令和4年度 厚生年金保険法
令和4年度の厚生年金保険法の本試験問題のインデックスを掲載します。
リンク先に本試験問題及びその解説を掲載しています。
択一式
○【問1】= 併給の調整に関する諸問題:
・【令和4年問1】(国年法のパスワード)
▶次のアからオの記述のうち、厚生年金保険法第38条第1項及び同法附則第17条の規定によってどちらか一方の年金の支給が停止されるものの組合せとして正しいものはいくつあるか。ただし、いずれも、受給権者は65歳に達しているものとする。
ア 老齢基礎年金と老齢厚生年金
イ 老齢基礎年金と障害厚生年金
ウ 障害基礎年金と老齢厚生年金
エ 障害基礎年金と遺族厚生年金
オ 遺族基礎年金と障害厚生年金
A 一つ
B 二つ
C 三つ
D 四つ
E 五つ
○【問2】= 高齢任意加入被保険者に関する諸問題:
▶適用事業所に使用される高齢任意加入被保険者(以下本問において「当該被保険者」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(当該被保険者を使用する適用事業所の事業主が、当該被保険者に係る保険料の半額を負担し、かつ、当該被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負うことにつき同意をしたときを除き、当該被保険者は保険料の全額を負担するが、保険料の納付義務は当該被保険者が保険料の全額を負担する場合であっても事業主が負う。)
(当該被保険者に係る保険料の半額を負担し、かつ、当該被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負うことにつき同意をした適用事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を得て、将来に向かって当該同意を撤回することができる。)
(当該被保険者が保険料(初めて納付すべき保険料を除く。)を滞納し、厚生労働大臣が指定した期限までにその保険料を納付しないときは、厚生年金保険法第83条第1項に規定する当該保険料の納期限の属する月の末日に、その被保険者の資格を喪失する。なお、当該被保険者の事業主は、保険料の半額を負担し、かつ、当該被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負うことについて同意していないものとする。)
(当該被保険者の被保険者資格の取得は、厚生労働大臣の確認によってその効力を生ずる。)
(当該被保険者が、実施機関に対して当該被保険者資格の喪失の申出をしたときは、当該申出が受理された日の翌日(当該申出が受理された日に更に被保険者の資格を取得したときは、その日)に被保険者の資格を喪失する。)
○【問3】= 厚生年金保険法に関する諸問題:
▶厚生年金保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(甲は、昭和62年5月1日に第3種被保険者の資格を取得し、平成元年11月30日に当該被保険者資格を喪失した。甲についての、この期間の厚生年金保険の被保険者期間は、36 月である。)
(老齢厚生年金の加給年金額の加算の対象となっていた子(障害等級に該当する障害の状態にないものとする。)が、18歳に達した日以後の最初の3月31日よりも前に婚姻したときは、その子が婚姻した月の翌月から加給年金額の加算がされなくなる。)
(適用事業所に使用されている第1号厚生年金被保険者である者は、いつでも、当該被保険者の資格の取得に係る厚生労働大臣の確認を請求することができるが、当該被保険者であった者が適用事業所に使用されなくなった後も同様に確認を請求することができる。)
(障害手当金の受給要件に該当する被保険者が、障害手当金の障害の程度を定めるべき日において遺族厚生年金の受給権者である場合は、その者には障害手当金は支給されない)
(同時に2以上の適用事業所で報酬を受ける厚生年金保険の被保険者について標準報酬月額を算定する場合においては、事業所ごとに報酬月額を算定し、その算定した額の平均額をその者の報酬月額とする。)
○【問4】= 保険料の繰上徴収に関する諸問題:
▶次のアからオの記述のうち、厚生年金保険法第85条の規定により、保険料を保険料の納期前であっても、すべて徴収することができる場合として正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。
ア 法人たる納付義務者が法人税の重加算税を課されたとき。
イ 納付義務者が強制執行を受けるとき。
ウ 納付義務者について破産手続開始の申立てがなされたとき。
エ 法人たる納付義務者の代表者が死亡したとき。
オ 被保険者の使用される事業所が廃止されたとき。
A(アとウ) B(アとエ) C(イとウ) D(イとオ) E(ウとオ)
○【問5】= 老齢厚生年金の支給繰上げ、支給繰下げに関するに関する諸問題:
▶老齢厚生年金の支給繰上げ、支給繰下げに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(老齢厚生年金の支給繰上げの請求は、老齢基礎年金の支給繰上げの請求を行うことができる者にあっては、その請求を同時に行わなければならない。)
・【令和4年問5B】 【直近の改正事項】
(昭和38年4月1日生まれの男性が老齢厚生年金の支給繰上げの請求を行い、60歳0か月から老齢厚生年金の受給を開始する場合、その者に支給する老齢厚生年金の額の計算に用いる減額率は24パーセントとなる。)
(68歳0か月で老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行った者に対する老齢厚生年金の支給は、当該申出を行った月の翌月から開始される。)
(老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行った場合でも、経過的加算として老齢厚生年金に加算された部分は、当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出に応じた増額の対象とはならない。)
・【令和4年問5E】 【直近の改正事項】
(令和4年4月以降、老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行うことができる年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられた。ただし、その対象は、同年3月31日時点で、70歳未満の者あるいは老齢厚生年金の受給権発生日が平成29年4月1日以降の者に限られる。)
○【問6】= 加給年金額に関する諸問題:
▶加給年金額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(障害等級1級又は2級に該当する者に支給する障害厚生年金の額は、当該受給権者によって生計を維持しているその者の65歳未満の配偶者又は子(18歳に達する日以後最初の3月31日までの間にある子及び20歳未満で障害等級1級又は2級に該当する障害の状態にある子)があるときは、加給年金額が加算された額となる。)
(昭和9年4月2日以後に生まれた障害等級1級又は2級に該当する障害厚生年金の受給権者に支給される配偶者に係る加給年金額については、受給権者の生年月日に応じた特別加算が行われる。)
(老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものに限る。)の受給権者が、受給権を取得した以後に初めて婚姻し、新たに65歳未満の配偶者の生計を維持するようになった場合には、当該配偶者に係る加給年金額が加算される。)
(報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の年金額には、加給年金額は加算されない。また、本来支給の老齢厚生年金の支給を繰り上げた場合でも、受給権者が65歳に達するまで加給年金額は加算されない。)
(老齢厚生年金の加給年金額の対象となっている配偶者が、収入を増加させて、受給権者による生計維持の状態がやんだ場合であっても、当該老齢厚生年金の加給年金額は減額されない。)
○【問7】= 適用事業所や被保険者に関する諸問題:
▶厚生年金保険法の適用事業所や被保険者に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
なお、文中のX、Y、Zは、厚生年金保険法第12条第1号から第4号までに規定する適用除外者には該当しないものとする。
(常時40人の従業員を使用する地方公共団体において、1週間の所定労働時間が25時間、月の基本給が15万円で働く短時間労働者で、生徒又は学生ではないX(30歳)は、厚生年金保険の被保険者とはならない。)
(代表者の他に従業員がいない法人事業所において、当該法人の経営への参画を内容とする経常的な労務を提供し、その対価として、社会通念上労務の内容にふさわしい報酬が経常的に支払われている代表者Y(50歳)は、厚生年金保険の被保険者となる。)
(常時90人の従業員を使用する法人事業所において、1週間の所定労働時間が30時間、1か月間の所定労働日数が18日で雇用される学生Z(18歳)は、厚生年金保険の被保険者とならない。なお、Zと同一の事業所に使用される通常の労働者で同様の業務に従事する者の1週間の所定労働時間は40時間、1か月間の所定労働日数は24日である。)
(厚生年金保険の強制適用事業所であった個人事業所において、常時使用する従業員が5人未満となった場合、任意適用の申請をしなければ、適用事業所ではなくなる。)
(宿泊業を営み、常時10人の従業員を使用する個人事業所は、任意適用の申請をしなくとも、厚生年金保険の適用事業所となる。)
○【問8】= 在職老齢年金に関する諸問題:
▶厚生年金保険法の在職老齢年金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(在職老齢年金の支給停止額を計算する際に用いる総報酬月額相当額は、在職中に標準報酬月額や標準賞与額が変更されることがあっても、変更されない。)
(在職老齢年金は、総報酬月額相当額と基本月額との合計額が支給停止調整額を超える場合、年金額の一部又は全部が支給停止される仕組みであるが、適用事業所に使用される70歳以上の者に対しては、この在職老齢年金の仕組みが適用されない。)
(在職中の被保険者が65歳になり老齢基礎年金の受給権が発生した場合において、老齢基礎年金は在職老齢年金の支給停止額を計算する際に支給停止の対象とはならないが、経過的加算額については在職老齢年金の支給停止の対象となる。)
(60歳以降も在職している被保険者が、60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者であって被保険者である場合で、雇用保険法に基づく高年齢雇用継続基本給付金の支給を受けることができるときは、その間、60歳台前半の老齢厚生年金は全額支給停止となる。)
(在職老齢年金について、支給停止額を計算する際に使用される支給停止調整額は、一定額ではなく、年度ごとに改定される場合がある。)
○【問9】= 厚生年金保険法に関する諸問題:
▶厚生年金保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1つの種別の厚生年金保険の被保険者期間のみを有する者の総報酬制導入後の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の計算では、総報酬制導入後の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額に再評価率を乗じて得た額の総額を当該被保険者期間の月数で除して得た平均標準報酬額を用いる。)
・【令和4年問9B】 【直近の改正事項】
(65歳以上の老齢厚生年金受給者については、毎年基準日である7月1日において被保険者である場合、基準日の属する月前の被保険者であった期間をその計算の基礎として、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する在職定時改定が導入された。)
(保険給付を受ける権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利については、「支払期月の翌月の初日」がいわゆる時効の起算点とされ、各起算点となる日から5年を経過したときに時効によって消滅する。)
(2つの種別の厚生年金保険の被保険者期間を有する者が、老齢厚生年金支給繰下げの申出を行う場合、両種別の被保険者期間に基づく老齢厚生年金の繰下げについて、申出は同時に行わなければならない。)
(加給年金額が加算されている老齢厚生年金の受給者である夫について、その加算の対象となっている妻である配偶者が、老齢厚生年金の計算の基礎となる被保険者期間が240月以上となり、退職し再就職はせずに、老齢厚生年金の支給を受けることができるようになった場合、老齢厚生年金の受給者である夫に加算されていた加給年金額は支給停止となる。)
○【問10】= 厚生年金保険法に関する諸問題:
▶厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(常時5人の従業員を使用する個人経営の美容業の事業所については、法人化した場合であっても適用事業所とはならず、当該法人化した事業所が適用事業所となるためには、厚生労働大臣から任意適用事業所の認可を受けなければならない。)
・【令和4年問10B】【一部補正】
(適用事業所に使用される70歳未満の者であって、2か月以内の期間を定めて臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないものは、厚生年金保険法第12条第1号に規定する適用除外に該当せず、使用される当初から厚生年金保険の被保険者となる。)
(被保険者であった45歳の夫が死亡した当時、当該夫により生計を維持していた子のいない38歳の妻は遺族厚生年金を受けることができる遺族となり中高齢寡婦加算も支給されるが、一方で、被保険者であった45歳の妻が死亡した当時、当該妻により生計を維持していた子のいない38歳の夫は遺族厚生年金を受けることができる遺族とはならない。)
(障害等級2級の障害厚生年金の額は、老齢厚生年金の例により計算した額となるが、被保険者期間については、障害認定日の属する月の前月まで被保険者期間を基礎とし、計算の基礎となる月数が300に満たないときは、これを300とする。)
(保険給付の受給権者が死亡し、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときにおいて、未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対しての支給は、全員に対してしたものとみなされる。)
選択式
次の文中の の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
1 厚生年金保険法第81条の2の2第1項の規定によると、産前産後休業をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、主務省令で定めるところにより実施機関に申出をしたときは、同法第81条第2項の規定にかかわらず当該被保険者に係る保険料であってその産前産後休業を A からその産前産後休業が B までの期間に係るものの徴収は行わないとされている。
2 厚生年金保険の被保険者であるX(50歳)は、妻であるY(45歳)及びYとYの先夫との子であるZ(10歳)と生活を共にしていた。XとZは養子縁組をしていないが、事実上の親子関係にあった。また、Xは、Xの先妻であるⅤ(50歳)及びXとⅤとの子であるW(15歳)にも養育費を支払っていた。Ⅴ及びWは、Xとは別の都道府県に在住している。この状況で、Xが死亡した場合、遺族厚生年金が最初に支給されるのは、 C である。なお、遺族厚生年金に係る保険料納付要件及び生計維持要件は満たされているものとする。
3 令和4年4月から、65歳未満の在職老齢年金制度が見直されている。
令和4年度では、総報酬月額相当額が41万円、老齢厚生年金の基本月額が10万円の場合、支給停止額は D となる。【直近の改正事項】
4 厚生年金保険法第47条の2によると、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その傷病に係る初診日において被保険者であった者であって、障害認定日において同法第47条第2項に規定する障害等級(以下「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態になかったものが、障害認定日から同日後 E までの間において、その傷病により障害の状態が悪化し、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、その者は、その期間内に障害厚生年金の支給を請求することができる。なお、障害厚生年金に係る保険料納付要件は満たされているものとする。
選択肢:
①1年半を経過する日 ②5年を経過する日
③60歳に達する日の前日 ④65歳に達する日の前日
⑤開始した日の属する月 ⑥開始した日の属する月の翌月 ⑦開始した日の翌日が属する月 ⑧開始した日の翌日が属する月の翌月
⑨月額2万円 ⑩月額4万円 ⑪月額5万円 ⑫月額10万円
⑬終了する日の属する月 ⑭終了する日の属する月の前月 ⑮終了する日の翌日が属する月
⑯終了する日の翌日が属する月の前月
⑰V ⑱W ⑲Y ⑳Z
選択式解答
A=⑤「開始した日の属する月」(第81条の2の2第1項)
B=⑯「終了する日の翌日が属する月の前月」(同上)
C=⑱「W」(第66条)
D=⑨「月額2万円」(法附則第11条第1項等)
E=④「65歳に達する日の前日」(第47条の2)
選択式の論点とリンク先
〔1〕問1
問1(空欄のA及びB。こちら)は、産前産後休業期間中の保険料が免除される期間についての出題です(厚年法のこちら以下)。
「産前産後休業開始月から、当該産前産後休業の終了日翌日が属する月の前月までの期間」に係る保険料が免除されます。
育児休業期間中の保険料の免除の期間とパラレルであり(こちら。ちなみに、令和4年10月1日施行の育児休業等期間中の保険料の免除に関する改正によって、前掲のリンク先の②が追加されています)、当サイトでは、育児休業期間中の保険料の免除の個所(こちら)でゴロ合わせで押さえていました(「育児はご免かい? よー、おまえ」)。
このゴロ合わせを覚えていさえすれば、空欄AとBはサービス問題になります。
近年、この類の出題がチョロチョロと出題されています(例えば、【令和3年問10C(こちら)】など)。
当サイトでは、もう少し単純なケースをこちらで解説していましたが、今回出題されたのは、この当サイトの事例の「後妻B」(上記の問2の妻Y)に子(Z)があるケースです。
ただし、先の当サイトの具体例では詳細に解説をしており、この部分を理解して頂いていれば、本問についても処理することができました。
今回の本試験では、択一式も含め、具体例・事例について出題されるケースが従来より増えています(従来も国年法の択一式では事例問題が多かったですが、今回は労働法関係で目立ちました)。
ただ、このような事例問題についても、基本的には、要件(等)を確実に記憶し現場で瞬時に思い出せるように学習していれば、あとは事案に「あてはめ」をするだけです。
事例問題を短時間で解けるように慣れておくという訓練は必要でしょうが(市販の事例問題を特集した雑誌のほか、当サイトの「事例問題対策講座」などをご利用下さい)、まずは、必要な知識を記憶し瞬時にその記憶を喚起する訓練を重ねるという日常の学習が重要です。
しばしば「基本が大切」といわれますが、「出題されやすい事項をひととおり理解したあと、確実に記憶する、そして、その知識をいつでも喚起することができるように反復して訓練する」といった地道な作業がまさしく試験学習の「基本」となります。
そして、なにが「出題されやすい事項」なのかを把握するためには、「過去問」の分析が不可欠です(当サイトの太字や色がついた部分です)。
また、出題されやすい事項について「理解」なく「丸暗記」していても、少し事例問題でひねられますと(典型が本問2であり、当サイトの事例がひねられています)処理できなくなります。
さらに、「確実に記憶」していない知識は、時間的余裕のない択一式の現場では役に立ちません。
そこで、ゴロ合わせを利用したり、図表によるイメージ化を図る(例:この事項は、あの図の右上にあった等)といった工夫も必要になります。
このように学習の「基本」をイメージして頂きますと、学習の指針も見えてくるのではないかと思います。
もとに戻りますが、本問2の事案は、前掲(こちら)の図の通りです(対して、当サイトで掲載していました事例は、前掲のこちらでした。本問では、子の「Z」が追加されている点が異なります)。
空欄のCは、「遺族厚生年金が最初に支給されるのは」に対するものですから、まずは、遺族厚生年金の支給要件のうち、特に「遺族の要件」を(本問を解く上で必要な範囲で)瞬時に思い出すことが必要です。
こちらの図のとおりであり、本問に関連する部分ですと、「配偶者」と「子」がともに第1順位であることを思い出します。
なお、遺族厚生年金の受給権者となる者は、「被保険者又は被保険者であった者の配偶者、子、父母・・・」ですから(第59条第1項本文)、「配偶者」は死亡者の配偶者であることが必要であり、離婚した者は含まれません。
「子」についても、死亡者の民法上(法律上)の子(つまり、実子及び養子)であることが必要です(子についてはこちら)。
本問(こちら)では、先妻Vについては、死亡した夫Aと離婚していますから、被保険者等の「配偶者」ではなく、遺族厚生年金の受給権者にはなりません。
死亡した夫Aの子であるW(15歳)は、死亡者の実子であり、18歳の年度末までにありますから、遺族厚生年金の受給権者となります(なお、本問では、「婚姻」の有無については特段問われていませんから(15歳では法律上婚姻することができません)、「現に婚姻していない」という要件は満たすものとします)。
一方、後妻Yについては、死亡した夫Aの配偶者ですから、遺族厚生年金の受給権者となります。
後妻Yの子であるZ(10歳)については、死亡した夫Aの法律上の子ではありませんから(養子縁組をしていず、事実上の親子関係が存在するに過ぎません)、遺族厚生年金の受給権者とはなりません。
以上より、夫Aの死亡による遺族厚生年金の受給権者は、先妻Vの「子W」と「後妻Y」の2名です。この2名は、同順位です。
ただし、本問は、「遺族厚生年金が最初に支給されるのは」という設問ですから、この両者の支給停止の問題が論点となっていることに気づく必要があります。
この点、配偶者が遺族厚生年金の受給権を有する間は、原則として、配偶者に対して遺族厚生年金の支給が行われ、子は支給停止となりますが(第66条第1項本文)、この例外の一つが次のケースであり、これが本問の論点です(本文は、こちら以下です)。
◆配偶者に対する遺族厚生年金は、当該被保険者等の死亡について、配偶者が遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって、子が当該遺族基礎年金の受給権を有するときは、その間、その支給が停止される(第66条第2項本文)。
本問では、先妻Vの「子W」は遺族基礎年金の受給権を取得します(なお、遺族基礎年金の「遺族の要件」は、こちら(国年法のパスワード)です)。
対して、「後妻Y」の「子Z」は、死亡者の法律上の子ではありませんから、遺族基礎年金の受給権も取得しません(遺族基礎年金の子も、遺族厚生年金の場合と同様に、死亡者の法律上の子であることが必要です)。
また、「子Z」の親である「後妻Y」は、「死亡者の子」ではない「Z」と生計を同一にしているに過ぎませんから、「後妻Y」も遺族基礎年金の受給権を取得しません。
よって、本問では、配偶者である「後妻Y」は遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって、先妻Vの「子W」が遺族基礎年金の受給権を有するケースにあたりますから、「後妻Y」の遺族厚生年金は(「子W」が遺族基礎年金の受給権を有する間は)支給停止となります。
そこで、空欄Cの「遺族厚生年金が最初に支給されるのは」、先妻Vの「子W」ということになります。
本問で必要な知識は、遺族厚生年金及び遺族基礎年金の「遺族の要件」と、遺族厚生年金の「支給停止」についてでした。
ただし、実際上の決め手は、「後妻の連れ子」(「後妻Y」の「子Z」)と死亡者との間に法律上の親子関係がない場合(養子縁組をしていない場合)において、当該連れ子(Z)が遺族厚生年金及び遺族基礎年金の受給権者となるのか、という単純な知識であったことになります。
ちなみに、本問と類似のケースで、「死亡した夫と後妻(Y)との間にも(当該夫の)子があったケース」については、遺族基礎年金のこちら(国年法のパスワード)で取り上げていました。
この当サイトのケースは、死亡した夫と後妻との間の子が実子ですから、当該子に遺族基礎年金や遺族厚生年金の受給権が発生するケースであり、本問の「連れ子」のケースとは異なります。
いずれにしましても、当サイトで掲載されています具体例を日頃から検討されておかれますと、本試験でも役に立つでしょう。
〔3〕問3
問3(空欄のD。こちら)は、65歳未満の在職老齢年金の制度に関する事例問題であり、一応、直近の改正事項です。ただし、極めて基本的な問題です。
即ち、在職老齢年金の制度の効果(支給調整される額等)は、以前は、高在老と低在老の制度で異なりましたが、令和4年4月1日施行の改正により、高在老の制度の支給調整の仕組みに統一されました。
そこで、低在老の制度についても、次のルールによって支給調整が行われます。
◆総報酬月額相当額と基本月額との合計額が支給停止調整額(出題当時は47万円。令和5年度は48万円。令和6年度は50万円)を超えるときは、原則として、当該超える額の2分の1に相当する部分が支給停止される。
当サイトのこちらの図をイメージして下さい。
本問は、以上の知識があれば、容易に処理できました。
〔4〕問4
問4(空欄のE。こちら)は、事後重症による障害厚生年金の支給要件に関する問題です(こちら以下の二)。
本論点は、択一式の【令和元年問3A(こちら)】でも問われています。
事後重症による障害厚生年金の障害認定日の要件として、次が要求されます。
◆障害認定日〔=初診日から起算して1年6月を経過した日、又は治ゆした日のいずれか早い方〕において障害等級(3級以上)に該当する程度の障害状態になかったものが、同日〔=障害認定日〕後65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級(3級以上)に該当する程度の障害状態に該当したこと。
選択肢において「65歳に達する日」があった場合は、正解率が少し低くなったでしょうが、本問の選択肢は容易なものでした。
上記の太字部分の詳細(例:「60歳に達する日まで」だったか、あるいは、「65歳に達する日まで」だったか等)を忘れた場合も、この障害認定日における年齢制限がなぜ設けられたのかを考えますと処理できます。
即ち、この年齢制限は、65歳到達日以後は、原則として、老齢基礎年金及び老齢厚生年金の支給を受けられることから、それまでの期間については事後重症により保護しようとした趣旨です(本文はこちら)。
従って、「65歳に達する日」(=老齢給付の受給権が発生する日です)ではなく、「65歳に達する日の前日」であることがわかります。
この空欄Eは、簡単な問題でしたが、「理解」したうえで「記憶」しておくことの重要性は示しています。
総評
選択式は、空欄C(こちら)以外の4つのどれか3つを正解することは容易だったといえます。
今回は、国年法の選択式も容易であり、また、択一式の厚年法及び国年法についても、長文の事例問題が少ないなど、年金2法については昨年度より大幅に解きやすくなっていました(その反面、労働法関係が厳しかったです)。
しかし、「国年法・厚年法は易しいから得点を稼げる」などと考えることは、非常に危険です。
この両科目は、基本的なレベルに達するまでにかなりの学習時間を要します。
地道に支給要件と効果を押さえる学習をし、また、当サイト等で掲載されている事例によって知識の実際の使われ方についても分析して頂くのがポイントです。