年問6B】

(業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合に限り、その日において、使用者は打切補償を支払ったものとみなされ、当該労働者について解雇制限は解除されるか)

 

  ・【令和2年問6C】

(業務上の災害により死亡した労働者Yには2人の子がいる。1人はYの死亡の当時19歳であり、Yと同居し、Yの収入によって生計を維持していた大学生で、もう1人は、Yの死亡の当時17歳であり、Yと離婚した元妻と同居し、Yが死亡するまで、Yから定期的に養育費を送金されていた高校生であった。2人の子は、遺族補償年金の受給資格者であり、同順位の受給権者となるか)

 

 ・【令和2年問6D】

(障害補償給付を支給すべき身体障害の障害等級については、同一の業務災害により身体障害が2以上ある場合で、一方の障害が第14級に該当するときは、重い方の身体障害の該当する障害等級によるか)

 

 ・【令和2年問6E】

(介護補償給付は、親族又はこれに準ずる者による介護についても支給されるが、介護の費用として支出した額が支給されるものであり、「介護に要した費用の額の証明書」を添付しなければならないことから、介護費用を支払わないで親族又はこれに準ずる者による介護を受けた場合は支給されないか)

 

 

○【問7】= 特別支給金に関する問題:

 

【令和2年問7A】

(労災保険特別支給金支給規則第6条第1項に定める特別支給金の額の算定に用いる算定基礎年額は、負傷又は発病の日以前1年間(雇入後1年に満たない者については、雇入後の期間)に当該労働者に対して支払われた特別給与(3か月を超える期間ごとに支払われる賃金をいう)の総額とするのが原則であるが、いわゆるスライド率が適用される場合でも、算定基礎年額が150万円を超えることはないか)

 

【令和2年問7B】(一部補正)

(特別支給金の支給の申請は、原則として、関連する保険給付の支給の請求と同時に行うこととなるが、傷病特別支給金、傷病特別年金の申請については、当分の間、休業特別支給金の支給の申請の際に特別給与の総額についての届出を行っていない者を除き、傷病補償年金、複数事業労働者傷病年金又は傷病年金の支給の決定を受けた者は、傷病特別支給金、傷病特別年金の申請を行ったものとして取り扱うか)

 

【令和2年問7C】

(第三者の不法行為によって業務上負傷し、その第三者から同一の事由について損害賠償を受けていても、特別支給金は支給申請に基づき支給され、調整されることはないか)

 

【令和2年問7D】

(休業特別支給金の支給は、社会復帰促進等事業として行われているものであることから、その申請は支給の対象となる日の翌日から起算して5年以内に行うこととされているか)

 

【令和2年問7E】

(労災保険法による障害補償年金、傷病補償年金、遺族補償年金を受ける者が、同一の事由により厚生年金保険法の規定による障害厚生年金、遺族厚生年金等を受けることとなり、労災保険からの支給額が減額される場合でも、障害特別年金、傷病特別年金、遺族特別年金は減額されないか) 

 

 

 

選択式

次の文中の   の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 

通勤災害における通勤とは、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間の往復等の移動を、  な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされるが、住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動も、厚生労働省令で定める要件に該当するものに限り、通勤に当たるとされている。

 厚生労働省令で定める要件の中には、  に伴い、当該  の直前の住居と就業の場所との間を日々往復することが当該往復の距離等を考慮して困難となったため住居を移転した労働者であって、次のいずれかに掲げるやむを得ない事情により、当該  の直前の住居に居住している配偶者と別居することとなったものによる移動が挙げられている。

 

イ 配偶者が、   にある労働者又は配偶者の父母又は同居の親族を  すること。

 

口 配偶者が、学校等に在学し、保育所若しくは幼保連携型認定こども園に通い、又は公共職業能力開発施設の行う職業訓練を受けている同居の子(  歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子に限る。)を養育すること。

 

ハ 配偶者が、引き続き就業すること。

 

二 配偶者が、労働者又は配偶者の所有に係る住宅を管理するため、引き続き当該住宅に居住すること。

 

ホ その他配偶者が労働者と同居できないと認められるイから二までに類する事情

 

選択肢:

 

①12 ②15 ③18 ④20

⑤介護 ⑥経済的 ⑦効率的 ⑧合理的 ⑨孤立状態 ⑩支援 ⑪失業状態 ⑫就職 

⑬出張 ⑭常態的 ⑮転職 ⑯転任 ⑰貧困状態 ⑱扶養 ⑲保護 ⑳要介護状態

 

 

 

 

選択式解答

A=⑧合理的(第7条第2項

 

B=⑯転任(施行規則第7条第1号

 

C=⑳要介護状態(施行規則第7条第1号イ

 

D=⑤介護(同上)

 

E=③18(施行規則第7条第1号ロ

 

 

選択式の論点とリンク先

今回の選択式は、通勤の要件の問題(労災保険法のこちら以下)から5つの空欄が作成されました。

 

1 空欄のA

 

空欄のAについては、通勤の要件について、当サイトではゴロ合わせもあること、また、健康保険法の「移送費」の中(健保法のこちら以下の※の箇所)で、労災保険法の「通勤」の要件との違いについても説明していることから、確保頂けたのではないかと思います。

近時は、合理的な経路に関して【平成29年問5D(こちら)】で出題されています。

 

 

2 空欄のB以下

 

空欄のB以下は、「単身赴任者の赴任先・帰省先住居間の移動」の施行規則に関する問題であり(こちら以下施行規則第7条)、やや細かいです。

労災保険法の苦手な方は、この施行規則までカバーできなかったかもしれません。

当サイトでは、こちら以下で掲載しています。

 

空欄Bの「転任」については、太字の紫色で強調しています(「転勤」とか、「異動」などと紛らわしく、選択式対策を考慮していたものです)。

 

空欄C以下については、一度、この条文ないし当サイトの記載内容をご覧になっていないと、正答がやや厳しそうな空欄もあります。

空欄C・Dの介護関係については、当サイトでは、「2週間」以上という数字は赤字にしていたのですが、別の箇所が出題されました。

空欄C以下は、設問を読みますと、「労働者が一定のやむを得ない事情により配偶者と別居して単身赴任した場合に、赴任先と帰省先住居との間の移動も通勤災害の対象としたもの」という概要は把握することができます。

そして、空欄Eを含むロは、子の養育の問題を扱っており、対して、空欄のC・Dを含むイについては、「配偶者の父母」とあることも考慮して、「介護」の問題であることを連想できるかが鍵でした。

 

この労災保険法の選択式は、労災保険法が得意な方にとってはクリアーできる内容でしたが、苦手な方にとっては3点確保できるかどうか、結構微妙だったと思います。

 

 

総評

選択式については、特定の箇所から空欄5つが出題され、「単身赴任者の赴任先・帰省先住居間の移動」の問題を十分学習されていなかった場合は、やや厳しかったと思われます。

 

択一式については、問3と問4が難しい内容でした。

問6は没問となりましたが、問7も没問といえ、労災保険法の択一式でペースを乱された受験者の方もおられると思います。

良問もあるのですが、没問以外にもあまり作問が芳しくないものもあり、全体として択一式のの出来があまりよくないです。

 

労災保険法については、難問が出題されることもあり、基本的な知識を固めて、選択式・択一式ともに、基準点は下回らないようにする守備的な学習を心掛けるのがよさそうです。

 

 

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